au「HTC J butterfly」「MeMO Pad 8」とソフトバンク「AQUOS CRYSTAL」で見えた、端末戦略の違い石野純也のMobile Eye(8月18日〜29日)(1/2 ページ)

» 2014年08月30日 10時42分 公開
[石野純也,ITmedia]

 8月22日にauの「MeMO Pad 8 AST21」が、8月29日にはソフトバンクの「AQUOS CRYSTAL」とauの「HTC J butterfly HTL23」がそれぞれ発売された。例年、商戦期の谷間となる8月だが、今年はやや様相が異なる。いずれのモデルも“戦略商品”と位置づけられており、国際展開をにらんだ開発体制が引かれている。どのモデルも、グローバルに展開することで、ボリュームを出していく方針だ。一方で、KDDIとソフトバンクの2社が置かれる立場は異なる。海外展開を見据えた戦略商品に対する考え方も、この立ち位置が大きく影響している。今回の連載では、端境期の8月に登場した新製品から、両社の端末に対する取り組みをひも解いていきたい。

日本発の機能、デザインをアジアや女性ユーザーに広げるKDDI

 KDDIから発売されたMeMO Pad 8(ASUS製)とHTC J butterfly(HTC製)は、いずれも「共同開発」とうたわれている。前者が「日本人が欲しいタブレットを、KDDI、インテルとともに形にした」(ASUS Japan マーケティング部 部長 シンシア・テン氏)タブレットなのに対し、後者は「KDDIとの共同開発で、どのようにデザインすべきか、外観、カラー、UXについてのフィードバックをもらった」(HTC CEO ピーター・チョウ氏)というフラッグシップのスマートフォンだ。

photophoto HTCの新モデル「HTC J butterfly」。背面は光沢感のあるプラスチックで、金属素材を採用したフラッグシップモデルのHTC Oneシリーズとは大きく異なる
photophoto ASUSが初のキャリアモデルとして開発した「MeMO Pad 8」。前面までカラーリングされているなど、デザインにこだわった1台だ

 2つの機種に共通しているのは、デザインなどを日本市場にフィットするようにカスタマイズしていること。同時に、MeMO Pad 8とHTC J butterflyはアジアを中心とした海外でも発売される。ASUSとHTCはどちらも海外に足場を持つメーカーで、全世界共通のグローバルモデルを用意している。では、この2社が、なぜKDDIのために日本市場に特化したスペシャルモデルを開発したのか。その理由の1つは、日本のユーザーのデザインに対する受け止め方の違いにある。

 「HTC J Oneを売る際には、グローバルヒーローモデルということで期待していたが、残念ながら日本のお客様にはあの質感や防水がない点、カメラの画素数が受け入れられなかった。デザインやスペックなど、ディテールにこだわるメーカーとオペレーターなので、そこをきちんとやり、HTC J butterflyをリニューアルしようとなった」(HTC NIPPON 代表取締役社長 村井良二氏)

photophoto ASUSのシンシア・テン氏(左)は、女性に受け入られたいと意気込みを語った。KDDIの相澤忠之氏(右)も、デザインに深く関わったことを明かす(写真=左)。HTCのピーター・チョウ氏(左)は、KDDIとの密な関係をアピール。会見には、KDDIの田中孝司氏(右)も駆けつけた(写真=右)

 一方で、日本だけでは市場の規模が限られており、HTCのようなグローバルメーカーが、専用にカスタマイズしたモデルを気軽に投入しにくいのも事実。グローバルモデルと共通する部分が多い方が、コスト的なメリットも出しやすい。このトレードオフを解決するのが、アジア市場だ。台湾や香港、一部の東南アジアでは、日本発のトレンドが受け入れられやすく、デザインに対するユーザーの感覚も近い。実際、「HTC Jや(初代)HTC J butterflyの影響は、アジア全般にものすごく波及した」(村井氏)そうで、日本外での販売も徐々に広がっていった経緯がある。

photophoto アジアでのブランド力向上が、HTCにとって共同開発を行う強い動機になっていると語る、HTC NIPPONの村井良二氏。CMにはアイドルグループ「乃木坂46」を活用。これも、アジアで共通のものが放映されるという

 HTC J butterflyのような柔らかいデザインは、アジア市場で女性ユーザーを獲得し、ブランドイメージを向上させる武器にもなる。

 「(HTCの本国である)台湾でも、HTC Oneは女性がほとんど使っていなかった。あれは難しい、使えないと思われていた。香港、シンガポール、中国でもそう。どちらかというとメタルを使ったデザインがクオリティが高いと思われていたが、プラスチックでもきちんと加工してハイグロスにすれば質感は高くなる。そうしたところ、女性層をバーンと取れた。単純に売り上げが伸びただけでなく、ブランドイメージを上げることに、HTC JやHTC J butterflyがものすごく貢献した」

 こうした事情は、MeMO Pad 8を発売するASUSにも共通しているようだ。同社のテン氏は、「日本生まれのタブレットで、女性の客層も開拓していきたい」と語る。KDDIで同製品を担当したプロダクト企画本部 プロダクト企画2部 部長 相澤忠之氏も、「タブレットはまだまだ男性が多く、どうしても女性層を取り込みたい」と意気込む。「ASUSさんにも、日本発の広がりを期待してやってもらえたと思っている」と、その先には、アジアでの普及もにらんでいるという。

photo 「ジブン時間、充実。」というコピーが掲げられ、女性向けを強く意識したMeMO Pad 8

 常々「同質性の中の違いを追求したい」(代表取締役社長 田中孝司氏)と述べているKDDIだが、こうした取り組みによって、他社にはない独自モデルを発売できている。日本で他キャリアに納入できないのはメーカーにとってのデメリットかもしれないが、KDDIは他国に関する制限は特に設けていないという。アジアに本拠地を置くメーカーにとっては、日本で得たノウハウを地場で生かせるというのが大きなメリットといえる。つまり、キャリアとメーカー、お互いにとって価値のある協力体制なのだ。

 2機種ともまだ発売されたばかりで、結果が出るのはこれからだが、過去にはHTC Jや初代HTC J butterflyが大ヒットした実績もあり、期待はできる。戦略モデルに位置付けられた2機種の販売動向にも、注目しておきたい。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  3. 庵野秀明、GACKT、ひろゆき、ドワンゴ川上らが集結 “カメラのいらないテレビ電話”をうたう新サービス「POPOPO」18日に発表へ (2026年03月11日)
  4. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  5. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  6. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  7. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  8. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  9. Qualcommのウェアラブル新チップが「Elite」を冠する理由 最新モデム「X105」は衛星通信100Mbpsへ (2026年03月11日)
  10. 【無印良品】ウエストポーチもになる「スリングバッグ」が3990円に値下げ中 植物由来の原料を使用 (2026年03月11日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年