インタビュー
» 2015年01月20日 10時00分 UPDATE

MVNOに聞く:ドコモ系MVNOへの“流出“を防ぎたい――KVE菱岡社長に聞く、「UQ mobile」誕生の背景と戦略 (1/2)

モバイル通信サービスを提供しているMVNOのほとんどが、ドコモから回線を借りている。そんな中、KDDIが子会社の「KDDIバリューイネイブラー」を設立し、MVNOとして「UQ mobile」の提供を開始した。今回はこのUQ mobileの戦略を聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 MVNOへ回線を貸し出すキャリア(MNO)は、ドコモが寡占状態だ。接続料の差や端末の状況など理由はさまざまだが、大手3社のシェア以上に大きな偏りがある。こうした状況の中、2014年はケイ・オプティコムがKDDI回線を借りてMVNO事業に参入した。ほかのMVNOと根本的にネットワークが異なることを、差別化の軸にしたというわけだ。

 とはいえ、それ以上にドコモのネットワークを借りてMVNOに参入する事業者は多く、差は開く一方だ。これに対して、KDDIは2014年8月にKDDIバリューイネイブラー(以下、KVE)を設立。自らの子会社が親会社からネットワークを借り、MVNO事業に打って出た。見方によっては、auのサブブランドとも捉えることができるだろう。

 サービスの名称は「UQ mobile」。WiMAX、WiMAX 2+を展開するUQコミュニケーションズと似ているが、あくまで兄弟会社という位置づけだ。UQ mobileは、自らが回線を提供していく一方で、家電量販店などのパートナーが独自のブランドを冠したSIMカードを提供すること目指している。ビジネスモデルとしては、IIJがビックカメラと提携し、「BIC SIM」を提供しているのに近い。

 この生まれたばかりのMVNOであるKVEの代表取締役社長 菱岡弘氏に、設立経緯や戦略、今後の展開を聞いた。

photo UQ mobile

ドコモ系MVNOに流出しないよう選択肢を示したい

photo KDDIバリューイネイブラー 代表取締役社長 菱岡弘氏

―― 最初に、KVEを立ち上げた理由を改めてお聞かせください。

菱岡氏 MVNO事業が2014年から高い注目を集めるようになってきました。その中で、接続料の問題があるので致し方ないところはありますが、ネットワークがドコモさんに偏っているのは、私ども(KDDI)の大きな課題です。auのお客様を含めて市場の競争環境を考えた場合、選択肢を出すことが、KDDIグループとしてNTTグループに対抗する軸になります。MVNO事業者を立ち上げるべきというのが、1つの大きな意見としてありました。

 また、au事業をやっていく中で、いろいろな企業から「こういうことができないか」「ああいうことができないか」というご提案をいただくケースも多かったんですね。我々がパートナーとしっかり取り組むことには、大きなニーズがあります。選択肢を提供することで、全体として利用者の拡大が進むということです。

 UQ mobileという名称については、社内にいろいろな意見がありました。UQコミュニケーションズに近いので、関連性があると見られるという声も当然出ました。ただ、UQコミュニケーションズという会社も、卸で量販店を中心に展開し、MVNO事業を全面的に支援しています。オープンな形で対応しているんですね。そういう面でいうと、「UQ」という名称はそれなりに親和性があります。

 MVNOが最初に響く年齢層は、30代や40代で、(UQコミュニケーションズの認知度が高いため)UQ mobileにした方が認知も広がり、印象を出しやすい。じゃあ、営業提携をどうするのかという詮索もされますが、今のところは、ロゴを使わせていただく契約を取り交わしただけです。後はまだ、何も決めていません。

―― KDDI社内には、MVNOのネットワークがドコモ一辺倒になることに対して、相当な危機感があったということでしょうか。

菱岡氏 社内にはもちろんありました。auユーザーの中にも、MVNOに関心を持たれて、そういうプランを使いたいという方は間違いなくいらっしゃいます。そういう方が、ドコモ系のMVNOに行ってしまうと、母体から見ると「流出」したことになります。UQ mobileがあれば、選択肢をお示しすることもできますし、他社から移る方もいるので取り込みもできます。KDDIグループとして考えると、そういう部分でマイナス要素はありません。

―― auからユーザーが移ると、トータルで見てARPU(1契約あたりの通信料収入)の低下にもつながると思いますが。

菱岡氏 どこまで流れるか次第です。市場全体がどこまで行くのか、まだ見えていない部分があります。お客様は多種多様です。フルサービスで満足して使い方も当然多いですから、安いからといって、ガサっと動くとは考えていません。

