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» 2012年04月27日 08時30分 UPDATE

LTEをもっと快適に――Qualcommの同報配信技術「eMBMS」 2013年に商用サービス開始予定

1つの場所にユーザーが集まるほどネットワークの負荷は増すが、「マルチキャスト」を利用すれば、多数のユーザーに大容量のデータを一斉配信できる。QualcommはLTE網でのマルチキャストサービス「eMBMS」の開発を進めており、2013年の商用化を目指している。

[田中聡,ITmedia]

 4月25日と26日に東京で開催された「2012 Japan-China TDD Forum / GTI Ad Hoc Seminar」にて、QualcommがLTEネットワーク上のマルチキャストサービス「eMBMS」(evolved Multimedia Broadcast Multicast Service:LTEブロードキャスト)のデモとロードマップを紹介した。eMBMSは、LTEネットワークの周波数を利用して不特定多数のユーザーにデータを同時配信できる技術で、QualcommがEricssonとともに開発を進めてきた。基地局と端末が1対1で通信する「ユニキャスト」よりも効率よくデータを配信でき、ネットワークの負荷を抑えられるのが利点だ。LTEの帯域のうちどの程度をマルチキャストに使用するかはコントロール可能。日本でもKDDIがEV-DO Rev.Aのネットワーク上でマルチキャストシステム「BCMCS」を活用し、「EZチャンネルプラス」「EZニュースEX」などのサービスを提供しているが、eMBMSはこれのLTEバージョンといえる。

photophoto スマートフォンとタブレットでeMBMSで受信した映像を流すデモを実施(写真=左)。複数の映像を同時に再生できる。右側には映像に関連するデータも表示される(写真=右)
photophotophoto eMBMSの概要(写真=左)。eMBMS(LTEブロードキャスト)で配信されるコンテンツ例(写真=中)。コンテンツプロバイダー、通信事業者、端末メーカーを含めたエコシステムを構築できるとしている(写真=右)

 通信キャリアはeMBMSに対応したソフトウェアをコアネットワークと基地局に導入し、端末はeMBMSを利用可能なチップセットを搭載している必要がある。もちろんソフト提供者が配信するコンテンツも必要だ。eMBMSの利用に必要なチップセットはSnapdragonの最新バージョン「Snapdragon S4」の「MSM8960」。MSM8960を搭載した端末はまだ発売されていないので、現在発売中のLTE端末ではeMBMSは利用できない。eMBMSの仕様は3GPPで標準化されているので、その技術をベースにすれば他社のチップセットでもeMBMSは利用できるが、同社によると「eMBMSの2〜3割ほどはQualcommの独自機能のため、他社のチップで利用できるのは7〜8割ほどの機能」に限られるという。

 Qualcommが想定しているeMBMSの利用シーンの1つが、コンサートやスポーツイベントなど、大多数のユーザーが1カ所に集まるような環境で、ユーザーに別角度からの映像を配信するというもの。例えばサッカーのスタジアムの観客に、試合の様子を伝えるマルチアングルの映像をスマートフォンやタブレットに配信するといった活用法がある。映像(この場合はサッカー)に関連する情報もマルチキャストで配信し、試合のデータなどを把握できる。普段使いの活用例としては、夜中に配信された映像を翌朝以降に視聴する、OSアップデート用のデータを夜中に配信してアップデートを実施する、といったことが説明された。OSのメジャーアップデート用のファイルは、該当ユーザーへ“順次”配信される場合が多いが、マルチキャストを活用すれば短時間で全ユーザーに配信できるだろう。

photophoto ライブイベントで映像を同時配信する例(写真=左)。オフピークとなる夜中に大容量コンテンツを配信するといった利用も想定される(写真=右)
photophoto サッカーのスタジアムにて、10MHz幅のLTEネットワークのうち40%をeMBMSに使ってビデオ配信する例
photophoto 街中のデジタルサイネージへの活用も期待される(写真=左)。ユニキャスト使用時のネットワークへの負荷は134%だが、マルチキャスト使用時は負荷を20%に抑えられている。「ユーザーが何人増えても(マルチキャストの)%は変わらない」(Qualcomm担当者)

 日本ではドコモの「Xi」とイー・モバイルの「EMOBILE LTE」ともに、2012年度末までに人口カバー率が70%に達する見込みなので、早急にeMBMSが導入されるイメージは湧きにくいが、例えばLTEエリアから3Gエリアに移動した際に「通信事業者がユニキャストにハンドオーバーさせることは可能」(Qualcomm担当者)とのこと。また、eMBMSは「FD-LTE」と「TD-LTE」の両方に対応しているのも特徴の1つ。ソフトバンクモバイルが提供している「AXGP」を活用した「SoftBank 4G」はTD-LTEと互換性があるため、AXGP上でもeMBMSの提供は可能だという。FD-LTEを利用しているドコモについては、4月1日に開始した携帯向けマルチメディアサービス「モバキャス」にて、(マルチキャストとは異なるが)放送波を使ったコンテンツの一斉配信が可能なので、あえて類似するeMBMSを導入する可能性は低そうだ。

 Qualcommは2013年にeMBMSの商用サービス開始を目指しており、TD-LTE向けについては2013年前半に開始する予定。サービスを導入する地域や事業者については「現在はコメントできない」(Qualcomm担当者)とのこと。次の発表を待ちたい。

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