MVNOがあればキャリアは不要?その関係の真実は?SIM通

» 2017年02月08日 06時00分 公開
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 大手キャリアからMVNOに乗り換え、「安くて快適!高いだけの大手キャリアなんて、もういらないんじゃないの?」と思う人が増えているようです。実際はどうなのでしょうか?大手キャリアとMVNO関係性やそれぞれの違いについて解説します。

MVNOがあればキャリアは不要?その関係の真実は?

 MVNOとは「仮想移動通信事業者」のことで、大手キャリアのような通信設備を持たずに、モバイル通信サービスを提供する事業者です。それゆえ「自分で設備を持たないから安い」と言われることも。では、なぜ設備を持たないのに通信が可能なのでしょうか。

 モバイル通信には、必ず「モバイル端末」→「モバイル基地局」→「モバイルネットワーク」という経路が必要です。MVNOは、基地局とネットワークを大手キャリアから借りています。ドコモとauからの貸し出しが主流で、ソフトバンクも少し行っています。MVNOはこの3社のいずれかから、設備を「ちょっと借りる」ことでサービスを行っているのです。本当はパケットごとに「設備利用料」を払わねばなりませんが、パケットの数があまりに膨大なため「キャリアとMVNOの間で流れた総データ量で料金を決めましょう」という、大雑把な方法が採られています。

 モバイル端末同士で通信を中継する通信規格も世の中に存在しますが、まだまだ普及していません。仮に遠い将来に普及したとしても、高品質のモバイル通信には、「モバイル基地局」と「モバイルネットワーク」が必須なので、LTEのような高速かつ低遅延の通信は容易ではないでしょう。

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 MVNOはこのようなしくみで成り立っていますから、「大手キャリアは不要」という考え方は、そもそも成り立たないのです。もしキャリアがなくなってしまったら、MVNOも通信することができなくなってしまいます。しかし、それでもやはりキャリアとMVNOの料金には、差がありすぎるように思う方もいることでしょう。

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 キャリアとMVNOの料金に差ができる理由のひとつとして、法令で決められた「MVNOへの貸し出し料金」があります。キャリアはMVNOにほぼ原価相当で設備を貸し出さなければならない、と決められています。前述のとおり、実際には「設備をパケットが通る瞬間だけ貸す」という考え方(設備の限界容量とその費用から、容量ごとの費用を算定する)で料金が決められていますが、近頃の方式では通信速度が速く、パケットが通るのはほんの一瞬、それ以外のほとんどの時間は「空き時間」ということになります。

 一方、大手キャリアは自社でその装置を設置して保守しているので、限界容量分の費用を支払っています。たとえば、ある装置1個のトータルコストが10,000円で、MVNO利用者のパケットが通る時間が1時間(3,600秒)のうち36秒だけだったすると、キャリアがMVNOに請求できるのは100円だけと決められているのです。残り9,900円は、大手キャリアが自ら負担せねばなりません(実際にはもう少し複雑な計算式で貸し出し料金が決められています)。

 それでは、MVNOにたくさん払わせるために設備容量をぎりぎりにして、1時間のうち3,500秒はMVNOのパケットが流れているようにしてみたとしましょう。しかし、その場合には回線の大混雑が起こってしまいます。快適に使えるように設備を作れば投資額の大半が自腹、元が取れるようMVNOに貸し出せば大混雑でネットワークは破綻……。大手キャリアはこんなジレンマを抱えているのです。

 最近、大手キャリア各社は、通信サービスよりも、周辺事業のほうに力を入れています。その理由として挙げられるのは、通信そのものがMVNOに流れ込むために経由される「土管」みたいになってしまっていること。また、設備を維持するためには、MVNOからの収益の何倍ものコストがかかること。それらを補うために業態を広げ、自社の直販ユーザーを維持しようと努力をしています。

 もちろん利用者にとっても、大手キャリアと契約することには、まだまだ多くの全くメリットが存在します。VoLTEのような高度なサービスや高速通信の分野では必ず大手キャリアが先行しますし、「設備のスケール(大きさ)」という圧倒的なメリットがあるので「昼休みの時間帯になると混雑してしまう……」というようなこともありません。また、自宅の電波が悪くて困った時も、電話1本で中継アンテナやフェムトセル(自宅専用の小型電波基地局)を届けてくれます。災害時の復旧や現地での援助、緊急時の対応も、まだまだ大手キャリアのほうが信頼度で勝るように考えられます。

 以上、MVNOとキャリアの関係性やキャリアの存在意義について述べました。MVNOをお使いの方も、日本の通信インフラ維持のため、日夜努力を重ねているキャリアのことを、しっかり理解しておいていただきたいものです。

(文:記者M)

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