1月11日、KDDIは「au発表会 2017 Spring」を開催した。
CES取材を終えて前日までには帰国するはずだったが、実はラスベガス空港のゲートで搭乗直前に椅子に座ったところ、寝入ってしまうという失態を犯してしまった。ハッとして目覚めたものの出発時刻の10分後であり、すでに予定していた飛行機はゲートを離れてしまい乗ることができなかった。
その後、なんとか2時間後の飛行機に乗れたものの、経由地のサンフランシスコ空港で成田便に乗れずに翌日の便まで待つことになり、結果、au発表会には参加できなくなってしまった。
ということで、いつもニコ生でお世話になっている、同業者の中山智さんに田中社長の囲みの動画をもらって、テキストを書き起こした。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年1月14日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
―― あけましておめでとうございます。
田中社長 「おめでとうございます」
(★ 自分も挨拶したかった)
―― 2980円というのはかなり意識されていたんですか。
田中社長 「ちょっと意識したね」
―― これは格安スマホの料金体系がターゲットなのか。
田中社長 「なんかサンキュッパ(3980円)だと頑張ったねという感じだけど、ニイキュッパ(2980円)だとちょっといったよねという感じ。少し制限は入っているけども、頑張った」
(★ 家族も加入しなきゃいけないとかスマートバリューが必要とか、制限が多すぎるような)
―― 学生だけというのは条件で縛りみたいなのが結構、あるのかと。
田中社長 「みんなオープンにして、一様にやるのかという議論はある。いろいろ条件を作って、縛って、いや対象を狭めていくというのはあるが、やはり学割というのはこれからスマホを持つという人がターゲットだから、新規でもいいんじゃないかと思ったんです。
それだけでは不十分なので、学割で加入してしばらく経った人は本当にデータをたくさん使うので、そっちのほうもアンダー25でカバーしたという建てつけにしています」
(★ MVNOは端末の分割払いを含めてコミコミだけど、auはそうじゃないからなぁ。iPhone7が買えるというのは魅力だが)
―― 端末価格でタスクフォースを意識したものはあるか。
田中社長 「端末価格は(料金プランに)絡めるとマズイよね。それなりに昨日のあれ(総務省のガイドライン)じゃないですけど、どちらかというと月額料金で、いろいろ施策をしていく。ただ、アンダー25のほうは1万円の還元をしている」
(★ 総務省の「端末代金と通信料金は別にしろ」という意向を汲むと、MVNOがやっている音声通話とデータ通信、端末代金がコミコミなのはMNOとしてはできないわけで)
―― 端末価格を安いものを用意したりしないのか。
田中社長 「端末はない。もともとMNOはiPhone需要が基本になる。ここをベースにした。春の端末発表は、できるだけセグメントで切ったところで声を聞いて改善につなげることを頑張っていきたい。
改善型はそれなんですが、今回新しくトライしたのは、Qua stationみたいなもの。結構、僕は気に入っているですけど。なかなか、プロパガンダは難しいんでしょうけども。結構、いいなと思っているのと、意外とホームルーターがいいんじゃないかと。電波が隅々まで届きますよといっても、本当かという話になるが、今日はハイライトして説明しなかったが、いいと思っている。あんな世界がくるのではないのかと思っていますね」
(★ 面白い商品だけど、狙っているユーザー層は相当、理解度が低そうなので、どこまで浸透できるかが勝負になりそう。液晶画面とかがない単なる白い箱だと、本当にコピーできているかどうかも不安だろうし。個人的にはもうちょっとマニア向けのQua Stationが欲しい)
―― Wowma!だが、顧客の体験価値向上というのに結びつかないような気がするが。
田中社長 「これからなんですよね。実はやっと(DeNAショッピングが)クロージングというんですかね、買収というか投資をしてから、移行するまで時間が必要ですから、年末にようやっと終わって、これから1月末までにサイトを入れ替えて、それから力を入れて、やっていく。Wowma!についてはもう少し、お待ちください」
(★ 独自にやるより、いま勢いのあるアマゾンと組んで何かできれば面白いのに。スカイプやグーグルと早い段階で手を結んだKDDIだけに何かできないものなのか)
―― Eコマースで思い描いている先は何なのか。
田中社長 「いろいろと。今日はこれぐらいに」
―― この春商戦はMVNOが伸びている中、変化はあると思うか。
田中社長 「ずっと前は、MNOのセールスシーズンになるとMVNOは減る方向にあった。ところがこの前のiPhoneの時から、MVNOもMNOもセールスシーズンが重なってきている。そういう意味では、学割シーズンというのは、最初にユーザーがスマホを持つシーズンといえる。MNOも頑張るぞというところを見せていきたかったので、今日のような発表になった」
(★ 去年はワイモバイルが強かっただけに、今年もMVNOというかまずはワイモバイルとの勝負かと)
―― 家族全員、auに囲い込んでいくのか。
田中社長 「そうなって欲しいけどね。僕らはまだ3割のシェアなんで、家族の中ではいろんなお客さんがいらっしゃるので。当然、みんな一緒になってくれれば嬉しいし、いろんないいこともあります。とはいえ、(顧客がMNPで移行する)流動性が無い中で、学割の時にちょっと頑張ってみようと。面白い端末があるとか、そういったことを提案できないと意味がない。天国というのに込めた意味もあって、いいでしょ(と、記者に詰め寄る)。賛同を得られました、一人」
(★ 固定回線の取り合いもなかなか厳しそうだし。その点、学生を軸にするのが正しいのかも)
―― ガイドラインが適用されると、iPhoneの値段は実質負担額が2万円ぐらいになってしまうが。
