6月26日、マイクロソフトはWindows 7について、わが国におけるパッケージ製品の構成とその参考価格を明らかにし、それと同時にマイクロソフト、およびPCベンダーによる優待アップグレードを含めたキャンペーンの概要を発表した。Windows 7の発売は、2009年の後半に行われるPC関連のビッグイベントだけに、すでにさまざまなところで報じられている。しかし、何かと「アップグレード」という言葉が出てきて、混乱しやすい部分もある。
まず一番身近なアップグレードは、マイクロソフトが販売するアップグレードパッケージだ。量販店で売られているアップグレード版というのがそれで、Windows 7の場合、すべてのWindows XPユーザーならびにWindows Vistaユーザーが購入できる。つまり、Windows Vista Home Basicのユーザーであろうと、Netbookに付与されていたULCPCライセンスのWindows XP Home Editionのユーザーであろうと、すべてのアップグレード版を購入可能だ。
これは言い換えると、Windows Vista Ultimateの正規パッケージを購入したユーザーがWindows 7 Ultimateのアップグレード版を購入する場合も、ULCPCライセンスのWindows XP Home Editionを持つユーザーがWindows 7 Ultimateのアップグレード版を購入する場合も、支払うのは同じ2万8140円ということになる。同様に、Windows Vista Home Basicのアップグレード版を1万3800円で購入したユーザーも、Windows Vista Ultimateの通常版を5万1240円で購入したユーザーも、Windows 7 Ultimateのアップグレード版に支払う金額は同じである。
Windows Vista Ultimateの価格、Windows Vista BusinessやHome Premiumとの機能差、Extraで追加された機能、そしてアップグレード時にも優遇がないことを合わせて、果たしてWindows Vista Ultimateを購入したユーザーは、満足しているのだろうか。マイクロソフトはWindows Vista Ultimateユーザーの顧客満足度について、きちんと調査したほうがよいのではないかと思う。
おそらく、あまり自信がないからこそ、Windows 7ではUltimateの価格を引き下げたのだろうが、アップグレード版、通常版とも、Windows 7 Professionalと1000円しか違わないのなら、わざわざ別パッケージを用意する必要があるのか、非常に疑問だ。SKUを増やし過ぎると、こうしたアップグレード時にもいろいろと弊害が生じると思うのは筆者だけではないだろう。
加えて、32ビット版と64ビット版のパッケージングだが、マイクロソフトが販売するパッケージ版については、Home Premium、Professional、Ultimateの3つのSKUについて、両方が収録されることが公式Blogで明らかにされた。Windows VistaではUltimateのみ32ビット版と64ビット版を収録し、そのほかのSKUは申し込みによる実費配布であったが、Windows 7については64ビット版に対する需要が高いということで、両バージョンの収録となったようだ。この点でもWindows 7はWindows Vistaより改善されている。
2009年6月26日に発表されたWindows 7のパッケージ参考価格(税込み) | ||
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製品名 | アップグレード版 | 通常版 |
Windows 7 Ultimate | 2万8140円 | 4万740円 |
Windows 7 Professional | 2万7090円 | 3万9690円 |
Windows 7 Home Premium | 1万6590円 | 2万6040円 |
Windows Vista発表時(2006年10月26日)のパッケージ参考価格(税込み) | ||
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製品名 | アップグレード版 | 通常版 |
Windows Vista Ultimate | 3万3390円 | 5万1240円 |
Windows Vista Business | 2万7090円 | 3万9690円 |
Windows Vista Home Premium | 2万790円 | 3万1290円 |
Winodws Vista Home Basic | 1万4490円 | 2万7090円 |
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この比較的誰でも購入可能なアップグレードパッケージとは別に、特定期間、特定のユーザーにのみ提供されるのが優待アップグレードだ。今回の場合、6月26日以降にWindows Vista Home Premium、Windows Vista Business、Windows Vista Ultimateの3種類のOSのパッケージ版、DSP版、あるいはこの3種のいずれかがプリインストールされたPCを購入したユーザーが対象となる。
最低でも1万6590円が必要なアップグレードパッケージと異なり、優待アップグレードの価格は3000円前後だ。デル、日本ヒューレット・パッカード(コンシューマーモデルのみ)、マウスコンピューターの3社は完全無料を打ち出している。またソニー、日本HP、富士通は、優待アップグレードパッケージに、必要なドライバやBIOSを収録したメディアを添付するという。
ソニーの場合、有償アップグレード対象外のユーザーにも、有償でBIOSやドライバを収録したサプリメントディスクを提供する。このようなBIOSやドライバ類は、基本的にはWebサイトでも提供される(すべてになるかどうかは未定)が、サプリメントディスクを用いたアップグレードは保証対象、ダウンロードによるアップグレードはユーザーの自己責任という扱いになる。
優待アップグレードのルールの1つは、アップグレード先の対象が限られるということだ。アップグレードパッケージは、対象者であればどのSKUを購入することも可能だったが、優待アップグレードは基本的に購入したパッケージ、あるいはプリインストールされたSKUに相当するWindows 7へのアップグレードのみが認められる。つまり、Windows Vista Home Premiumの32ビット版をプリインストールしたPCの購入者が入手できるのは、Windows 7 Home Premiumの32ビット版のみ、ということになる。
したがって、相当するSKUが存在しないWindows Vista Home Basicは優待アップグレードの対象外となる。ずっとWindows Vistaを使い続けるのならよいが、Windows 7へのアップグレードを考える場合、Windows Vista Home BasicからWindows 7 Home Premiumへのアップグレードは、1万6590円かかる。対して、Windows Vista Home PremiumがプリインストールされたPCなら0円〜3150円で済む。これから新規にPCを購入する場合は、常にこの差額を意識しておく必要がある。
優待アップグレードは、基本的に同一SKU間の横滑りであり、32ビット版から64ビット版への移行も原則として認められない。例外は東芝の一部機種に設定されているセレクタブルOSモデルで、32ビット版と64ビット版どちらへも優待アップグレードできる。これはセレクタブルOSモデルが32ビット版と64ビット版、両方のOSから起動時にどちらかを選ぶ仕組みになっているからだ。両方が選べるから、そのどちらに対しても優待アップグレードが可能だ。その気になれば、32ビット版のWindows Vistaから、64ビット版のWindows 7というアップグレードもできる。
アップグレードの対象となるOS | ||
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形態 | アップグレード対象OS | アップグレード後のOS |
通常アップグレード | すべてのWindows XP/Vistaのパッケージ | すべてのWindows 7アップグレードパッケージ |
優待アップグレード | Windows Vista Ultimate | Windows 7 Ultimate |
Windows Vista Business | Windows 7 Professional | |
Windows Vista Home Premium | Windows 7 Home Premium | |
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