Windows and Windows Live部門プレジデントのスティーブン・シノフスキー氏だが、同氏の功績はWindows Vistaで悪化したWindows OSの評価を、自らが陣頭指揮したWindows 7で一定水準まで回復させたことだ。普及率で前世代のWindows XPを下回ったWindows Vistaだが、シノフスキー氏によれば、BUILDが始まった2011年9月の時点でWindows 7の利用者数はWindows XPを上回り、Microsoftが長年の目標としていた「打倒XP」をついに達成したと来場者に報告した。
その成功したOSの後継となるWindows 8の目標を1つ挙げるなら、Windows 7で築いた成果をさらに拡大すること、になる。シノフスキー氏は、Windows 8について「Windows 7からさらに改善され、また、Windows 7で動くアプリケーションのすべては、そのままWindows 8でも動作する」と説明している。
シノフスキー氏は、Windows 8がWindows 7の延長でありながら“Metro”と呼ばれる新しいユーザーインタフェース(UI)に対応した一方で、過去の資産もすべて引き継いだスーパーセット的な存在である点も強調している。それにも関わらず、OSはよりコンパクトになって、動作は「Windows 7よりかなり改良された」とも説明する。
基調講演では、同じハードウェア構成のPCで、Windows 7とWindows 8のそれぞれを導入してデフォルトにおけるシステムリソース使用量をタスクマネージャーで比較し、Windows 7(エディションは公開せず。Service Pack 1は適用)のメモリ使用量が404Mバイトなのに対し、BUILDに参加した開発者に配布するWindows 8 Developer Previewのメモリ使用量が281Mバイトに減っていることを示した。
OS自体はWindows 7から「さらにファット」になっているわけで、それにも関わらずメモリ使用量が減っているというのだ。Windows 7がDeveloper Previewの段階でメモリ使用量が540Mバイトだったことを考えれば、今後登場する正式版のWindows 8で、さらにメモリ使用量が少なくなっている可能性も否定できない。
このようにメモリ使用量を“抑制”する理由の1つに、Windows 8で初めて対応することになる「ARM搭載デバイス」の存在が挙げられるだろう。少なくても2Gバイトや4Gバイトのメモリを搭載するPCに対し、スマートフォンなど小型デバイスが中心のARMでは、メモリ容量が256Mバイト程度、ハイエンドモデルでも512Mバイトから1Gバイト程度だ。PCとARM搭載デバイスのハードウェアリソースにおけるギャップは大きく、パフォーマンスの差も含めて、Microsoftはあまりにも違いすぎる両者の差をWindows 8で埋めていかなければいけない。
シノフスキー氏が基調講演で行ったデモで、動作している機材がARM搭載デバイスであると繰り返し強調したのも、「ARM搭載デバイスの非力な性能でWindows 8と対応アプリケーションはまともに動かないのでないか」という不安を払拭するためだろう。
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