KDDI田中社長「契約者数は増えない。MVNOでUQ頑張って」――au経済圏の流通拡大で、取扱高2兆円超を目指す石川温のスマホ業界新聞

» 2016年05月20日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 5月12日、KDDIは2016年3月期決算会見を開催した。終了後、田中孝司社長の囲みが行われた(当日、別件で取材できず、音声データを入手し、書き起こした)

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年5月14日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。


―― 年7%の成長と言っているが、当初は6.2%という。何を持って巻き返すのか。

田中社長 「逆に言いますと初年度はタスクフォースの影響を結構受けると思っていまして、そういう意味で6.2%でございます。2〜3年目に関しては、いままで仕込んでいたものがだいぶ大きくなってくるではないかということで、全体として1700億円ぐらい差分がありますが、そこを3年間で山を登っていきたい」

(★ タスクフォースの影響はなかなか予想しづらいな)

―― au経済圏は現状、いくらと言えるのか。

田中社長 「7300億円だったかな。何処かに出ています、すいません」

―― 3倍近くにするということか。

田中社長 「そうですね。これまでもだいぶ増えてきてますし、いわゆる大きなものとしてまして、電気なんかが入ってきますと、決済額が急激に上がります。大変だとは思いますけど、できない話ではないかと思っています」

(★ 電気、さらにガスなんかも自由化され、扱えるようになると、取扱額はかなり上がりそう)

―― ローンは入れないと言っていたが。

田中社長 「ローンとか保険は外しましたね。なんかちょっとよくわからないところは外しました。お客さんによって違いますから」

―― 通信領域でも継続的な成長を掲げているが、MVNOもあり競争は厳しい。どう見ているのか。

田中社長 「売り上げという意味では非常に厳しいと思う。今年度はガイダンスに出ている通り、通信料売り上げ、端末などを除いたものはほとんど伸びないぐらいになっている。ちょっと堅めに見ていますけど。そこを伸ばしていこうと思ったら、非スマホとかIoTエリアとか、そういったところで伸ばさざるを得ない。

 逆に言うと利益という観点からすると、コスト削減を入れていかないと、通信領域における成長は非常に厳しいフェーズになってきている」

(★ 期待されるIoTも、流れるデータ通信量は微々たるものだろうし)

―― タスクフォースは純増数にどれだけの影響を与えているのか。

田中社長 「ガイダンスを出していますけど、もう半分とかになってきますよね、年度で。3キャリア間の移動がほとんどなくなっていくということですから、全体として我々auは、ソフトバンクさんなりドコモさんから来ることが純増ですので、トータルはあまり増えないですから。

 もうひとつ、出る方は何かと言えば、MVNOに出て行く。自分ら自身でMVNOを増やしていかないと、純増の確保は非常に難しい。ソフトバンクさんがおっしゃっていましたけど、今回のタスクフォースはお客さんが動くというのは販売奨励金とか、みなさんがよく言われるキャッシュバックによって動きやすくなるんですけど、これが動かなくなりました。

 もうひとつは長期優遇をしなさい、と言われてますから、そうするとさらに動かなくなる。結果として3キャリア間は動かなくなるのがタスクフォースのガイドライン。じゃあ、次は何が起こるかといえば、MVNO向けの流れが3キャリアとも出ている。少なくとも1500万件ぐらいになるまでは、アクセルを踏むというのが総務省の考え方ですから、(ユーザーが)出ますよね。

 出て行くのを自分らのキャンプのなかに納めておくには、自分らの連結している会社にリクープする。9割以上がドコモに行っているが、というのが考え方だと思っている」

(★ MVNOが盛り上がればNTTドコモに追い風になる。また、ソフトバンクには、MVNO対抗でワイモバイルがいる。その点、KDDIにとってUQモバイルはまだ戦力になれていない感じ)

―― MVNO間での競争も激しくなっているが。

田中社長 「頑張らなくてはいけないのが現実。もっと頑張らないといけない。いま、ドコモさんは他社さんのユーザーがMVNOに流れているわけですから、それがほとんど自分のところに戻られている。ドコモさんのMVNO間で競争されている。それはそれで僕らは知らない。

 やらなくてはいけないのが、MVNO領域においても、誰が回線を下ろしているのだということで、一定のシェアを獲らないと、回線数におけるシェアはドコモさんに寄って行ってしまう構造になる。頑張りが足りないと言えば、おっしゃるとおり。頑張らなきゃいかんよな。UQさん、頑張ってという話ですよね」

(★ UQモバイルはやはり端末ラインナップが増えないことには厳しいか)

―― 努力だけでなんとかなるものなのか。

田中社長 「確かに価格競争によって、競争は厳しくなってくるんですけど、そこにプラスアルファベータ、仕組みとか新たな価値観を提案しないとこの流れはなかなか止まらないというのが認識」

(★ とはいえ、「格安」というだけで伸びているのがMVNO市場だし)

―― 2兆円のau経済圏を作ったときの利益はどれくらいになるのか。

田中社長 「経済圏を大きくすることにプライオリティを置きましょうと。自社でサービスを提供していないと、ハンドリングチャージになる。決済を提供していると、その程度しか入りませんので、それだと1%弱とか、そんなところ。

 そのなかで自社のサービスを載せる、自社の金融サービスを提供すると、金融サービスにおける粗利が当社のものに入ってくる。あとは業界ごとの粗利リストは日経さんのなんとかにも出ていますから、そのコンビネーションで、全体の利益が決まるんじゃないかな。そうしますと、我々が金融に相当、力を入れているのは、金融の粗利は相当、ありますし、一方、食品とかもやっていますが、より粗利の高いところは頑張って自社でやりたいと思っている」

(★ 確かにウォーターサーバーの会社に出資するというのはまさに粗利を追っているわけで)

―― au経済圏、ほかに何を付け加えていくのか。

田中社長 「なんで電気を入れているかなんですけど、電気が入るユーティリティサービスはクレジットカードのメインカードになる要素がある。まずクレジットカードを強化したいと思っています。

 そこからあと何を追加するかと言えば、あまり言いたくないな。金融なんかもいいし、それ以外も良いし。まぁ、言わない」

(★ dカードに比べて、もうちょっと魅力がないとau WALLETカードはメインになりにくいんだよな)

―― au Wallet Marketはどういった評価なのか。

田中社長 「割と立ち上がってきたなという感じです。4Qの付加価値ARPUもだいぶ回復してきましたので、楽しみにという感じですけど。もうひとつチャネルという意味では、ショップチャネルを連結化しましたので、こうしたチャネルも強化できると思っています」

(★ そのうち、ドコモみたいにカロリーの低い冷凍食品とか売るようになるのかな)

―― 新たな海外キャリア展開は?

田中社長 「考えていかないといけない。買収というと聞こえが悪いんですけど、いわゆる3Gレベルというのはミャンマーが最後だと思う。これからは4G化に向かっていくので、いろんな機会があるのではないかと思っています。今回、連結化しましたモビコムもLTEの時代に向かっていきますので、いろんな資金ニーズもありますし、やれるチャンスもあるのかなと」

(★ せっかくなら、アメリカのT-Mobileとか買収しちゃえば良いのに)

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