Huaweiが、SIMロックフリーのスマートフォンやタブレットを6月から日本市場へ導入する。同社はこれまで日本では通信キャリアに端末を供給してきたが、新たな市場を開拓すべく、グローバルで展開している製品を日本に投入する。まずは6月下旬に「Ascend G6」を発売する予定だ。その後、秋にハイエンドなスマートフォン「Ascend P7」、8月以降にタブレット3機種「MediaPad X1 7.0」「MediaPad M1 8.0」「MediaPad 7 Youth2」とウェアラブル端末「TalkBand B1」の発売も予定している。
希望小売価格はAscend G6が2万9800円、Ascend P7が4万9800円、MediaPad X1 7.0が3万9800円、MediaPad M1 8.0が2万9800円(Wi-Fi版が2万6800円)、MediaPad 7 Youth2が1万5800円、TalkBand B1が1万3800円を予定している(いずれも税別)。
ファーウェイ・ジャパンは6月18日に、日本のメディアを対象としたラウンドテーブルを開催し、SIMロックフリー端末導入の狙いを説明した。
2013年度におけるHuaweiのスマートフォンの出荷台数は5200万台に上り、世界3位を記録した。2014年度の第1位四半期にも1400万台を出荷するなど、好調を維持している。データ通信端末は2013年度に4450万台を出荷し、市場シェアは6年連続で世界1位となった。
ファーウェイ・ジャパン 端末統括本部 新規市場開発部 担当部長の石田克樹氏によると、Huaweiブランドは転換期を迎えているという。自社ブランド製品の割合は2012年の80%から2013年は95%にまで上がり、スマートフォンユーザーの比率も増えている。販売チャネルについても、通信キャリアを通さない販売やオンラインでの販売における割合が、2012年の30%から13年は50%に増加している。こうした取り組みが功を奏して、世界でのブランド認知が2012年の25%から13年は52%に倍増した。
Huaweiは2005年から日本市場に参入し、イー・モバイルのモバイルWi-Fiルーター「Pocket WiFi」や、ソフトバンクのデジタルフォトフレームなどが好評を博した。ドコモから発売された「キッズケータイ HW-02C」は、販売台数が100万台を超えるなどヒットした。2013年には、LTE Cagtegory4に対応したスマートフォンやモバイルWi-Fiルーターも発売したほか、ドコモ向けに「dtab」も供給してタブレット事業の拡大にも成功した。
このように通信キャリアとのビジネスを着実に進めてきたHuaweiだが、日本の通信キャリアは端末数を絞る方向にかじを切っており、2014年には日本の通信キャリアからHuawei製のスマートフォンはまだ登場していない。一方で、MVNOによる格安SIMの市場が2013年ごろから大きく盛り上がってきているのはご存じのとおり。2013年にはiPhone 5s/5cのSIMロックフリーモデルが発売されたほか、freetelやCoviaといった新規参入メーカーの格安SIMロックフリースマホも増えた。
こうした日本市場の動向に着目したHuaweiは、多様化するニーズにいち早く対応するために、SIMロックフリー端末の導入を決めた。もちろん、キャリアビジネスをないがしろにするわけではなく、今後は通信キャリア向け製品とSIMロックフリー製品の2軸で端末事業を展開していく。
端末統括本部 マーケティング統括部 シニアマーケティングマネージャーの堀田峰布子氏は「キャリアビジネスでは我々の名前が前に出ることはなかなかなかったので、今回のビジネスは、Huaweiのブランド認知度を上げていけるチャンスだと思っている」と期待を寄せる。通信キャリアからの反応も気になるが、「Huaweiはキャリアビジネス、特にスマートフォンは伸びてこなかったこともあり、これ(SIMロックフリー製品)でHuaweiの認知度が上がって、キャリアビジネスの端末も売れるといいね、という温かい目で見守っていただいている」とのことで、キャリアとの関係に影響はないようだ。
石田氏は、SIMフリー市場におけるHuaweiの強みは「グローバルでの競争力」と「日本での経験」にあると話す。グローバルではハイエンドからエントリーまで幅広い製品をラインアップしている。日本では7年間にわたって通信キャリアとのビジネスを続けてきた実績があり、品質の高い製品開発に自信を持つ。通信キャリア向け端末に対しては製品レンジと価格、新規参入メーカーに対しては製品レンジと品質に強みがあると石田氏は話す。最近増えてきている格安SIMロックフリースマホは3Gモデルが多いが、HuaweiはAscend G6をはじめ、LTEモデルが充実しているのも強みといえる。
今後、SamsungやLGなどの海外メーカーが日本でSIMロックフリー製品を投入してきても、価格がHuaweiの強みになるとのこと。石田氏は「日本メーカーがSIMロックフリー市場に参入するとは想定しにくいが」としつつも、そうなったとしても、製品レンジと価格に優位性があるとみる。
販売チャネルは、現時点ではビックカメラグループやエディオンなどの量販店が主なものだが、2014年内にHuaweiのオンライショップを開設する予定。さらに、2015年以降はリアル店舗(Huaweiショップ)の開設や、量販店の中などにあるショップ in ショップの開設も視野に入れている。
HuaweiのSIMロックフリー端末の主なターゲットは10〜20代の若年層だという。もちろんほかの世代を除外しているわけではないが、石田氏によると、高齢層の人ほど中国に対する嫌悪感があり、中国企業というだけで敬遠されることもあるそうだ。10〜20代はブランドにこだわらない傾向にあるので、Huaweiとしてもアプローチしやすいわけだ。
今回発表したSIMロックフリー端末は、日本語化や日本語入力ソフトのプリセットといった部分を除くと、グローバルモデルと仕様は変わらない。スマホとタブレットの5機種とも防水やおサイフケータイなどには対応していないが、こうした日本でなじみの深い機能を載せることは検討しなかったのだろうか。
堀田氏は「グローバルモデルをいち早く投入すること」と「価格の安さ」を優先したと説明する。「スマートフォンの出荷数が世界3位というボリュームメリットを生かして、コストパフォーマンスの高い端末を提供できるのがHuaweiの強み。日本仕様を積むことは可能だけど、それによって価格やサイズが上がり、ローンチの時期がずれてしまうことがある。例えば日本仕様を積んで1万円上がったらどうなるか。ハイエンドな製品が求められている日本のキャリアビジネスとは、違う距離感で攻めていきたい」(堀田氏)
Ascend G6やAscend P7は、グローバルでの発表から日本発売まで3カ月ほどかかった(かかる予定だ)が、2014年後半や15年以降のモデルについては世界と日本で同時投入することも視野に入れているという。「日本で製品発表するようなことも考えていきたい」(石田氏)。OSのアップデートもグローバルモデルと同時期になる予定で、これもキャリアが販売するモデルにはないメリットといえる。
2014年には、SIMロックフリーのスマートフォンを5機種出す計画だという(残り3機種が、これから発表されることになる)。6.1インチのファブレット「Ascend Mate」シリーズについても、「展開する可能性はある」(石田氏)とのこと。エレコムなどのサードパーティによるアクセサリーの展開も予定している。
端末のサポートについては、Huaweiのカスタマーサポートセンターを設け、ユーザーはコールセンターに電話をかけて、修理をするかどうかを相談する形になる。キャリアが提供している修理や補償などのサービスは、現時点では予定していない。
キャリアが販売するモデルは、キャリアショップに駆け込めば、端末から料金、サービスまで丁寧に説明してくれ、サポート体制も手厚い。SIMロックフリー端末を購入する際は、ユーザー側に一定の知識が求められるのでハードルが上がるが、キャリアモデルでは7〜8万円はする端末を2〜4万円台で購入できるのは大きな魅力。「余計な機能やアプリは要らない」という人にも、こうしたSIMロックフリー端末は歓迎されるだろう。Huaweiの端末がどこまで受け入れられるか、そして日本でどこまでブランド認知が向上するか、注目したい。
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