インタビュー
» 2015年05月26日 06時00分 UPDATE

ゲオがSIMの販売を始めて変わったこととは?――「ゲオモバイル」の狙いを聞く

リサイクル事業と携帯電話代理店事業のノウハウを掛け合わせて生まれた「ゲオモバイル」。NTTコムとの協業でOCN モバイル ONEのSIMカードを扱い始めたことで、端末とSIMカードの両方を販売可能になった。今回は、そんなゲオモバイルの戦略を聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 レンタルビデオ、レンタルDVDで事業を拡大させてきたゲオが、次の一手として取り組んでいるのがリサイクル事業だ。2008年にはリサイクル事業を行うフォー・ユーを子会社化。2010年にセカンドストリートに社名変更し、現在はゲオが吸収する形で運営を行っている。

 また、同社は携帯電話の代理店事業も行っている。こちらの歴史は長く、始まりは2002年に北海道のそうご電器を子会社化したころにさかのぼる。運営形態はいわゆる併売店。各キャリアの端末をまとめて取り扱い、端末の販売や通信回線の契約などを行っている。

 リサイクル事業と携帯電話代理店事業――同社が拡大を目指す「ゲオモバイル」は、この2つのノウハウを掛け合わせて生まれた。もともとはスマートフォンをはじめとする携帯電話の中古販売を専業で行う店舗という位置づけだったが、新たに新製品も導入した。また、同時にNTTコミュニケーションズと提携。「OCN モバイル ONE」のSIMカードの販売を強化し、MNPの当日対応カウンターも設置していく。これによってゲオモバイルは中古端末、新品端末からSIMカードまでを一気通貫で取り扱うことが可能になった。

 店舗数は全国に約50あり、今後も拡大する予定だ。また、ゲオモバイルと並行する形で、全国にあるゲオでも中古端末やSIMカードの販売は行っている。家電量販店などとタッグを組み、新品の端末とセットでSIMカードを販売するMVNOも増えているが、中古端末との組み合わせは異例のこと。すでに行っている割賦販売と合わせて、中古端末にも保障サービスを提供する予定だ。こうした点では、ほかの中古店との差別化も図っているといえるだろう。

photo 「OCN モバイル ONE」と同じスペックのSIMカードを販売する

 そんなゲオの狙いを、同社のモバイル運営部 モバイル運営課 マネージャー 藤巻亮氏が語った。

ブランドと品質を重視する人に支持されている

photo ゲオの藤巻亮氏

―― 最初に、NTTコミュニケーションズと提携するに至った経緯を教えてください。

藤巻氏 SIMカードの販売については、ちょうど1年ぐらい前に始めています。我々のところに(端末を)買いに来てくださる方は、SIMカードまで期待されるからです。中でも、ブランドはものすごく重視されています。安心感のようなものですね。あとは品質の部分で、通話であったり、充実したオプションであったりといった内容も見られます。すべてを検討して、お客様の反応を見させていただき、NTTコミュニケーションズさんに決めました。

―― 中古端末の販売をする中で、SIMカードのニーズが出てきたということでしょうか。

藤巻氏 端末の販売は2009年からちょっとずつ始めています。いよいよ全国展開するとなったとき、ご来店いただくお客様にどれだけ知っていただけるかは重要です。その意味では、逆に中古ケータイの認知にとっても(SIMカードの販売を始めたことが)大きかったです。SIMカードの販売はまず秋葉原のお店で始めてみましたが、約4割のお客様が中古の端末を買っていました。ここで比較的高めの実績が出たというのも(提携した背景に)ありますね。

―― ワンストップで買えるのがよかった、と。

藤巻氏 そうですね。そこは実感しました。

―― MNP対応の店舗を拡大する予定としていますが、やはり最初に導入したときの効果が大きかったのでしょうか。

藤巻氏 秋葉原で行ったテストマーケティングでは、MNPのお客様が7割でした。もともとがソフトバンクやauのユーザーで、移ろうとしても手元に(MVNOでも使えるドコモの)端末がない方がほとんどです。