田中社長「いま、2万ちょいぐらいですよね。二つ前となるとiPhone 6ですから」
―― きつくないかなと。そこまで実質負担額を上げるのは。
田中社長 「ガイドラインについて、とやかく言えない立場になってしまったので。我々がやっていかなくてはいけないのは、当然のことなら、もっといろんな端末を作らなくてはいけないが、料金面もひとつだし、料金以外のライフデザインもそうだし、そういうことでもっともっとチャレンジしないといけない。
下取り額は、5000円にしたらいいじゃないかというけど、それはそれでガイドラインで縛られているので、そうはできない。明らかに端末の値段はもう一段、上がっていくのは変わりない」
(★ 何か秘策があるような気がするけど。総務省が悔しがるような)
―― MNPの流動性が落ちているからこそ、まだスマホを持っていない学生をターゲットにしたのか。
田中社長 「そうですね。それもひとつあるんですけども、それより前に学割シーズンで、何も提案できないオペレーターって、存在意義がないって思っていて、だから踏み込んだら、どこまでできるんだという考えでやった。今回は階段状の料金プランを作ることによって、こういうこともできるんだなって。MNOっていろんなサービス、付加価値を提供しているので、それもセットで、どこまでやれるかを提案した。MVNOじゃなくて、MNOもあるぞ、UQだぞと、みていただければと思います」
(★ MNOがMVNOに揺さぶられているようじゃダメでしょ。ここは料金だけではない付加価値をつけていかないと。航空業界だって、LCC が台頭する中、ANAやJALから離れない人たちもいるわけだし。料金だけではない魅力があるはず)
―― Home Wi-Fiルーターは固定回線の代替になるというコンセプトなのか。
田中社長 「そういうイメージで考えていますけど」
―― 固定回線とのセット割があるが、そういったものは用意しないのか。
田中社長 「いま、ルーターとのセット販売はスマートバリューmineがある。それはそれなりにやってきたんですけども、僕らのセット割りという考え方と、お客さんの使い方でいうと、若い人が固定回線を持たないのは事実なんで。部屋のなかであーじゃこーじゃは面倒臭い。ルーターを無線で、バックホールでつないで、家庭内のルーターに特化したらどこまでできるのかということ。今回、全国440Mbpsになりますし、(WiMAX 2+が)部屋の隅に行ったら電波が繋がらなくなるというのは事実なんで、そこをきっちやれるように、外観はでかいですが、そのなかにアンテナとかのテクノロジーをいれて、見かけもわりといいじゃない。いいでしょ。そういう風に思って、ああいうのを作ってきたんですけど。結構、評判はいいです」
(★ Home Wi-Fiルーターを初めて見たとき、「ソフトバンクみたいに固定回線として扱い、セット割みたいなものを作らないと対抗できないのではないか」と思っていたけど、KDDIにはすでにWI-Fiルーターと組み合わせて割引になる「スマートバリューmine」があったのね。すっかり忘れていた)
―― 今シーズンの学割ですが、ソフトバンクが一カ月前に仕掛けてきたが、即応されなかったのは、そんなに影響がなかったのか。
田中社長 「僕らは今日の発表に向けていろいろと準備してきたし、僕らが考える学割では究極のものを作ろうというコンセプトとは少し違っていたので、そこまですることはないかなと思って」
(★ これまですぐに対抗策を出すのが当たり前だったけど、「ほかに準備していたから対抗策を出さない」ということもあり得るのね)
―― ソフトバンクの学割に比べて自信があると。
田中社長 「いや、どう思います?」
―― ぜひ、コメントいただければ。
田中社長 「結構、頑張ったなぁ、auさんて、第三者的には思うんですけど。はい、自信があります」
(★ 他社からも「見かけは安いけど、適用するにはいろいろと条件がある学割」が出てきそう)
―― 春商戦において、UQモバイルといったMVNOとのバッティグはどう考えているのか。
田中社長 「ある程度、あるのかもしれんけど、まぁ、それはそれでいいんじゃないの。いまはMVNOさんにスポットが当たっているのは事実だし、どちらかというと、MNO側も頑張っているよ、というのは見せたい。我々としては、料金差は一定量ありますので、それがジャスティファイできるようなことを考えていかないといけない。CXもなかなか進みませんけども、ちょっとずつ良くなっていくと思う。頑張っていこうという思いです。
MNOは自分たちのコンセプトで端末を作れる。僕らはQua phoneをやっていましたが、今回、IoTライクなものとして、Qua stationがある。LTEを入れて、クラウドじゃなくて、そこにあるけど外から見れます、というなかなかいいかな、って思っています。良心的で、Qua stationを自宅のブロードバンドにつないでいたら、外からスマホでアクセスするときも、重いデータはLTEではなくブロードバンドインターネットを経由してきますから、うまく使えばQua station側のデータ料金はかからない。
僕らとしてはお客さんの使い勝手が良くなって、ステイしてくれたら、こんないいことはないと思って作っています。
細かなスペックを読むと、いろんなことができるようになっていますから。楽しみに」
(★ 多くのユーザーが「MVNOの料金は気になるけど、ちょっと不安。いま契約しているキャリアに似たようなものがあればそれでいい」と思っている。その点においては、そうした不安のない人はUQモバイルで取り込み、尻込みする人はauにステイさせるという戦略で間違っていないと思う。
とりあえずは2980円が一人歩きしていくので、ユーザーは惹きつけられることだろう。ただし、「契約してみたら、2980円にはならなかった」という人も多く出てきそうな感はある)
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