11月1日、KDDIは2017年3月期第2四半期決算会見を開いた。終了後、田中孝司社長の囲みが行われた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年11月5日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
―― ガイドラインを超えるというのは数百円を超えると言うことか。
田中社長 「いろんなのがあって、申し上げられないのですけど、あんまり大きく言うのは何ですが、株主優待券なんかもあって、いろんなものが重なっちゃっているんですね。優待券をフルに使うとマイナスになっちゃうかも知れませんけど。いろんなケースを徹底していかないところに抜かりがあった」
(★ 総務省が株主優待まで端末の割引だからと指導をするのは確かにやりすぎのように思える。ま、株主優待券がネットオークションにも出回っているだけに、株主以外も使える点が盲点だったのかも知れないが)
―― 販売店に徹底するのか。
田中社長 「時期が違うものが出ているじゃないですか。前のやつ、去年の株主優待もそうじゃないですか。いろんなものが重なっていったときに、クーポンに対する理解が甘かった」
(★ これからはクーポンではなく、表向きは何でも使えるポイントで還元という雰囲気になるのかな)
―― すでに配っているわけですから、それダメですよとも言えない。
田中社長 「それをダメだと言って修正していくんですけど。仕方ないですね。1万円のクーポンが出ているじゃないですか、それを5000円に減額するとか、そういった修正を昨日、提出させていただいています」
(★ 実際、1万円のクーポン券を持って行くと強制的に5000円にされてしまうのかな。それでは明らかに店頭で揉めそうな気がするが。やはり、別にポイント5000円分が支給されるのかな)
―― 周知期間を設けたりするんですか。
田中社長 「株主優待ですとまだまだ大変ですけど、いろんな細かいことを詰めなきゃいけないし、急ぎのやつは昨日、出させていただきました」
(★ 急ぎの割にはしっかりとした景品ラインナップに変わっていた)
―― NTTドコモが、見た目648円の低価格端末(MONO)を発表したが、どのように見ているのか。今後、そのような値付けを行っていくのか。
田中社長 「いわゆる1万円なり、ガイドラインの対象外になる、安い端末価格のものになっている。それについてどうしていくかということなんですけど、まだ社内的には検討中というところ。一方、自社モデルの廉価版については、Qua Phoneとかが出ている。どうしていくかはこれから」
(★ Qua Phoneも見た目500円とかになっていくんだろうな)
―― 販売台数の落ち込みは想定通りなのか。
田中社長 「想定通りではないですね。販売が落ちています。1Q、2Q比では、上がっていますけども、昨対比では落ちてしますので、端末が売れなくなったというのは、ありますね」
(★ まぁ、iPhone以外、売れる機種がなくなり、格安スマホへの注目も上がっているから、端末購入は様子見という人も多くなっていそう)
―― 対策というのはあるのか。
田中社長 「魅力的な端末なりサービスを出すしかないですね、というのがいまの認識ですけど」
(★ それができれば苦労はしない)
―― その端末だが、まだ出ていないものもあるようだが。
田中社長 「今度、11月にこれまでのような商品発表ではないかたちで、新たな端末も出しますけど。ちょっとGalaxyがですね、いろんなことがあったので、全体の見直しが入っておりますので、それなりにこぢんまりとした発表になる」
(★ 噂ではかなりこぢんまりになりそうな雰囲気)
―― Galaxy Note7は取り扱う予定はあって、キャンセルになったのか。
田中社長 「そうですね」
(★ まぁ、サムスン電子はauでも出すような思わせぶりな態度だったしねぇ)
―― 改めてiPhone7の売れ行きはどうなのか。
田中社長 「iPhone7は全体としては昨年に比べてプラスには進んでおりますけど、今後どうなるか。予約が今年は多くて、ジェットブラックはまだ予約が残っている。それを入れると昨年対比でプラスなのではないか」
(★ JRの駅や電車内でApple PayとモバイルSuicaの広告をよく見るけど、あれで需要は増えているのだろうか)
―― アメリカでAT&Tによるタイムワーナーの大型買収があったが、日本の通信会社としてどう評価すべきものなのか。
