Snapdragonはデュアルコアに、コンテンツ市場拡大にも尽力――Qualcommが見据える“次世代”Uplinq 2010 Conference(2/2 ページ)

» 2010年07月13日 08時00分 公開
[田中聡,ITmedia]
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低価格端末向けにBrew MPを推進

 Qualcommが先陣を切って注力するもう1つの分野が「オープンソースコミュニティ」だ。「オープンソースは、より優れたサービスを提供する創造性や革新を促進する」との考えから、同社の子会社であるQualcomm Innovation Center(QuIC)を設立し、オープンソースの最適化に努める。

photo Brew MPを採用したHTCとSnapdragonのスマートフォン

 これまでQualcommがアプリケーションプラットフォームとして提供してきたBREWは、「Brew MP(Mobile Platform)」として、マスマーケット向けに低価格帯のスマートフォンへの搭載を目指す。「2011年には50%以上の3G端末が新興国へ広がろうとしている。Brew MPは、低コストでスマートフォンの分野に手を伸ばしたいと考えている、新興国のオペレーターやメーカー、そして開発者にとってメリットがある」とジェイコブス氏は説明する。なお、Brew MPを採用したスマートフォンは、HTC製の「HTC Smart」とSamsung電子製の「Samsung Reality」がすでに発売されている。さらに、医者が患者の診察をする際などに役立つ、Brew MPベースの医療系アプリケーションを開発していることも明かした。

Facebookを利用したレコメンド機能「Vive」

 「皆さんはどんな方法でアプリを入手していますか?」という質問から、ジェイコブス氏はアプリケーションストアについても言及した。Qualcommが2009年に実施したアプリ検索についての調査によると、4人のうち1人のケータイユーザーが、欲しいアプリを探せなかったことがあるという。さらに、コンテンツやアプリをダウンロードした40%のユーザーが、興味のあるアプリを見つけやすかったら、1カ月に10ドルを使うと述べている。

 Qualcommは2008年にアイルランドのXiam Technologiesを買収し、アプリのレコメンド機能を提供している。その成功例としてジェイコブス氏は、8カ国、約1億契約者向けに提供中のVodafoneのアプリケーションストア「Vodafone 360 Shop」を挙げた。「Vodafoneは、一般の宣伝から購入した人の4倍のユーザーが、Xiamのレコメンド機能からアプリを購入していると発表した。その結果、Xiamの機能を導入していないサービスに比べ、導入しているサービスからの収益が3倍増になった」という。

 ジェイコブス氏は、もう1つのレコメンド手段として「口コミ」を挙げ、Qualcommが提供中の新サービス「Vive」についても説明した。ViveはFacebook経由で利用するもので、購入したアプリやお勧めのアプリに関する情報を友達と共有できるのが特徴。アプリの購入後に「このアプリをダウンロードしたからチェックしてみて」といったコメントを投稿でき、同時にほかのユーザーが勧めるアプリも確認できる。詳細はViveのWebサイト(外部リンク)を参照。さらに、同氏は中国でBrew MPのアプリケーションストアを導入することも明かした。

photophoto Xiamのレコメンド機能と、Facebookを利用した新たなレコメンド機能「Vive」
photophoto Viveのトップページ(写真=左)。お勧めのアプリをFacebookの掲示板と友達のページにコメント付きで紹介できる(写真=右)

異なる機器を接続するP2Pサービス

 “次世代の体験”の1つとしてジェイコブス氏が紹介したのがP2P(Peer to Peer)を用いた技術だ。講演ではノートPCとNokia端末、Nexus Oneといった異なる機器で、同じゲームをプレイするデモを実施。各機器はWi-FiやBluetoothでつながっている。「我々のソリューションを使うことで、ほかのプレーヤー(ユーザー)との壁がなくなる。P2Pを我々のチップセットに採用することで、ゲームをはじめとするアプリケーションをさらに楽しめるようになる」と述べた。

 Qualcommが2010年秋にSDKを提供する予定の、“vision-based”(視覚ベースの)ARを含むAR(拡張現実)アプリについても、将来のケータイコンテンツの中核を担うだろうとジェイコブス氏はみている(関連記事を参照)。

photophoto P2P技術を用い、ノートPCとスマートフォンで同じゲームをプレイ(写真=左)。紙にインプットされた情報をカメラで読み取り、ゲームができる新しいARアプリ(写真=右)

 Qualcommの名前が消費者の目に触れる機会は少ないだろうが、同社は開発者、通信事業者、メーカー間の橋渡しをする役割を担っているといえる。Qualcommにとって「モバイルは世界で最もダイナミックで将来性のある市場」であり、SnapdragonやBrew MPをはじめとするソリューションでケータイ市場のさらなる拡大を目指す。「(来場者も含めた)我々が、次世代のモバイル技術を発展させるリーダーだ。Qualcommは多数のオペレーターとメーカーを連携させる手助けになるよう、Uplinqを開催した。一緒に尽力し、次世代のモバイル技術を作っていきたい」とジェイコブス氏は抱負を語った。

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