日本で発売される予定のMADOSMAやNinjaも、こうしたニーズを踏まえて開発されたものだ。プラスワン・マーケティングの代表取締役社長 増田薫氏は「モバイルはどんどん法人の中でも必要になってきているが、システム担当者からすると、社内はWindows、モバイルは違うOSというより、同じ方がやりやすい。Office 365の連携もやりやすくなっている。OSやサービスも整ってきたので、いいタイミングが来たということ」とWindows Phoneを開発した理由を語っている。
また、先に紹介した台湾を拠点とするBungBungameも、COMPUTEX TAIPEIで展示していたWOLF2のWindows版(Windows 10 Mobile搭載予定)を、日本で発売する予定であることを明かした。MADOSMAを皮切りに、日本でも、Windows PhoneやWindows 10 Mobileがようやく脚光を浴びることになりそうだ。
日本に特有な事情として挙げられるのが、SIMロックフリーマーケットの拡大だ。これまではメーカーの販路が、ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルなど、大手キャリアへの納入に限られていた。こうした状況の中、“格安SIM”としてMVNOが注目を集め、そのSIMカードを挿して使う端末としてSIMロックフリースマートフォンの市場ができつつある。規模はまだまだキャリア向けの市場より小さいが、ASUSの「ZenFone 5」のように、スマッシュヒットを飛ばす端末も出てきている。
現状、日本の大手3キャリアはiOSとAndroidが端末戦略の中心を占めており、サービス開発などのリソースもこの2つのOSに集中させている。こうしたキャリアの戦略に沿わないWindows Phoneでも、SIMロックフリー端末の市場があればメーカーが独自に判断して発売することができる。グローバルでWindows 10に対する期待が高まっているのと同時に、国内端末市場が変化していることも、その要因といえるだろう。これが、日本でWindows Phoneが再登場した背景だ。
ただ、やはりスマートフォン向けのWindowsについては、本格展開までにはもう少し時間がかかりそうだ。Microsoftが発表したWindows 10の提供開始日は7月29日だが、ここにはスマートフォン向けのWindows 10 Mobileが含まれていない。先のニック・パーカー氏は「Windows 10を搭載したスマートフォンは、Windows 10(PC、タブレット向け)から季節を経て、続々と登場する」と述べていたものの、具体的な時期はまだ明かされなかった。COMPUTEXでスマートフォンを開発する各メーカーを取材した限りでは、早くても9月以降ということになりそうだ。
また、Windows Phone 8.1 Updateを搭載するスマートフォンに対するアップグレードも、当初は対応するチップセットがSnapdragon 410やSnapdragon 200に限定される可能性がある。日本で発売される予定のMADOSMAやNinjaは、ともにSnapdragon 410を搭載しているため、Windows 10 Mobileにアップグレードするための要件はクリアしているが、ほかのチップセットへの対応が遅れれば、端末のバリエーションが限られることになる。Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの日本発売を名言していたBungBungame担当者も、発売の時期を早めるため、Windows版WOLF2はチップセットを(Snapdragon 615から)Snapdragon 410にダウングレードしていると明かす。
このように未知数な部分は多いが、世界中でWindows Phoneに対する期待が高まっているのも事実だ。日本でも、メーカーに加え、キャリアも関心を示すようになった。Microsoftの「Surface 3」をワイモバイルから発売するソフトバンクモバイル 代表取締役社長 宮内謙氏も、「具体的に決まったものはない」としながらも、「今後順次やっていきたい」と前向きな姿勢を見せる。iPhoneやAndroidスマートフォンのラインアップで他社と差別化するのが難しくなっている今、Windows対応スマートフォンを投入してバリエーションを広げるといった戦略も十分考えられそうだ。
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