―― ルーターについてお伺いしたい。高速化技術の「4×4 MIMO」や「キャリアアグリゲーション(CA)」は、全国に対応エリアが広がっていると思うが、なぜ両方を使った高速化が東名阪エリア限定となっているのか。
野坂社長 設備的な関係で、東名阪の基地局から始めることになった。
―― (東名阪以外は)基地局側が未対応、ということか。
野坂社長 そうではなく、東名阪“から”対応をしていくということだ。それ以外のエリアへの全国展開は、ニーズやサービスへの反響を見つつ考えていきたい。
東名阪からの対応は、「ニーズの多い所だから」ということで理解いただければと思う。
―― 今回の発表で、コミュニティサイト(UQ PLANET)を開設したが、同じau回線を使うMVNOであるケイ・オプティコムの「mineo」も、「マイネ王」というコミュニティサイトを開設している。このようなコミュニティサイトは重要性が高まっているのか。
野坂社長 UQ WiMAXでは以前「UQお客さまの会」を開催していた。全てのお客さまに会えるわけではないが、直接接触すると非常にいろいろな意見を聞けて、自分たちが気付いていないことが(意見として)たくさん出てくる。
そういう意味で「お客さまのサイト」を作るという考えもあった。しかし、mineoさんのコミュニティサイトはギーク(リテラシーの高い)層が中心だと思うし、我々のUQお客さまの会もそうだった。「スマホをみんなのモノにする」という我々の現在の立ち位置を考えたときに、そこからやり方を変えてみようかな、と思った。
「SIMって何?」という人もいるし、「APNを設定してください」と言われて「それって何?」となる人もいる。(UQコミュニケーションズの)原点回帰の意味も込めてやっていこう、というのがUQ PLANETの立ち位置だ。
―― 今回、下手をするとauよりも端末のラインアップが充実している。ユーザーからも「端末をもっと選びたい」といった声はあるのか。
野坂社長 日本人、というか人間のさがで、(選択肢が)1つ2つしかなくて「どちらかを」と言われると「えっ」となってしまう。店頭に行くとSIMフリー端末コーナーにたくさんの端末が並んでいて、その中で「UQ対応は1個です」となると、「嫌だ」と気持ちが閉まってしまう。
それである程度のラインアップを用意すると、今度は(どれを選んだら良いのか)分からないということも出てくるので「この機種にはこういう特徴がある」ということをしっかり説明できるようにしていきたいと思っている。
―― 総務省のタスクフォースに関するフォローアップ会合で、ケイ・オプティコムが(UQコミュニケーションズは)「ズルいのではないか」という旨の発言をした。それに対する反論はあるか。
野坂社長 総務省は、大手キャリアが10万円ぐらいの高価格端末を値引いて(実質)0円で販売していることを問題視している。このような環境下でどうやって「格安」という業界を育ていくのか、と考えた時に「(大手)キャリアは高い、でも一般的なMVNOは逆に不安だ」という意見があるとすると、「第三極」的なものはどうしても必要だ。
「UQのミッション」ということに立ち返ったとき、競争は「右」か「左」かという単純なものではなく、もう少し「真ん中」の集団がいて、いろいろなやり方で日本全体のスマホの値段が下がって、より安心で便利なものになっていけば良いと考えている。
そういう観点では、ケイ・オプティコムに反論をするつもりは全然なくて、我々の思いとしてできることをやっていければ、と思っている。
―― 新しいCMを見ると、Y!mobileを相当意識しているように思える。これで、Y!mobileに「勝てそう」か。
野坂社長 正直に言うと、UQと(Y!mobileの前身である)イー・モバイルが戦って、どんどんどんどん(競争的に)近づいていった頃と比べると、日本においてとても有名になった今のY!mobileは、気持ち的には「絶壁」という感じもしている。
ただ、気持ちで負けてはいけないとも思っていて、我々はこれから(CMなどを通して)思いを伝えて、賛同者を増やして、もう一度日本のスマホの「原点」を考えていきたい。
ちょっとおこがましいかもしれないが、今の(携帯電話を巡る)日本の混乱した議論を考えると、mineoも「良き先輩」で、良い争い方している。我々は負けないように、有名なY!mobile以上のものを出していけるようにしたい。
―― そういう観点では、Y!mobileが対抗と思われることをしたが、それは「願ったりかなったり」ということか。
野坂社長 話題を作る分には良いのかな、と思っている。300回も無制限も同じようなところがある。
先ほども言った通り、今はそんなに通話をしなくなった。自分も個人的に(通話は)月に1、2回という感じであとはSNSでやっている。しかし、シニア層を考えると(大手)キャリアと同じような5分かけ放題も選択肢にあった方が良いかな、とは思っている。
―― 立ち位置として、「ソフトバンクの中のY!mobile」に対する「auの中のUQ」を狙っていくのか。
野坂社長 「ソフトバンクの中のY!mobile」というものをいわゆる「セカンドブランド」と皆さんは呼ばれているのだと思うが、我々は、(出資比率規制の)3分の1という絡みもあり、KDDIとは違う会社だと思っている。
ソフトバンク絡みでは、Wireless City Planning(WCP)が理屈でいえば我々と同じ「外」の存在となる。しかし、WCPは(AXGPネットワークを)全てソフトバンクに卸しており、直接のエンドユーザーをお持ちでない。
我々は、WiMAXでここまで(エンドユーザービジネスを)やってきたので、その顧客基盤とスマホを合わせて、言い方はおこがましいが「第4のキャリア」として頑張っていきたい。(Webメディアなどの)年頭所感を見ると、我々は三大キャリアの次の4番目に載っていることが多い。そういう立ち位置にあると考えている。
もちろん、世の中的には(auの)セカンドブランドという見方があるのは分かっているが、志としてはそうではない。
―― Y!mobileがソフトバンクのセカンドブランドとして事業展開している中で、競争条件的に御社が不利になることはないのか。
野坂社長 それはあるかもしれない。WiMAXにおいてMNO(無線設備を持って通信事業を営む事業者)をやっているとはいえ、こちら(UQ mobile)はMVNOなので、そういう意味では競争上不利になると思う。
だが、WiMAXプラスアルファで頑張っていくとか、一歩一歩やっていこうと思っている。ほぼ10年間それでやってきた。具体的に「これとこれで戦って勝つ」というものはないかもしれないが、気持ちとしては「やれる」という思いの方が強い。
―― UQ mobileのプランにデータ専用のものが見当たらないように見えるが、「そちらはWiMAXで」ということか。
野坂社長 現在は「ぴったりプラン」「たっぷりプラン」といった音声コミコミのプランを推しているため目立たないが、KVEの時代から提供しているものがある。
―― では、そのようなプランとWiMAXはどのように差別化するのか。
野坂社長 WiMAXはどちらかというとかなりのギーク層が使っている。そのために「ギガ放題」というプランを用意している。
―― 総務省でのフォローアップ会合の議論では、大手キャリアの接続料の値下げも取り上げられている。値下げが実現した場合、値下げ分はサービスへ還元する方向に働くのか、それとも経営体力の強化につながるのか、どのような効果があると考えるか。
野坂社長 我々は(値下げ分を)サービス競争に持っていきたいと考えている。UQ mobileは後発なので、体力温存なんていうことは言っていられない。
接続料の値下げは、MVNO業界全体にとってとても良いこと。我々はそれを先行して還元したい気持ちだ。
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