田中社長 「他社のM&Aなので、コメントしようがないが、当社としては今年、5000億円のM&A資金を予算している。その分野は通信よりも上のライフデザイン領域において、M&Aを進めていくつもりでございます。メディアまでというと、うちはケーブルテレビがありますけども。その辺の領域を中心に考えております」
(★ 日本の大手マスコミもそろそろ買収されるところが出てきてもおかしくないとは思うが。とはいえ、買収されそうになったら、拒絶反応も相当なものになりそう)
―― 総務省の有識者会議で、UQモバイルやワイモバイルは「ずるい」という指摘が出ているが、どのように受け止めているか。
田中社長 「基本的にサービスや料金については、平等に扱っています。ご指摘のやつはUQスポットで、個々にメリットのあるやつに関しては、UQにこだわらず、いろいろとできればと思っている。我々の事例で言えば、資本関係のないケーブルテレビさんともお互い販売協力もやっていますので、そういう風に考えていますけど」
(★ なぜ、ワイモバイルやUQモバイルがiPhone 5sを扱えるかというのも気になるところ)
―― 通信契約に対する販売奨励金にもメスが入る可能性があるが、影響はありそうか。
田中社長 「通信サービスに対する販売奨励金は、基本的には自由になっている。しかし、それが端末販売にかなり密着しているとなると、今回、より厳格にガイドラインの適用がされている。そのあたりにおいて、いろいろとご指導があって、より厳しい方向に向かっている。今回のところはまだ議論されているので、なんとも言えないのですけど、そういった印象を持っています」
(★ 通信契約と端末販売は切っても切れないものなので、ここを明確にするのは難しいと思うが。ガイドラインの穴はどうやっても埋まらないと思う)
―― 端末の販売減になって、売り上げが減ってしまうのか。
田中社長 「端末の価格は高くなる方向ですよね。端末が売れない状況になる。販売奨励金の金額も下がる。今日のような340億円の増益要因になる。それを長期ユーザーにお返しするためにau STARを始める。au STARは今期100億ぐらい、来期以降は数百億続いていきますから、中長期的に見たらチャラになる。こういう構造でビジネスは動いています。このあと、さらに売れなくなるのかというのは、ちょっとよくわからない」
(★ ここの発言、ぜひとも有識者会議で議論してもらいたい重要なところ。田中社長は販売奨励金がなくなり増収効果があったが、一方で長期ユーザーのためのポイントサービスなどの減収要因でチャラになるといっている。つまり、端末への割引を辞めたことで端末の価格は上昇。長期ユーザーはもらえるポイントが増えるが、固定化し、競争環境は減っていく。一方、多くのユーザーの通信料金は下がらず、高止まりしたままとなる。つまり、ほとんどのユーザーは「料金が下がった」と実感することはない。総務省の議論は果たして、誰のためだったのか)
―― 総務省だけでなく、公正取引委員会も中古iPhoneの流通に関心を持っているが、改めて、下取りしたiPhoneはどのように流通させているのか。キャリアが海外に流通させてはいないのか。
田中社長 「我々は完全にコントロールしてない。転売しているだけですから。そういう会社がございますから、公取さんがご指摘するようなキャリアが規制をしているという事実はない」
(★ iPhoneの中古流通に関してはNTTドコモとKDDIは知らぬ存ぜぬで押し切れそう。しかし、ブライトスターというグループ会社が下取りをしているソフトバンクは、言い逃れはできないのではないかな)
■取材を終えて
KDDIの決算会見当日、総務省が「キャリアは故意に過剰な端末割引をしていたのではないか」という見方を示したものだから、その言質を取ろうとする記者からの攻撃が田中社長に集中したように思う。こればっかりはタイミングが悪かったとしか言いようがない。
iPhone直前の端末購入割引クーポンは、家に届いた瞬間に「やばいんじゃないの」と思ったくらいだから、キャリアが故意にやっていた可能性がかなり高そう。一方で株主優待券に関しては、明らかに総務省の後出しジャンケンであることは間違いない。もうちょっとキャリアは総務省に反発してもいいのではないか。
今回、総務省が本気で穴を埋めようとしているように思えるが、それが全くユーザーのためになっていないというのが、本当に不憫でならない。
© DWANGO Co., Ltd.