 MVNOのユーザーが、それだけでは満足できないとなれば、親であるauにシフトアップしていただく。そうすれば、そのお客様のARPUは上がります。ですから、下がる一方だとは考えていませんし、トータルでみれば、ダメージを与えるわけではないと思います。

―― パートナーを重視する戦略を打ち出していましたが、その点を詳しく教えてください。

菱岡氏 UQ mobileのSIMカードという形でダイレクトにどんどん出していくというより、どちらかといえば裏方に徹して、結果的にうちの回線を利用するような形を考えています。相手先ブランドでどんどん取っていただくパートナー支援を積極的に展開して、メインはそちらに持っていきたいと考えています。まだまだ開拓しなければならない販路はたくさんありますが、新しいお客様を増やしていけると考えています。

量販店での取り扱いは優先的に進めてきた

―― パートナーという点では、サービス開始当初から取り扱う家電量販店が非常に多かったのが印象的です。どのようにして、あそこまでのパートナーを集めたのでしょうか。

菱岡氏 KDDIの子会社ですからね。今まで、量販店さんとはずっとお付き合いしてきました。こういう事業をやるのでぜひというように、お声掛けもしています。「格安SIM」の時流もありますから、反応もありました。量販店で取り扱っていただく部分については、ローンチまでに優先的に進めてきました。うまくスタートしていただけたのは、過去のお付き合いの深さがあったからこそです。

―― 回線の店頭での即時開通も、当初から導入されていたのは意外でした。

菱岡氏 MVNO事業者が一番悩んでいるのは、お客様が申し込んでから数日間使えないところですね。ここは致命的で、すそ野がなかなか拡大しない理由の1つです。今、我々が「レオン」と呼んでいる(契約者の情報を管理する)端末があり、それを設置している数はMVNO事業者の中では一番多いと思います。それがないと、やはりお客様に響きにくいですからね。これはうちの強みでもあるので、どんどんやっていかなければいけないと思っています。

―― ただ、当初はどの店舗に行けば置いてあるのかが分かりづらかったです。

菱岡氏 そこは反省点で、やはり告知していないと分かりづらい。そこは改定をかけました(同社Webサイトに販売店を掲載)。

photo

9割ぐらいが月2Gバイトの「データ高速プラン」に加入

―― ネットワークを貸し出す条件は、他社と同じでしょうか。

菱岡氏 私どもは、そう聞いています。

―― 相互接続という理解でよろしいでしょうか。

菱岡氏 はい、そうです。

―― 条件が同じな中で、他社、特にau系MVNOとしてもう1社あるmineoとは、どう差別化していくおつもりですか。

菱岡氏 mineoさんは現在、どちらかというとネット販売が中心です。我々はオンライン販売も当然やっていますが、先ほど申し上げたように、リアル店舗の開拓を優先的に進めていますし、UQ mobileをご利用いただくパートナーが販売するモデルケースを作っていきたいと考えています。この辺は、mineoと違う部分ではないでしょうか。料金プランについては各社違いが出ていますが、マーケットの中での位置づけや劣後関係も見ながら柔軟に対応していくつもりです。

―― 実際、サービスを始めてみて、手ごたえはいかがでしょう。

菱岡氏 2つの料金、音声あり、なしを含めると4種類で、分かりやすいことは分かりやすいのですが、まだ発表してそれを皆さんに記事にしていただき、拡散し始めたところです。まったく販促もやっていない状況で、量販店さんもギリギリまで交渉した結果、急いでやっていただくことになりました。店頭も慣れていないですし、現場を見ると徹底できていないなど、やってみたらいろいろなことが分かりました。反応としては悪くはありませが、まだまだ改善して伸びる余地はあると思っています。

photo UQ mobileのデータプラン

―― 現状だと、料金プランのバリエーションが少ないと思います。また、まだ始まったばかりですが、どちらのプランへの加入が多いのでしょうか。

菱岡氏 それも考えていかなければいけません。どちらが多いかという点については、圧倒的に月2Gバイトの「データ高速プラン」で、9割ぐらいがそちらです。500kbpsや300kbpsという(データ無制限プランの)速度をご存じの方はご存じなのですが、下り最大150Mbpsと比べるとものすごい差があって使えないというイメージもあります。本当はそこそこ動くはずなのですが……。やはり、速度の見せ方は難しいですね。auのときも、速度をどう訴えればいいのかは、相当苦労しました。

―― 2Gバイトを使い切ると、追加でデータ量を買うことができません。これについては、改善されるのでしょうか。

菱岡氏 追加料金を払ってデータを足せる仕組みを入れなければいけないのは分かっていたのですが、開発の時期的に難しく、スタート時点はやむなしということで走ってしまいました。これについては、すぐに改善をしたいと思っています。

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