IntelがUltrabookで実現したい姿は、「消費者が求めるすべてのユーザー体験で、満足できる性能を実現するデバイスが、ユーザーの身近な存在になる」(エデン氏)ことだ。スマートフォンやタブレットデバイスでSNSやストリーミングコンテンツを利用して楽しんでいるユーザーも、もっと面白いビデオやもっときれいな写真を自分で作成して公開したいと思えば、生産性に優れたPCが必要になる。そのとき、魅力的で、かつ、携帯端末と一緒にいつも持ち歩けるようなノートPCがほしい、とユーザーに思わせたいのが、IntelがUltrabookに期待する役目だ。
エデン氏は、「もし、最新のタブレットデバイスとノートPCを交換しようと持ちかけられても、それに応じるユーザーは少ないはずだ。仮に、交換しても2、3日もタブレットデバイスを使えば、“お願いだから、私のノートPCを返して!”と泣くことになるはずだ」と、ノートPCの需要と価値が下がっているわけではないと主張する。
その一方で、低価格で購入しやすいノートPCとして登場したNetbookでは、その市場が急速に縮小しつつあることをIntelも把握している。「タブレットデバイスがNetbookを侵食し、さらにはノートPCの市場も奪おうとしている」と分析するPCの流通関係者も少なくない。
しかし、エデン氏は「そんなことは一切ない」と断言する。「Netbookの売れ行きが鈍った理由は、タブレットデバイスではなく、在庫処分などで高性能なノートPCが安売りされているからだ」と主張する。今後、Ultrabookの普及が進めば、「Netbookはタブレットデバイスではなく、Ultrabookに侵食されて、その市場規模を小さくしていくことになるだろう」(エデン氏)と予測する。
この予測を受けて、Intelは、Atomをスマートフォンやタブレットデバイス向けに展開すべく、ロードマップの最適化を図っている。IntelでNetbookやタブレットデバイスの開発を担当する副社長のスティーブ・スミス氏は、「低消費電力のCPUでは、グラフィックスやチップセット機能などの統合を進めたSoC(System on Chip)への移行を加速する」と述べている。
Intelは、Atomのプロセスルールを1年ごとに進化させることで、3年間でXeonやCore iシリーズが利用している最先端技術に追いつかせたいと考えている。スミス氏は「Atomを毎年微細化していくだけでなく、世代更新ではCore iシリーズで強化された技術を導入して、アーキテクチャを進化させる」と説明する。


32ナノメートルプロセスルールを採用した超低電圧版Atomの“Medfield”(開発コード名)を採用したタブレットデバイスを手にするスミス氏(写真=左)。AtomのSoC化を加速し、今後は約1年サイクルでプロセスルールの移行とアーキテクチャや機能の更新を図っていく(写真=中央)。SoCタイプAtomのロードマップ。Coreシリーズの機能を順次Atomに統合していく計画だ(写真=右)IDFで示されたロードマップにあるような、Atomの積極的な開発を支えるのは、22ナノメートルプロセスルールで導入する3Dトライゲートトランジスタ技術の存在だ。
スミス氏は「22ナノメートルプロセスルールによって、Atomプラットフォームの消費電力を20分の1に削減できる」と、Ultrabookを実現させるために開発された省電力技術をAtomでも導入し、スマートフォンやタブレットデバイスでも、より充実した性能と機能を利用できるようにする考えだ。
そこには、競合他社に対して遅れをとったIntelのスマートフォン&タブレットデバイス向けCPUを、半導体のプロセスルールという、Intelが大きく先行する優位性で巻き返す意図が見てとれる。


22ナノプロセスルールと、3Dトライゲートトランジスタ技術について説明するマーク・ボア氏(写真=左)。Intelが22ナノメートルプロセスルールで導入する3Dトライゲートトランジスタ技術は、スマートフォンなどの携帯デバイス向けCPUで必須になる低消費電力駆動を実現する(写真=右)
IntelがIDF 2011で公開したプロセスルールのロードマップ。32ナノメートルプロセスルールへの世代移行では、競合他社に比べて3〜4年のリードを保っている(写真=左)。Intelは、32ナノメートルプロセスルールでSoC向けのプロセスルールも開発している。22ナノメートルプロセスルールへの移行でも、SoCに最適化したプロセスルールを用意し、スマートフォンやタブレットデバイスに適したSoCを開発する計画だ(写真=右)
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