ネットワークや端末が進化し、それらが普及するのに伴って、スマートフォン上のサービスが注目されるようになった。これも、2012年の特徴の1つと言えるだろう。中でも、1年で大きくユーザー数を増やしたのが、NHN Japanが運営する「LINE」だ。メッセージのやり取りが吹き出しで表示されるユーザーインタフェースや、選択するだけで感情を的確に説明できるスタンプなどが受け、2011年からユーザーを徐々に増やしていった。
一方で、キャリアのネットワークに与える負荷も、日増しに大きくなっていった。ユーザーIDを第3者が運営する掲示板などで交換し、出会い系のツールとして使われることも問題視されている。こうした状況の中、NHN Japanは7月にLINEのプラットフォーム化を発表。ゲームや占いといったコンテンツに加え、SNS風のタイムラインなども導入している。
KDDIとの提携が発表されたのも、このときだ。両者の狙いは明確で、通信量の削減や、出会い系対策などで協力を図っていく。この成果は、12月に行われたLINEのアップデートで現れた。au向けのLINEは、初期設定で「IDの検索を許可」がオフになっており、オンにするためには年齢認証を行う必要がある。保護者名義での契約もあるためキャリアの年齢認証だけが万全とは言えないが、ID検索が無条件で開放されていたときよりは問題も減るはずだ。同様の仕組みはドコモやソフトバンクも持っているため、他キャリアへの拡充も期待したい。
「Amazon」をはじめとする電子書籍ストアが正式に日本で始まったのも、2012年のこと。海外勢に先行してサービスを開始していたシャープの「GALAPAGOS STORE」も、8月にはiOSに対応した。また、音楽配信については、定額で聞き放題の“サブスクリプション型”も広がりつつある。7月にはソニーが「Music Unlimited」のサービスを開始。KDDIも、「LISMO unlimited」をiOSに対応させた。
また、ラジオ型で定額の聞き放題サービスも充実し始めている。KDDIの「うたパス」はその一例。ドコモも夏モデルの発売と同時期に、「MUSICストア セレクション」をスタートしている。映像系のサービスでは、ドコモの「ビデオストア」の人気が高い。ユーザー数はすでに300万人を超え、人気のサービスに成長した。対するKDDIは「ビデオパス」を夏に開始。ソフトバンクも冬春モデルと同時にエイベックスと合弁会社を作り、映像配信サイトの「UULA」を立ち上げている。
サービスという点では、「マップ」への注目度も例年になく高かった。きっかけは「iOS 6」のApple製マップ。6月のWWDCで大々的に発表された新マップだが、Googleマップのデータを使っていた以前のものと比べ、クオリティは大幅に下がってしまった。基本的なスポット検索やルート案内ですら使い物にならず、当時筆者の抱いていた懸念が的中してしまった格好だ。
Googleが満を持してiPhone版「Google マップ」をリリースしたのは、12月に入ってからだ。iPhone版Googleマップは、従来のiOS版マップとも、Android版Googleマップとも異なるユーザーインタフェースを持ち、軽快な操作感も相まって非常に使いやすい。今までiPhoneではできなかった、Googleアカウントによるマルチデバイス対応も可能になった。
こうして振り返ってみると、2012年は、ネットワークも、端末も、サービスも、バランスよく進化した1年だった。とは言え、国内のスマートフォンの普及率はまだ3割前後。2013年に勢いが止まることはないだろう。一方で、通信障害やウイルスアプリなどの問題も、スマートフォンの普及で顕在化した。初心者層の移行が増え、キャリアショップの混雑も以前より目立つようになっている。その意味で、2013年は今年以上に各社の手腕が試される1年になりそうだ。
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