モバイルマルチメディア放送の大きな可能性――沖縄Media FLO実証実験:神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2010年03月17日 12時30分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 アナログテレビ停波後の周波数を用いて、ケータイやスマートフォン、カーナビなどさまざまな携帯端末に向けて行うマルチメディア放送。いわゆる「携帯端末向けマルチメディア放送(モバイルマルチメディア放送)」実現に向けた取り組みが進んでいる。

 携帯端末向けマルチメディア放送の規格方式をめぐっては、総務省が14.5MHzの帯域幅を用意し、これを1事業者・1方式に割り当てる方針を打ち出している。この申請と審査は2010年夏に行われる予定であり、2012年のアナログテレビ停波後のサービス開始に向けて、事業化に向けた調整は佳境に入っている。

 この携帯端末向けマルチメディア放送の事業審査では、メディアフロージャパン企画とマルチメディア放送の2社が周波数割り当てに向けて有力視されている。前者はKDDIの子会社であり、米Qualcommが開発した国際的なモバイルマルチメディア放送規格「MediaFLO」方式を推進。一方のマルチメディア放送は、NTTドコモ、フジテレビジョン、日本テレビ、伊藤忠商事、電通など10社が出資し、国産の地上デジタル放送規格ISDB-Tを拡張した「ISDB-Tmm」を推進する“日の丸連合”である。

 MediaFLOか、それともISDB-Tmmか。

 その行方も注目される中で、メディアフロージャパン企画が3月15日、報道関係者向けに沖縄で実施中のMediaFLOを用いたユビキタス特区実証実験を公開した。これは総務省が計画中の携帯端末向けマルチメディア放送と同じ技術条件下で、MediaFLOを用いて実際にサービスの実証実験を行うというもの。ケータイをはじめとするモバイル端末も多数用意され、高速道路を用いたクルマ向けサービスの実験もメニューに含まれていた。商用化のイメージにかなり近いものだ。

VHF帯として世界初のMediaFLO放送に対応

 メディアフロージャパン企画が推進するMediaFLOは、米Qualcommが国際的なモバイルマルチメディア放送の技術方式として開発したものであり、すでに北米ではUHF帯(700MHz帯)でストリーミング放送のサービスが始まっている。しかし、日本で現在計画されている携帯端末向けマルチメディア放送で割り当てられるのはVHF帯であり、さらにストリーミング放送だけでなく、蓄積型放送(クリップキャスト)やIPデータキャストなど多彩なアプリケーションが想定されている。「VHF帯を用いたMediaFLOの実験は世界初」(メディアフロージャパン企画 代表取締役社長の増田和彦氏)であり、実証実験を行うアプリケーションも最先端のものがそろっているという。

 「沖縄のユビキタス特区実証実験では、無線局はギャップフィラーを含めて3局用意しました。これで那覇市と豊見城市の中心部はほぼカバーしています。また1局は高速道路用のもので、沖縄自動車道ではクルマ向けの受信実験も行っています」(増田氏)

PhotoPhoto MediaFLOの送信局。放送用の鉄塔に専用のアンテナを設置している
PhotoPhotoPhoto このコンテナのような建物が、MediaFLOの送信設備。まだ実験段階なので小型だが、内部には放送に必要な機材が納められている。壁にある実験局の免許状が誇らしげだ。PCの画面に映っているのが、MediaFLOの放送状態を表すグラフ。MediaFLOではストリーミング放送・クリップキャスト・IPデータキャストのコンテンツが、帯域と時間軸の隙間を自動的に埋めるように配置・放送される。これにより帯域をセグメントで管理するよりも、周波数を効率的に使える

 送信局の出力は、メインのものが300ワット。高速道路用は35ワット、ギャップフィラーは1ワットという構成だ。受信エリアは地形の影響もあるが、送信局から半径4〜5キロほど。これで那覇市豊見城市の約13万世帯をカバーしている。なお、エリアはSFN (single frequency network:単一周波数ネットワーク)で構築されており、そこでのデータ検証と品質評価も目的の1つに含まれている。

 「今回はVHF帯の11チャンネルを使用してMediaFLOの放送を行っていますが、実際の実証実験にあたっては干渉対策や混信対応に腐心しました。特に他の放送局との干渉対策では(フィールド実験をしたことで)かなりのノウハウが蓄積できた。また、SFNの混信についてもさまざまな悪条件をシミュレートした実験を重ねています」(増田氏)

 沖縄での実証実験は現在“フェーズ2”に入っており、インフラ側の実験からアプリケーション実験の段階になっている。ここではストリーミング放送に加えて、クリップキャストやIPデータキャストを用いたコンテンツ配信を行い、端末も市販のau携帯電話並みのサイズになっている。また、3月にはトヨタ自動車も実験に加わり、カーナビゲーション型の車載情報端末やリアエンターテインメントシステムでのMediaFLO活用を想定した実証実験も行ったという。

 「MediaFLOは北米では商用サービスが始まっているため、受信用のチップ技術は十分にこなれています。今回の実験で使用した携帯電話も少し手を加えただけで開発できました。MediaFLOは、最初から携帯電話向けに開発された技術のため、モバイル端末で重要な省電力性能やスペース効率がいいのも特長です」(増田氏)

 ほかにも、平均1.5秒でザッピングができる「すばやいチャンネル切り替え」や、番組ごと・コンテンツ内容ごとに伝送モードを柔軟に変える「伝送効率の高さ」、さらに伝送劣化時には映像を静止画で保持して音声だけ流す仕組みなど、モバイル環境を重視した技術的な特長が多く盛り込まれている。MediaFLOは“モバイル通信技術のノウハウが凝縮されたマルチメディア放送技術”という特徴があるのだ。

PhotoPhoto 携帯電話端末のメインUI。画面上にIPデータキャスト、中央にクリップキャスト、画面下部にストリーミング放送のチャンネルが並んでいる。BREWアプリで開発されており、端末の各ボタンや横画面表示にも対応している。今すぐでも商用化できそうなほど完成度は高い
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