ITmedia Mobile 20周年特集

「MVNOの台頭」「ネットワークの進化」「差別化の進む端末」――2014年を振り返る石野純也のMobile Eye(2014年総括編)(2/3 ページ)

» 2014年12月27日 12時36分 公開
[石野純也ITmedia]

3社出そろった「VoLTE」、通信の高速化もトピックに

 2014年は、音声通話が改めて見直された1年でもあった。ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社は、LTE上で音声通話を行う「VoLTE」を導入。この方式に対応した端末も発売した。VoLTEは、従来の音声通話より高品質なコーデックを採用しており、やり取りできる周波数が広くなる。これによって、電話の声がクリアに聞こえるようになる。データ通信をやり取りするための規格に音声を乗せるという意味ではIP電話に近いが、専用の帯域が確保されているのは大きな違いだ。従来と同じ電話番号も利用できる。

photo ドコモはVoLTEをいち早く導入。音声定額を実現した新料金プランと合わせて、コミュニケーションの楽しさを訴えた

 また、ネットワークと連携したサービスも組み込みやすいのもVoLTEの特徴といえるだろう。例えば、ドコモはVoLTEで「ビデオコール」というサービスを提供している。これを一歩進めたのがKDDI。同社はVoLTE対応端末同士で写真をシェアしたり、手書きの文字を共有したりできる「シンクコール」を開始する。現時点ではまだシンクコールは始まっていないが、こうしたサービスが可能になるのがVoLTEというわけだ。

photo 「シンクコール」を利用できるのが、KDDIのVoLTEの特徴

 ただし、始まったばかりでまだ課題も多い。1つは対応端末の問題。先行しているドコモはAndroidの対応機種は多いが、KDDIは現時点では「isai VL」と「URBANO」の2機種のみ。ソフトバンクも「AQUOS CRYSTAL X」がVoLTEに対応。先行した発売された「AQUOS CRYSTAL」もソフトウェアアップデートでVoLTEに対応する予定だが、そのほかの機種では利用できない。端末はどのキャリアもAndroidだけで、iPhoneは対応していない。iPhone 6、iPhone 6 PlusはハードウェアとしてはVoLTEに対応しており、米国などでは利用できるが、日本ではネットワークとの調整が取れていないようだ。VoLTEの高音質化の恩恵を受けられるのは対応端末同士のみ。全端末が対応していない状況では、広がりも限定的だ。

photophoto KDDIとソフトバンクモバイルは、まだVoLTEを始めてばかり。対応端末も、現時点では写真の3機種にとどまる。2015年以降で、どの程度広がるのかにも注目したい

 また、キャリア同士の相互接続が行われていないのもネックだ。もちろん普通に通話はできるが、その際の音質は3G相当になる。VoLTEの最大のメリットが生かせないのだ。コミュニケーションサービスは、利用者の数が多い方が価値を生みやすい。過去には「プッシュトーク」や「Hello Messenger」のようなサービスもあったが、いずれも同一キャリア同士が対象のサービスで、対応端末も限られていたため、廃れてしまった。キャリア同士の接続には交渉も必要だが、早い段階で相互接続を行ってほしいところだ。対応機種の拡大とキャリアをまたいだ高音質通話は、2015年に向けての課題といえるだろう。

 ネットワークという意味では、LTEの高速化が進んだ1年でもあった。口火を切ったのはKDDI。2つの異なる周波数帯を束ねて、通信を高速化する「キャリアアグリゲーション」を夏モデルから導入した。KDDIの場合、2GHz帯(Band 1)と800MHz帯(Band 18)を束ねており、それぞれ10MHz幅ずつ、合計で20MHz幅を使い、下りの速度は最大で150Mbpsとなる。現時点でキャリアアグリゲーションを導入しているのは、KDDIとソフトバンクモバイルのみ。ドコモは1.7GHz帯(Band 3)単体で20MHz幅化を行っている。KDDIがキャリアアグリゲーションの導入を急いだ背景には、1.7GHz帯を20MHz幅持っていたドコモに対抗する意図が見え隠れする。一方でソフトバンクモバイルは、900MHz帯(Band 8)のLTE化が当初の計画より遅れており、キャリアアグリゲーションを利用できるエリアは非常に限られている。

photophoto 下り最大150Mbpsのキャリアアグリゲーションを導入したKDDI(写真=左)。ドコモは4つの周波数帯でLTEをサービスしていることをアピール。中でも、1.7GHz帯は連続した20MHz幅の周波数を持ち、下り最大150Mbpsを出せる(写真=右)

 帯域幅を広げるメリットは、単にダウンロードやWebの表示がスムーズになるだけではない。それによって、大容量化していることもポイントだ。単純にスピードが上がるというよりも、混雑してもそれなりに快適な通信速度を保てることの方が、キャリアにとっては恩恵が大きい。スマートフォンへの買い替え需要は以前に比べて小さくなったが、それでも増えていることに変わりはない。特に人口が密集する場所では、大容量化が不可欠になりつつある。

photo 速度はもちろん、大容量化もメリットだ。また、キャリアアグリゲーションは安定化といった効果ももたらす

 このトレンドは、2015年以降も続いていくだろう。ドコモは2015年にキャリアアグリゲーションを導入する予定だ。開始当初はモバイルWi-Fiルーターのみの対応となるが、まずは下り最大225Mbpsを実現する。さらに、丸の内のドコモラウンジ内では、下り最大262.5Mbpsのキャリアアグリゲーションを行う。当初はルーターのみだが、遅かれ早かれ、スマートフォンも下り最大300Mbpsのカテゴリー6に対応するはずだ。グローバルでは、すでにカテゴリー6のスマートフォンも販売されており、日本でもHuaweiが発売したSIMロックフリー端末「Ascend Mate 7」が下り最大300Mbpsの速度を売りにしている。ここに他社がどう対抗していくのかも、2015年の見どころだ。

photo ドコモは、2015年春にキャリアアグリゲーションを導入し、下り最大225Mbpsを実現する。まずはWi-Fiルーターから対応する

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月06日 更新
  1. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  2. NHK受信料の“督促強化”に不満や疑問の声 「訪問時のマナーは担当者に指導」と広報 (2025年12月05日)
  3. 「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開 (2025年12月04日)
  4. 三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」の実機を触ってみた 開けば10型タブレット、価格は約38万円 (2025年12月04日)
  5. 「楽天ポイント」と「楽天キャッシュ」は何が違う? 使い分けのポイントを解説 (2025年12月03日)
  6. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  7. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  8. ドコモが「dアカウント」のパスワードレス認証を「パスキー」に統一 2026年5月めどに (2025年12月05日)
  9. NHK ONE、簡単には「閉じられないメッセージ」表示へ 目的は“NHK受信料”の徴収 なぜ強引な仕様に? (2025年11月12日)
  10. 鉛筆デザインのiPad用スタイラスペン「Nelna Pencil」発売 物理ボタンに9機能を設定可能 (2025年12月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー