―― 続いて、格安スマホについても感想を聞かせてください。ZenFone 5とAscend Mate7を選んでいる方もいて、キャリアのスマホをだいぶ浸食してきた印象がありますが。
島氏 端末とSIMカードが別というのは、一般ユーザーには若干ハードルが高いですね。
佐野氏 ターゲットがシニアなのに、Androidそのままでいいのかと。イオンは新しい端末で工夫するようになってきましたが、まだ不十分ですよね。とにかくスマホは素晴らしいという売り方しかしていないので、問題があると思います。
―― 日本通信さんのサポートは大変だったそうですね。
佐野氏 そこをやっていかないと、格安というソリューション自体が崩壊しちゃいます。リテラシーが低い人向けの対応で勝ち抜けないと、2015年以降、MVNOは厳しいと思います。
西田氏 海外で格安スマホを買っている人はシニアでもリテラシーが低い人でもなくて、単にお金をかけたくない人だったり、逆にリテラシーが高い人だったりするわけです。なのに、日本では安いものはリテラシーが低い人が買うものとなっているのがおかしいんですよ。イオンが売っても別に構わないんだけど、そういう人向けのきちんとしたサポートやソフトの作り込みが当然あるべきだし、そうじゃないものを持ってきて安いから手が出しやすいでしょ、という売り方は間違っている。
太田氏 その点、フリービットのやり方は正しい。格安スマホとひとくくりにされていますけど、それを選んでいる人はフィーチャーフォンを使い続けている人たちで、スマホに変えない大きな理由は価格です。結果として、リテラリーが低く高額なスマホが嫌で変えたくない人たちがイオンに吸い取られている感じがしています。でも、それはキャリアの努力が足りないせいだと思うんです。
石野氏 本当にそうですね。
石川氏 過去を振り返った話はあまりしたくないんですけど、昔のPHSに似ています。PHSが出たとき、安いケータイ的な売り方をして、ユーザーは飛びついたけれど、ネットワーク品質が悪くてケータイに戻ったということがありました。MVNOは、安さでユーザーを集めている今はいいかもしれないけれど、日本人はちゃんとしたサポートを求めるので、キャリア並みのレベルを求めるようになると、MVNOはしんどくなってくる。そこをちゃんと対応できるかどうかで、今後が変わってくると思います。
今、メディアは格安スマホを一生懸命持ち上げていますけど、ちょっとしたことで、やれサポートが悪いだの、難民が出てきましただのという話を一般紙は平気でします。そうなると業界がしぼんでしまう。正念場だと思います。
石野氏 フィーチャーフォンを使っているユーザーを刈り取るためのMVNO、格安スマホみたいな流れは、少し違和感があるんですよね。サポートに対して金を払わない、スマホは使いたいけど金を払いたくないという、ただのわがままなユーザーだとしたら問題です。
西田氏 キャリアが料金プランを作るとき、ユーザーが求めているものじゃなくて、全体ARPUを見ていると思うんです。AQUOS CRYSTALにスピーカーを付けたのだってそうだし、パケットプランの考え方もそう。僕はらくらくスマホで、そこそこいい料金プランを出せていると思っているんです。通信容量を落として全体の料金は下げつつ、作り込みもやっている。あれをもうちょっと進めて、ユーザーごとにプロファイルして段階を分けてもいいと思うのに、それはやっていないわけです。MVNOは、そこに顧客がいるからと飛びつくのはいいんだけど、本当においしいビジネスはそこなんだろうか、と少し考えた方が共存できると思います。海外のMVNOって、分かっている人向けなんですよね。
石野氏 完全に突き放していますよね。日本も、一度突き放せばいいのにって思います。
すずまり氏 一番リテラシーの低い人が、一番難しいことをやろうとしていますね。
西田氏 まさに“This is not good for the market.”ですよ(笑)。
太田氏 MVNOをやっている会社が日本ではISPが多くて、ISPはユーザーの自宅に行って回線をセットアップすることをやってきたので、サポートを強化する動きは増えてきていると感じます。それがちゃんと機能すればアリかなと思うんですが、一方で、本当はキャリアショップがたくさんあるわけだから、お年寄りにはそっちの方がいいわけじゃないですか。そこはもうちょっとキャリアにがんばってもらいたい。
西田氏 キャリアショップで競うべきは、解約させない方法じゃなくて、分からない人にどうやって教えるかということですね。確かに、ISPがこれまで光回線を入れるときにやっていたアプローチを携帯回線に、みたいな方法は十分アリですね。
太田氏 ただ、光回線は家に入れて終わりですが、スマホのサポートとなってくると、コスト的に見合わなくなってくるんじゃないかという懸念は持っています。