―― 新品も扱うようになりました。やはり中古だけだと、取りこぼしがあるということでしょうか。

藤巻氏 実は数店舗で、こちらもテストマーケティングを行っていて、SIMフリーの端末に対する反応を見させていただきました。価格の部分もそうですが、どうしても中古端末となると抵抗のあるお客様もいます。どのくらいの価格なら決めていただけるのかも考えましたが、9800円(freetelの「priori2」)と2万円(Huaweiの「Ascend G620S」)ちょっと(2万1800円)(いずれも税別)で、一番のボリュームゾーンを取りたいと思います。

photo 新品のスマートフォンとして、「priori2」と「Ascend G620S」も取り扱う

―― ミドルレンジからローエンドといったところですが、もう少し価格の高いミッドハイからハイエンドはいかがですか。

藤巻氏 ハイエンドは中古でも、新しい目の商品が多くありますからね。

―― なるほど。中古とすみ分けてあのラインアップになったということですね。

藤巻氏 逆に1万円台、2万円台で済まそうとすると、中古でも2つ、3つ型落ちになってしまいます。そうなると、アプリの性能に端末が追いついてこないこともあります。

―― 今後のラインアップについては、どのようにしていくお考えでしょうか。

藤巻氏 50店舗への導入も、一種のテストだと思っています。お客様からは、国内メーカー製のものを入れてほしい、タブレットはないのかという声もいただいています。そういう部分には、敏感にアンテナを張り巡らせて展開していきたいですね。

―― 価格帯も広がる可能性はあるということですね。

藤巻氏 はい。お店によっては、もうちょっと上のプライスラインもそろえていきたいと考えています。選べることは、買い物の楽しみの1つですから。

1台目としてハイスペックスマホを購入する人が増えた

―― SIMカードを取り扱い始めてから、何か中古携帯に変化はあったのでしょうか。

藤巻氏 販売額が上がりました。

―― と、いうと?

藤巻氏 ハイスペックを買い求めるお客様が増えたからです。つまり、1台目として購入される方が増えたということです。

―― 逆に、それまではやや安めのものが強かったということでしょうか。

藤巻氏 はい。端末が壊れてしまって、買い替えたいけどまだ分割が残っているという方が、つなぎとして買われる。これがメインでした。ほかには、欲しいガラケーが出なくなってしまい、中古でいいからいっぱいある中から選びたいというニーズも高かったですね。

―― ただ、キャリアの中古端末とMVNOのSIMカードという組み合わせだと、テザリングが使えないなど、一部制限もあります。この点は、どのようにしているのでしょうか。

藤巻氏 その辺は、もちろんお話していますが、「使わないので大丈夫」となることがほとんどです。確かに、テザリングに加えて、キャリアメールが使えないのも大きな障壁です。ただ、MVNOにMNPする方はもともとキャリアメールをあきらめている方が多く、テザリングはそこまで利用者数が多くないというのが実態です。

―― 店舗に来るユーザーの傾向も変わったということもありますか。

藤巻氏 以前は、お客様に質問されることがあまりありませんでした。聞かれることといえば、「あの端末の在庫はあるのか」といった、専門的なことが中心でした。ところが、最近では「このSIMとはなんだ?」という質問や、「これを使うとどんないいことがあるんだ?」という質問をされるようになりました。つまり、通常のケータイを買うお客様と同じような質問をされる機会が増えているということです。テストを3カ月ぐらいやっていましたが、1カ月ごとに問い合わせ件数が分かりやすく増えてきました。

―― お話をうかがっていると、かなり緻密にテストを重ねてここまで拡大したという印象を受けます。

藤巻氏 いやいや、意外と雑ですよ(笑)。私どもとしては、お客様のいろいろな声を聞いてみたかったというのがあります。

―― そんな中で、ゲオモバイルならではの強みはどこで出したいとお考えでしょうか。

藤巻氏 一番強化したいのが、「人」の部分です。お客様が買いに来たとき、気軽に問い合わせられないと広がっていきません。そこは強化したいと考えています。

―― MNOの代理店もやられていますが、どのようにすみ分けしていくのでしょうか。

藤巻氏 今も50店舗中43店舗は、併売店としてやっています。キャリアの携帯電話をご購入されるお客様に対して、1つの選択肢としてMVNOのSIMカードがあるイメージです。もともと併売店のメリットは、比較ができるところですからね。そういう意味でも、店員の教育が必要になり、今はそこに力を入れています。料金のコンサルまでしっかりできれば、より信頼していただけますし、ご購入にもつながります。

