失敗を恐れず、チャレンジするドコモへ――NTTドコモ 加藤薫社長に聞く(2/3 ページ)

» 2012年07月13日 08時30分 公開
[神尾寿,ITmedia]

MNP獲得合戦の泥沼化は健全な状態ではない

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―― 直近の販売市場においてですが、ここ数カ月、MNPでドコモは苦戦しています。この原因は何ですか?

加藤氏 それについてはだいぶ分析しました。端的にその原因を申し上げますと、MNP利用者に対して行われたキャッシュバックですね。春商戦ではキャッシュバック競争がかなり激しくなりましたので、その影響は大きかった。

 そしてもう1つ、(ドコモからのMNP流出につながったのは)KDDIが導入した「スマートバリュー」です。これが関西地域を筆頭に一部の地域では、かなり影響がありました。

 逆に皆さんがおっしゃるほど、iPhoneの影響は大きくない。MNPで苦戦している理由は、キャッシュバックや料金割引が中心なのです。

―― とはいえ、ドコモも他社より少し遅れてではありますが、キャッシュバックによるMNP獲得競争に参戦しました。

加藤氏 本当はそこで大きな競争はしたくないのですが、対抗措置としてはやらなければなりません。ただ、今のお金でMNPユーザーを優遇するという獲得合戦が泥沼化するのは健全な状況ではありません。

―― 現在、キャリア各社の販売奨励金が急速に積み増されており、過当競争だったMNP開始直後の規模を超えそうな勢いです。これは販売市場の競争においてしかたのないことなのかもしれませんが、キャッシュバックをばらまいてMNPさせるというような状況は、キャリアの経営や持続的な成長にとってよい傾向とは言えないのではないでしょうか。

加藤氏 もちろん、よい傾向ではありません。販売奨励金が行き過ぎると市場を歪ませてしまうという反省もあって、時間をかけて端末価格と通信料金の適正化をめざしてきました。スマートフォンのようにまったく新しい端末を迅速に普及させるためには、ある程度は(販売奨励金が)必要な面もありますが、それが常態化するのはよくない。

―― また、MNPユーザーの過度な優遇をすることで、「2年単位でキャリアを変えた方がお得で賢い」という認識が消費者の間に広がっています。これはキャリアの中長期的な経営基盤を脆弱化させてしまう。このような状況に、いかに対処していくのでしょうか。

加藤氏 2年単位どころか、(キャッシュバックを利用して)1〜2カ月でMNPをしてしまう人もいますからね。今のMNPが行き過ぎているという認識はあります。ご指摘のとおり、経営的に見ても健全ではありません。

 では、どうすれば(MNPの過度な優遇が)止まるのか。これは難しいところで、ドコモだけが清貧を極めるわけにはいきません。しかし、その一方で、長年ドコモをご愛顧いただいているお客様からすれば、(過度なMNP優遇は)当然ながらご不満ですよね。そのあたりのバランスをどう取っていくのかに苦慮しているところです。

―― ユーザーの中長期契約を増やすために、どのような取り組みをされますか。

加藤氏 そこは製品だけでは難しいので、サービスの魅力を高めていきます。例えば、先ほどの「dマーケット」や「しゃべってコンシェル」の内容を充実させていきます。アフターケアも力を入れます。総合的なサービスの心地よさで、ずっとドコモを使いたいというお客様を増やしていくことが重要です。

―― 既存ユーザーの中長期契約を促すロイヤリティプログラムとしては、ドコモのプレミアクラブが大きなポテンシャルを持つと感じているのですが、現状だとそれがあまり活用されていません。プレミアクラブの拡充などは考えていらっしゃらないのでしょうか。

加藤氏 プレミアクラブについては、よりお客様満足度が向上できるアフターサービスの品目はないかと考えているところです。他方で、プレミアクラブはほとんどのお客様にご加入いただいているのですが、無料ということもあって、加入していることを忘れられてしまうケースも少なくない。そこでより“プレミアムさ”を感じていただけるサービス拡充をしていく必要もありますね。

―― あとピンポイントな部分ですが、KDDIの「スマートバリュー」は販売市場でとても強い訴求力になっています。固定通信とのセット割引は、これまで考えられていた以上に効果が高い。ドコモとして、これにどう対抗していくのでしょうか。

加藤氏 スマートバリュー対抗の重要性は認識しています。そこでまず投入したのが「プラスXi割キャンペーン」です。また、ドコモが固定通信とのセット割引が絶対にできないかというと、そうではありません。ただ、その場合は通信料金をかなり広範に割引することになりますから、これは最後の選択肢ですよね。

―― これは個人的な見解ですが、NTTグループに対する規制そのものが、今の時代に合っていないのではないかと思っています。モバイルを軸に固定通信のサービスが束ねられる“総合通信キャリア化”はグローバルでのトレンドであり、それに対するユーザーニーズが高いのはKDDIの「スマートバリュー」で実証されています。NTTグループに対する規制やフォーメーションのあり方は、市場の変化に合わせて変わっていかないと、日本のモバイルIT産業全体の活性化や市場の発展にとってマイナスになる面もあります。

加藤氏 なかなか難しい問題ではありますが、モバイルインターネットによってICTが大きく変わってきているのは事実ですね。その中で、時代と環境の変化、お客様の利益の観点から、見直すべきものは見直していく必要はあると思いますね。

XiとWi-Fiへの投資を急ピッチで行う ドコモのインフラ戦略

―― インフラの部分についてですが、ソフトバンクモバイルが7月25日から900MHz帯を使った「プラチナバンド」のサービスを開始します。これに合わせて積極的なプロモーションが行われていますが、この動きについてどうご覧になっていますか。

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加藤氏 プロモーションのところはお上手だなと思います(苦笑) しかし、私も技術屋だったので言わせていただくと、(今のトレンドは)基地局密度を上げてできるだけセル半径を小さくし、周辺基地局との干渉を減らして周波数の再利用性を高めることが重要です。この基本的な移動通信システムの考え方において、2GHz・900MHz・800MHzなど利用する周波数帯によって生じる大きな差はないと認識しています。それを踏まえますと、ソフトバンクさんはプラチナバンドをうまく宣伝に利用されているなあとは思いますけれど、それに対抗して(ドコモが)何かをやるというのは私のメンタリティの中にはないですね。

―― ドコモは以前から800MHz帯のプラチナバンドを持っていますから、そのあたりはよく分かる、と。

加藤氏 ええ、プラチナバンドは、プラチナというほどの(劇的な効果がある)ものではないのですよ。利用する周波数が何であろうと、基地局を高密度できちんと設置していかなければならないことは変わりませんから。

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