石野氏 主要キャリアの料金がなぜ高止まっているかというと、そういうサポート込みだからですよ。あのめちゃめちゃ混んでいるキャリアショップで細かい質問をしているユーザーのコストを、質問しない人も負担しているんですよ。西田さんがおっしゃったように、本来はそういう負担を嫌う人がMVNOを利用してコストを抑えるべきなんです。
―― 残念ながら今回、誰からも選ばれていないメーカーがいくつかあります。ハイスペック端末を出す日本メーカーでシャープと双璧をなす富士通についての印象をお聞きしたいのですが。
西田氏 ARROWSが悪いとは思いませんが、積極的に選ぶ理由がないですね……。
石川氏 端末が差別化できなくなって、富士通のハイスペック主義が厳しくなってきているのかなと思います。製品自体は悪くないし、らくらくスマートフォン3のデザインをハイエンド向けで採用してくれたら買う人はいると思いますから、やりようによってはまだまだ行けると思います。シャープも富士通もそうですが、日本メーカーがようやくキャリアにべったりじゃなくなり、MVNO市場にも向いてきたので、話が戻っちゃいますけど、初心者ユーザー、特にこれから格安スマホでスマホデビューする人にとっては、日本メーカーの端末を買うという流れになってくると面白いかなと思います。
―― シャープは先日、楽天モバイル向けに端末を提供していましたし、MVNO向けにシフトしている部分もありますね。
佐野氏 イオンと富士通は相性がいいと思いますね。
太田氏 同感です。
佐野氏 イオン主導ではあるけれど、ターゲットにぴったりで、ああいう取り組みでこそ生きるものだと思います。
石川氏 サポート問題も、メーカーの富士通だったらできるし。
西田氏 僕らがここで富士通の端末を挙げていないのは、キャラクターが立っていないから。でも、MVNOの中に入るなら、それはとてもいい。
石野氏 富士通自体がキャラクターになる。
西田氏 イオンだったら、しっかりした台数を買ってくれるでしょうしね。そうしないんだったら、京セラのTORQUEみたいに、欲しい人が絶対に買う端末を作らないと売りようがないですね。
すずまり氏 私自身は、富士通の端末は印象に残らなかったですね。富士通がダメというよりは、ほかが半歩、キャラが立っていた。どうしてもそっちを選ぶと、富士通の端末は漏れてしまいます。
島氏 Xperiaと並べられると、あの値段では買えないですね。
太田氏 キャラ立ちでいうと、2013年の端末ですが、本当はNexus 5がいいと思っていたんです。価格、コストパフォーマンス、完成度、どれもいいと思います。
石野氏 Nexus 5はAndroid 5.0(Lollipop)にアップデートすれば、もう1年は戦えそうな雰囲気ですね。
―― Nexus 6はなぜ選ばれないのでしょうか。
西田氏 バランスが悪いですね。
―― どのへんが気になりますか?
西田氏 ディスプレイと性能の比率が悪いですね。重さとサイズのバランスもよくない。
石川氏 価格のバランスもよくない。
西田氏 そう! Nexus 5がLollipopになったら、超ヌルサクなわけですよ。この状態なのに、なぜ(Nexus 6が必要か)、というのがあって。
石野氏 Googleとしても、もう赤字覚悟で広げる意味が、ほぼないでしょうね。
太田氏 Nexusシリーズの意味合いが完全に変わりましたね。
石野氏 そうですね。今回は本当にリードデバイスというか、最高のスペックで何かできるか、というところに特化しています。仕方がないとは思いますが、とはいえ、なんかなあ……。値段が上がったのが痛いのと、なんだろう、いろいろなんか、うーんという感じがするんですよね。作りが甘そうな気もするし。
―― Nexusの存在感が下がっていると。
石野氏 でも、いいんじゃないでしょうか。それがまっとうな姿ですよ。Googleが赤字覚悟で売りさばいていてメーカーはもうからないと聞きますし、結局Googleが得するだけ。スマートフォンの市場を壊すし、最終的にはAndroid OSそのものの不信感にもつながる。MicrosoftのSurfaceもそうですが、プラットフォーマーがハードウェアを出すことは難しい。
西田氏 ほかのメーカーをつぶしてしまいますね。いろんなカスタマイズがあって、メーカーによって良さが違うところがAndroidのいいところなのに、素のAndroidが一番いいと言い始めると、なんのためのフレームワークだ、という話になります。
石野氏 Nexusはフェイドアウトしていかざるをえないか、逆にNexus 6のように、現時点での突き抜けたスペックにして、これでAndroidを動かすとこうなりますよ、という見本みたいにしちゃうしかないのかなと思います。
後編では、神尾氏、本田氏、山根氏のコメントと、各審査員の配点に基づき、10ベストの中から1〜10位を発表します。お楽しみに!
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