「SIMフリー端末を買うならゲオ」というイメージを持ってもらいたい

―― ところで、現状では、ドコモ以外の端末も中古で販売しています。OCNモバイルONEとセットで使えない端末を取り扱っているのはなぜでしょうか。

藤巻氏 au、ソフトバンクの端末については、単体でのニーズがまだまだあるからです。そこについては、バランスを考えていきたいですね。

―― 中古全体の傾向をうかがいたいのですが、どのような端末が売れ筋になるのでしょうか。例えば、iOS、Androidの比率も気になるところです。

藤巻氏 中古でもiPhoneの販売比率は非常に高いですね。ただ、単体で考えるとiPhoneですが、OS別の比率だとAndroidの方が高くなります。また、ユーザー層も異なり、どちらかというとAndroidの方が買い替えサイクルが短くなっています。アプリの性能に端末が追いついてこないなど、頻繁に買い替えるお客様が多く、単価の低いところで高回転している印象です。逆にiPhoneは、もともと単価が高いので1回買うとしばらく使う方が多いようです。

―― ちなみに、店舗では赤ロム(通信料の未払いなどが原因で、セルラーの通信機能が止められてしまった端末のこと)も販売されていますが、あれは一体……。

藤巻氏 あれは元が取れていませんが、テスト的にやっているものです。赤ロムですが、その分説明はガッチリしています。どういう方が買われるかというと、たとえばガラケーを持っている方が家でWi-Fiを使ってゲームだけ、ネットだけというように使うことが多いようです。お子さんに「これでゲームしなさい」と与える方もいるようです。もともとレンタルショップやゲームショップをやっていたので、そういうユーザーが多いということもありPOPも作って置いています。また、ご年配でもパソコンを持っていて、Wi-Fi環境が家にあるという方もいます。そういう方が、(スマートフォンを)使えるかどうかを試すために買うというニーズもあります。

―― ちょうど5月1日からSIMロックの解除が義務化されました。この影響をどのように見えているのかを教えてください。

藤巻氏 現状では、即SIMフリーになるという形ではありません。6カ月経過したあと、どういう形で(ユーザーが中古販売店に)お売りになられるのかには関心があります。すぐにではありませんが、端末の価格が高騰したり、キャリアの縛りの期間が長くなったりといったことも予想できます。また、今だと「月々サポート」のような形で、端末に対して利用料金が割り引かれていますが、こういったものがなくなる可能性もあります。現に今は、ワイモバイルでもサポートはありませんからね。

 そうなったとき、中古やSIMフリーの端末に注目が集まるはずです。その時までにしっかり準備さえ整えておけば、「SIMフリー端末を買うならゲオ」というイメージを持っていただくことができる。そう考えています。

取材を終えて:新品のラインアップ拡大にも期待

 MVNOのSIMカードはネット販売が中心でリアル店舗が少なかった。最近では家電量販店などの提携が進み、自前でショップを運営する事業者も出てきたが、まだ流通をネットに依存している部分は大きい。特にOCN モバイル ONEは、トップシェアのMVNOながらリアル店舗の販路が弱かった。2位のIIJはビックカメラに設置したカウンターで大きく数を伸ばしており、ここに対してNTTコミュニケーションズが対抗してきたと見ることもできる。

 ゲオにとっても、自社の強みであった中古端末がさらに売りやすくなる。インタビューで藤巻氏が述べていたとおり、端末と同じ店舗でSIMカードを買いたいというニーズはやはり高い。その場で質問に答えてもらえる安心感もある。一方で、新製品のバリエーションはもう少し多い方が、選びがいがある。これは藤巻氏も述べていたがことだが、数ある選択肢の中か選べるのは買い物の楽しみの1つ。ゲオも今後バリエーションを増やしていくとのことで、期待が持てそうだ。

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