こうしたモバイル市場に対するIntelの取り組みをハードウェア以外の視点から見てみるのも面白い。IntelではMID向けのOSとしてLinuxをベースとした「Moblin」プロジェクトに多額の投資を行っている。IDF 2009でもポール・オッテリーニ氏のキーノートスピーチで最新バージョンのMoblin 2.1が紹介されるなど、Moblinが地道に育っているのがうかがえる(オッテリーニ氏のキーノート・スピーチの詳細は32ナノは当たり前、22ナノがすぐそこに──Intelが“22ナノ”ウェハと「動く!」Sandybridgeを公開を参照のこと)。ソフトウェアやアプリケーション環境支援が、モバイル市場の攻略におけるIntelのもう1つの柱となる。
パルムッター氏に続いて登場した米Intelのソフトウェア&サービス部門ジェネラルマネージャー 兼 バイスプレジデントのレニー・ジェメス氏は、Intelのソフトウェア開発者支援について説明し、その一環としてスタートした「Atom Developer Program」を紹介した。Atom Developer Programは、NetbookやMID向けの“App Store”とも呼べる存在だ。
App Storeは、米AppleがiPhoneやiPod touch向けのアプリケーションを販売するために設けたオンラインストアであるとともに、ソフトウェア開発者がユーザーと触れ合う窓口の役割も果たしている。Atom Developer Programでも、開発者支援ツールやコミュニティが用意されるほか、アプリケーションの配布機能なども備えるなど、「このWebサイトを介して開発者が利益を得る仕組みを提供したい」とジェメス氏は述べている。内容的にはAtomを使うアプリケーション開発支援ということで、プラットフォーム以外の制約はない。OSはWindowsとMoblinの両方が選択できるということだ。
IntelがMoblinに力を入れていることは、Atom Developer Program以外でもうかがえる。Dellから、Moblinを導入したNetbookがアナウンスされたのもその表れといえるだろう。Dellの「Mini 10D」は、OSにMoblin 2.0をインストールした状態で出荷され、9月24日からオンラインストアで注文できるようになる。Dellは、すでにUbuntuを導入したNetbookをリリースしているが(詳細はデル、Ubuntu搭載で4万円を切るエントリーミニPC「Inspiron Mini 10v」を参照のこと)、Mini 10Dは「Ubuntu Remix」と呼ばれるもので、Ubuntu LinuxにMoblinのUIを被せる形で動作しており、インタフェースを切り替えればUbuntuとしても利用できる。
MicrosoftやAdobeもMoblinサポートを表明しており、MicrosoftはSilverlightをMoblin上で動作させるほか、AdobeはAIRをMoblinに対応させるという。IDF 2009でも、Moblin版Netbook上でSilverlightによるビデオストリームを再生するデモが紹介された。
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