先述の通り、以前のMVNOサービスはMNOのサブ回線としての利用が多く、データ専用プランでの契約比率が高かった。しかし、2014年後半から音声通話プランの方が新規契約の多数を占めるようになり、2016年に入ると音声通話プランがデータ専用プランの2倍以上の契約を集めるようになった。
2016年5月の調査ではMVNOサービスの契約者に占める音声通話プラン選択者の割合が61.5%となった。そのうち、65.1%はMNPによってMNOや他のMVNOから転入してきたユーザーだったという。「あまり通話はしないが、メインの携帯電話として電話番号がどうしても必要」という人が、MVNOサービスをMNOに並ぶ選択肢として検討している様子がうかがえる。
また、MVNO間のMNPもわずかではあるが見られるようになったという。
サービス名単位で個人用MVNOサービスのシェアを算出すると、1位が「OCN モバイル ONE」(NTTコミュニケーションズ)、2位が「楽天モバイル」(楽天)、3位がIIJmio(インターネットイニシアティブ、「BIC SIM」契約分を除く)という順位になった。
シェアの伸びでは楽天モバイルが大きいが、「mineo」(ケイ・オプティコム)、「BIGLOBE SIM」(ビッグローブ)や「FREETEL SIM」(プラスワン・マーケティング)も順調にシェアを伸ばしているという。
順風満帆に見えるMVNOサービスの普及だが、課題もある。
格安SIMの認知についてファネル分析をしてみると、格安SIMやサービスの存在に対する認知は進んでいるものの、そのサービス内容まではそれほど知られていない、ということだ。今後は、サービス内容を認知してもらえるような宣伝・広告が求められることになりそうだ。
また、MVNOサービスの利用者の8割がスマホで使っていることを考えると、フィーチャーフォン(ケータイ)からスマホへの乗り換え需要が鈍化していることも課題となる。先述の通り、MVNOサービスにおいては20代の男性と20代・30代の女性の契約率が上がってきているが、この年代におけるスマホの普及率は既に高い。
そのため、より高年齢層においてスマホの普及を図る過程でMVNOサービスを訴求する、といった取り組みが求められる。しかし、現在のSIMロックフリースマホの多くは、高年齢層を意識しているとは言いがたい面もある。高年齢層ユーザーでも使いやすいスマホを作るように、MVNOが端末メーカーに働きかけるといった動きが必要になりそうだ。
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