ITmedia Mobile 20周年特集

ネットワークの進化/7インチタブレットの台頭/スマホ向けサービスの拡充――2012年を振り返る石野純也のMobile Eye(2012年総括編)(1/3 ページ)

» 2012年12月28日 15時23分 公開
[石野純也ITmedia]

 2012年も、残すところあと3日となった。と同時に、年明けにスタートした本連載も、ちょうど1年間続いたことになる。読者の方々にお礼を申し上げたいとともに、来年にもぜひご期待いただきたい。この連載では、モバイル関連の注目ニュースを2週間に1度のペースで振り返っている。内輪の事情になってしまうが、連載開始前は「1週間だとニュースが十分ない可能性もあるため、2週間のまとめがちょうどいいのでは」と考えていたためだ。

 しかし、ふたを開けてみれば、その心配はまったくの杞憂だった。2012年は、インフラの刷新と端末のスマートフォンシフトが同時に進んだこともあり、例年以上にモバイル業界の動きが激しい1年だった。むしろ、ニュースが多すぎ、選別が難しい週も少なくなかった。今回の連載は、2012年の締めくくりとして、その“激動の1年”をいつもの体裁で振り返っていきたい。


インフラの刷新が進んだ2012年、秋にはKDDIとソフトバンクもLTEを開始

photo ドコモの冬モデル(スマートフォン)は全機種がLTEに対応した

 モバイルの根幹とも言えるネットワークが、大幅に進化した1年。2012年はまさに4G時代の幕開けと言える1年だった。NTTドコモは2010年に「Xi」としてLTEをサービスインしていたが、スマートフォンに初めて対応したのが2011年のこと。2012年夏モデルでは7割程度が、冬モデルはスマートフォンの全機種がLTEに対応した。当初はバッテリーの持ちに不満のあったLTE端末だが、チップセットの世代が上がり、そうした問題は徐々に解消されつつある。もちろん、実際に使ってみるとまだまだ十分とは言えないが、大きく改善が進んだことは間違いない。

 そのドコモは、冬モデルの発売と同時に、1.5GHz帯の15MHz幅(×2)を用いることで、LTEの速度を下り最大100Mbpsに高速化させた。下り最大100Mbpsの通信が可能な地域はまだ限られるが、同時に都市部でも5MHz幅でサービスを開始している。他社に先駆けてLTEを導入してきただけあって、Xiの契約数も800万を超えた。一方で、都市部を中心にスループットの低下も目立っている。周波数を上手くやりくりしながら、体感値を改善していくことが、ドコモにとっての課題と言えそうだ。

photo iPhone 5発売後は、田中社長が自ら語る場面も多く見られた

 対するKDDIは前半をWiMAXで、後半をLTEで戦ってきた。夏モデルはAndroidスマートフォンが5機種とやや手薄になっていたのも、LTE導入を控えてのことだ。

 当時、代表取締役社長、田中孝司氏が「(LTEの始まる)秋冬はガツンと行きます」と述べていたとおり、KDDIの攻勢は9月に発売された「iPhone 5」から始まった。iPhone 5発売に先駆け開催された会見では、「高速CSフォールバック」やバッテリーの持ちをよくする技術を披露。LTEでのテザリングも解禁し、iPhone 5の話題性と相まって、大きな反響を集めた。

 一方で、エリアの広さとスループットの高さを両立しているのが、800MHz帯および1.5GHz帯に対応しているAndroidだ。ネットワークは原則として10MHz幅で構築されており、2012年度末の実人口カバー率は96%に達する見込み。対応端末は9機種も用意された。そのLTEは、2013年度以降に112.5Mbps化を実現する。ドコモと同様、一部の地域を15MHz幅化するためで、2013年は“LTEの高速化”もキャリア間の競争軸になりそうだ。

photo 業界に大きな衝撃を与えた、ソフトバンクのイー・アクセス買収

 ネットワークの進化という点では、ソフトバンクに関する話題も尽きなかった。同社は7月に900MHz帯を利用したHSPA+のサービスを開始。発売済みの「新しいiPad(第3世代)」や「iPhone 4S」などが、この周波数に対応。夏モデルも「全機種プラチナバンド対応」をうたい、代表取締役兼CEOの孫正義氏も基地局を「一般常識の3倍、4倍のスピードで設置していく」と語っている。

 この900MHz帯は、LTEの開始にあたっても重要な役割を果たしている。上で述べたとおり、iPhone 5のLTEは2GHz帯のみとなるため、ソフトバンクは既存の3GをLTEに移行する作業が必要になる。この受け皿になるのが、900MHz帯というわけだ。2012年度末までに2GHz帯のLTEだけで実人口カバー率91%を実現できるのには、こうした背景がある。さらに、ソフトバンクは1.7GHz帯を持つイー・アクセスを買収する。順調にいけば春には、イー・モバイルのブランドで展開するLTEも、ソフトバンクのiPhone 5で利用できるようになる見込みだ。こうしたネットワーク側の準備が整い、KDDIに対抗する形でソフトバンクもテザリングを解禁した。

 Androidは、Wireless City Planningのネットワークを借り、AXGPに対応する。こちらはエリアがネックだが基地局が高密度で設置されており、スループットも高い。ただし、現時点では対応機種が他社(のLTE対応端末)に比べて少ない。周波数が高いため、屋内でのエリア展開も今後の課題になりそうだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年04月24日 更新
  1. 「楽天ペイ」と「楽天カード」、どちらで支払う方がお得? 還元率の違いをチェック (2025年04月23日)
  2. スタートした「Nintendo Switch 2」抽選販売情報まとめ ビックカメラ、TSUTAYA、ゲオ、ヤマダ、セブンなどの条件は? (2025年04月24日)
  3. 楽天モバイルの衛星通信は「アンテナが大きいからつながりやすい」 三木谷氏が語る優位性 (2025年04月23日)
  4. 携帯電話ショップの「春商戦」はもう過去? 店舗スタッフが語る2025年の春商戦 (2025年04月22日)
  5. 楽天モバイルが動画も見られる「Rakuten最強衛星サービス」を2026年第4四半期に提供へ 「LTE対応のほぼ全てのスマホ」で利用可能をうたう (2025年04月23日)
  6. 70maiが4K対応の回転式全方位ドラレコ「Dash Cam 4K Omni」を5月16日に発売 “ミラー型ドラレコ”開発も予告 (2025年04月23日)
  7. ポケモンGO、色違いに出会いやすい「健やかな成長」イベント 日韓限定の地域ボーナスも (2025年04月22日)
  8. 「Pixel 9a/9/8a」をお得に買う方法【2025年4月版】3キャリアの価格を比較、Google Storeより安い機種も (2025年04月21日)
  9. 「楽天カード」は何が違い、どれがお得? プロパーカード4種類を比較してみた (2025年02月05日)
  10. PayPayでよく使う機能を“お気に入り登録”すると便利 (2025年04月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2025年