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» 2016年08月20日 06時00分 公開

日本通信はなぜ個人向けMVNO事業を手放すのか石野純也のMobile Eye(8月8日〜19日)(2/2 ページ)

[石野純也,ITmedia]
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複数のMVNEを束ねるMVNOになったU-NEXT

 では、日本通信のMVNOを受け継ぐU-NEXTにとっては、どのようなメリットがあるのか。1つ目としては、ユーザーの数を増やし、規模の拡大を狙える。まだ交渉のテーブルに着いたところで、どのような形になるのかは決まっていないが、少なくとも、U-NEXTとして抱えるユーザーの数は、10万以上増えることになる。

 U-NEXTのシェアは、2016年3月末時点で第4位(MM総研調べ)。3位の楽天モバイルに抜かれはしたが、回線数は肉薄している。ポストペイドの回線数は、同社の決算資料によると、2016年6月末時点で43万6000となる。仮に現時点でb-mobile分を加えたとすると、再び楽天モバイルを抜き、3位に再浮上する格好だ。

日本通信がU-NEXTにMVNO事業を譲渡 U-NEXTの回線数は40万を超え、順調にユーザーの規模を拡大している

 もともとU-NEXTは、自社で直接ドコモとネットワークを接続せず、MVNEを活用していた。事業開始当初はフリービットがMVNEの役割を担っていたが、6月にはIIJからネットワークを調達することを発表。7月1日から、「U-mobile PREMIUM」と銘打ったサービスを行っている。U-NEXTによると、フリービットを外してIIJに変えたというわけではなく、ユーザーに対し、選択肢を提示するために、このようなプランを導入したそうだ。

日本通信がU-NEXTにMVNO事業を譲渡 IIJをMVNEにした「U-mobile PREMIUM」を開始した

 実際、既存のユーザーにはそのままフリービットから調達した回線を使っており、契約が自動的にU-mobile PREMIUMに変更されるわけではない。U-NEXTは容量の制限がない「LTE使い放題」というプランが話題を集めていたが、これを「U-mobile PREMIUM」に移行した格好だ。現時点では、フリービットをMVNEとするLTE使い放題プランにはWebからの新規申し込みができないようになっており、加入するにはパッケージを店頭で購入しなければならない。一方で、3GBプランや5GBプランに加え、2段階制の「ダブルフィックス」はそのままの形で残している。U-mobile PREMIUMにはLTE使い放題しかなく、こことのバッティングを避けた格好だ。別の見方をすれば、料金プランに応じて、MVNEを使い分けているともいえるだろう。

日本通信がU-NEXTにMVNO事業を譲渡 フリービットをMVNEにするプランは、「LTE使い放題」がWebから申し込めなくなっている

 日本通信から事業を継承した際には、フリービット、IIJに加え、新たに3社目のMVNEを活用する形になる。U-NEXTも、「MVNEの選択肢を、1つ増やすことになる」とコメントしており、意識的に複数のMVNEを使い分けていることがうかがえる。通常ではMVNOとMVNEは1対1の関係を結ぶことが多いが、複数の会社を使い分ければ、MVNE同士の競争を促進できる。IIJの「バースト転送」ように、最新技術をいち早く取り入られる会社もあるため、料金以外でのプランごとの差を出しやすくなるかもしれない。U-NEXTがIIJのネットワークに対し、「PREMIUM」と名付けているように、プランに応じた品質の違いもアピールでき、より高価格な値づけもしやすくなる。

撤退するMVNOのユーザーをどうケアしていくべきか

 今回のケースは、まず日本通信がMVNEへ転換を本格化させ、自社で抱えている必要がなくなりつつあったMVNOをU-NEXTが引き受けるという構図だ。ただ、日本通信のように、ネットワークを持たない会社が同様の事態に陥ったときのことは、念頭に置いておく必要があるかもしれない。先に述べたように、MVNOの数は既に200を超えている。MM総研のデータによると、NTTコミュニケーションズ、IIJ、楽天、U-NEXT、ビッグローブ、ケイ・オプティコムの上位6社に、全体の6割のユーザーが集中しているという。

 逆にいえば、残り4割のパイを、200に近い事業者で奪い合っているという状況だ。この4割には日本通信も含まれているが、同社の事業規模は大きい方だ。3月末で、MM総研が独自SIM型と定義するMVNOの契約者数は、全体で539.4万回線。単純計算でいえば、その4割が215.76万回線で、事業者数の200で割ると、1社あたり1万強という数字が出てくる。日本通信のように、「その他」に属する会社の中にも10万回線を超えているMVNOがあるため、契約者数が1万にも満たない会社も多いということだ。

 もちろん、中には自社のサービスや端末に付随するネットワークを提供する目的でMVNOになっている会社もあるため、一概にはいえないが、MVNOも簡単にもうかるビジネスではないことが分かる。格安スマホブームを受け、見込みを誤り参入した会社の中には、事業を停止してしまうところも出てくるだろう。このようなとき、ユーザーをどう保護するのかはまだ決まっていない。

 過去の事例では、KDDIから回線を借り、「JALマイルフォン」や「ECナビケータイ」が、事業を続けられなくなったことがある。このときの原因は、MVNEとしてJALやECナビとKDDIの間に入っていたインフォニクスの経営が破綻したためで、結果として、ユーザーはKDDIが引き受ける形になった。

日本通信がU-NEXTにMVNO事業を譲渡
日本通信がU-NEXTにMVNO事業を譲渡 KDDIのMVNEだったインフォニクスが破綻し、各MVNOのユーザーはKDDIが引き受けることになった。写真はその1つである「ECナビケータイ」

 とはいえ、このときは相互接続という形ではなく、端末もauのものがほぼそのまま販売されていた。今のMVNOと、その形は大きく異なっている。同じようなことが起きたとき、料金プランもまったく違うドコモがユーザーを引き受けるのは困難になるはずだ。ユーザーの規模によっては、他のMVNOに事業を譲渡することができないケースも出てくるだろう。総務省には、今後、こうした事態を想定したユーザー保護の指針作りが求められるようになるはずだ。

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