2016年は“次のMVNO”に向けた準備期間――IIJ島上純一氏に聞く、MVNOの未来新春インタビュー(1/3 ページ)

» 2016年01月06日 06時00分 公開
[田中聡ITmedia]

 2015年のモバイルを語るうえで避けて通れないのが、MVNOのサービスがかつてないほど活況を呈したことだ。MNO(大手キャリア)から回線を借りて、低価格の通信サービス、いわゆる「格安SIM」を提供する事業者が増え、格安SIMを利用できるSIMロックフリー端末も続々と登場した。

 2016年以降のMVNOは、どのような道を歩んでいくのだろうか。MVNOの中でも中心的なポジションにいる事業者の1つである、インターネットイニシアティブ(IIJ)は、格安SIMサービス「IIJmio」で業界2位のシェアを持つほか、総務省が主催する研究会にも積極的に参加し、MVNOの振興に関する意見交換も積極的に行っている。今回は「一般コンシューマー」と「MVNO業界」という2つの視点から、同社取締役 CTO ネットワーク本部長 島上純一氏に話を聞いた。

「端末の増加」と「リモートMNP」が2015年の大きなトピック

photo インターネットイニシアティブ 取締役 CTO ネットワーク本部長 島上純一氏

―― 2015年は「格安SIM」が大きな注目を集め、契約数も増加しました。MVNO業界全体を振り返って、どのような感想をお持ちですか。

島上氏 「格安SIM」に絞ると、大きく2つの出来事があったと思います。

 1つは、端末が増えたことです。以前もNexusがあり、2014年からiPhoneもSIMロックフリー版が発売されましたが、2015年はSIMロックフリー端末の数が一気に増えました。加えて、日本メーカーが参入してきたことで、お客様の安心感が増したと思います。「モバイルSuica」も使えるようになって、キャリアさんのスマートフォンとMVNO系スマートフォンの溝が少しずつ埋まっていきました。

photophoto 国内メーカーからもSIMロックフリースマホが続々と登場した。写真の「arrows M02」(左、富士通製)と「AQUOS SH-M02」(右、シャープ製)は、モバイルSuicaも利用できるようになった

 もう1点が、ドコモさんの「サービスオーダー」の仕組みが進化したことです。お客様がMVNOへの乗り換えをためらっていた理由の1つが、MNPをすると利用不可の期間が生じることです。生活の一部になっている携帯電話が、1日、いや半日でも使えないと嫌だというお客様にとって、大きなハードルになっていました。われわれが展開しているBIC SIMカウンターも(即日MNPは可能だが)数10箇所しかありません。

 そんな中、SIMのリモート開通が可能になりました。先にSIMが送られてきて、お客様がMVNOに連絡をすると、そこで切り替えられる仕組みです。ケイ・オプティコムさん(mineo)ではもともとできていましたけど、それがドコモさんのSIMでもできるようになり、かなりハードルを下げたと思います。「MNOでできていること」と「MVNOでできていないこと」が、一歩一歩、着実に縮まっていると感じています。

―― IIJさんもSIMカードとセットで購入できる端末を扱い始めましたが、やはり端末の重要性を認識されたということでしょうか。

島上氏 そうですね。お客様が求めるものを出していくことが、提供者側の責務だと思いますので。もともと、「IIJmio」はガジェット好きな層に対してリーチできていましたが、利用者が増えるつれて層が広がり、「端末も一緒に提供してくれないのか」という声が挙がりました。であれば、われわれから「いいね」と思ったものを、お客様に提供しようということで始めました。

―― MNPに関しては、IIJさんも遠隔で手続きができる「おうちでナンバーポータビリティ」を提供されていますが、これを始めてから、MNPの数はかなり増えてきたのでしょうか。

島上氏 そうですね。あれは起爆剤にはなっています。

photo 任意のタイミングで開通手続きができる「おうちでナンバーポータビリティ」

―― 他社さんも同様のサービス(MNPのリモート開通)を始めたので、その点では大きな違いは出ていないということでしょうか。

島上氏 そうですね。ドコモさんが、アラジン(顧客管理システム)の拡張機能として提供していますので、われわれに対して出したということではありません。

「IIJmio」は堅調に伸びている

―― 続いて、「IIJmio」全般のお話をうかがわせてください。契約数は堅調に伸びていますが、2015年を振り返って、どのような感想をお持ちでしょうか。

島上氏 おっしゃる通り、堅調に伸びているという表現が正しいと思います。総務省が発表するMVNO全体の統計は、(M2Mなどの)モジュール型や(量販店などでブランドを借りて販売する)再販型も入っているので、(IIJなど)SIM型のMVNOがどれだけ売られているのかは、分かりにくくなっています。ただ、着実にIIJのブランド認知は広がっていると思いますし、契約も伸びています。解約率も非常に低く抑えられていますので、大きな手応えを感じています。

photo IIJmioは好調を維持しており、個人と法人向けサービスを合わせた総回線数は、9月末時点で約93万4000となった

―― 2015年内に、個人と法人を合わせて100万回線という数値を目標にされていますが、これは達成可能と考えてよろしいのでしょうか(※インタビューは2015年12月下旬に実施した)。

島上氏 はい、2015年内で100万回線達成の手応えは感じています。

―― IIJmioの契約数は、2014年よりも2015年の伸び率が高くなっていますが、どこが好調の要因だと考えていますか。

島上氏 認知が広がり、入手しやすくなり、端末が増えたことですね。メディアの方々にもいろいろなところで取り上げていただいていますし、われわれもわずかながら広告を打って、全般的にMVNO認知が広がったと思います。

―― 回線の品質も、よく取り沙汰されていますが、通信品質についてはどう見ていますか。お昼の時間帯はまだ苦戦しているようですが。

島上氏 決して「安かろう悪かろう」にはしたくないと思っています。一方で、競争の中に身を置いている関係上、万人にご満足いただけるような品質にはなっていないのかもしれません。しかし、ある程度許容できるところは維持していきたいと思います。価格面では無理な競争はしないというスタンスで臨んでいます。

―― 9月に発売された「iPhone 6s」「iPhone 6s Plus」の影響は大きかったのでしょうか。

島上氏 そうですね。やはりiPhoneを使っているお客様が多いというのは、手応えとしても感じています。これは推測の域を出ないのですが、ドコモさんの「iPhone 5s」が発売されて2年たちましたが、端末はそのままお使いで、必ずしも6sに飛びついて買っていないのではないかと思います。

―― 2年縛りが終わって、端末はそのまま使い、回線を格安SIMに乗り換えている人もいらっしゃると。

島上氏 そうです。今まで、iPhoneが一番出ているのはソフトバンクさんで、うち(IIJmioの回線)では使えないという方が多かったのですが、ドコモの5sからは使えます。SIMロック解除の義務化だけではなく、(ドコモユーザーが増えたことで)iPhoneは(格安SIMで)使いやすくなっていると思いますね。

―― SIMロック解除が5月以降に始まって、契約数に直結したとは感じていますか?

島上氏 どうつながっているかは、われわれも分かる術がありませんし、5月からSIMロック解除が義務化され、解除できるのは(端末の購入、または前回SIMロックを解除してから)半年後なので、まだ効いている時期ではないと思います。

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