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» 2016年12月16日 10時00分 UPDATE

石川温のスマホ業界新聞:KDDIがビッグローブを800億円で完全子会社化――老舗ISPがまさかのキャリア傘下に。MVNOもいずれ辿る道か

大手インターネット接続事業者(ISP)のビッグローブが、2017年1月末をめどにKDDIの完全子会社となることが決まった。老舗ISPが大手キャリアの傘下に入ることは、10年前には想像できなかったことだが、今後も老舗ISPやMVNOが大手キャリアのグループ入りすることは十分に考えられる。

[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 KDDIは12月8日、ビッグローブの株式を総額800億円で取得し、来年1月末を目途に完全子会社化すると発表した。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年12月10日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


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 ビッグローブには、固定回線を利用したインターネット接続サービスにおいては、2016年9月末時点で200万超の会員がいる。またモバイル事業においても、約40万人の会員を抱えている。

 プレスリリースでは「通信領域のみならず、決済、物販事業などの非通信領域で両社のシナジーによる事業拡大を図る」とあるが、狙いは回線契約なのだろう。これまでKDDIが獲得してきた固定回線での契約者数とビッグローブ、さらにニフティも買収すれば、MM総研調べのシェア争いでは2位となる見込みだ。

 固定回線に関しては、一度、敷設した回線を乗り換えると言うことはほとんどないため、競争は一段落してしまっている状態だ。「乗り換えがない」ということは、ビッグローブを契約しているユーザーはこれからも同じ回線を使い続けるわけで、KDDIにとってみれば安定的な収入源として期待できる。他社からユーザーを引っぺがすことができないのであれば、買い取ってしまうのが早いというわけだ。

 一時期、自分はビッグローブの会報誌でコラムを書いたりしたことがあったが、その際に教えてもらった会員の属性を見ても、比較的、年齢層が高いと推測される。この先も継続的にビッグローブを使い続けるであろう人たちであることは間違いなさそうだ。

 決して、これから急成長していく分野ではないが、キャリアとしての「安定収入源」としては悪くないのではないだろうか。会員の年齢層が高いと言うことは、それだけ可処分所得が高いわけで、KDDIが注力しつつある物販を強化できる可能性もゼロではないだろう。

 KDDIグループはMVNOにおいては苦戦を強いられており、ビッグローブの40万という会員数は魅力的かも知れない。ただ、この時期にビッグローブを契約しているユーザーというのはSIMフリーやMVNOに対する知識が豊富であり、他で強力なキャンペーンを展開していると、簡単にMNPで流出してしまう層と言えるだろう。確かに基盤として40万件は魅力だが、そのユーザー層をどこまで囲い込んでいけるかは、これからの勝負となりそうだ。

 実際、今回の買収は「高いのではないか」という指摘もある。

 ただ、せっかく、ビッグローブを買収したのだから、KDDIにはさらにアクセルを踏んでもらって、ニフティを始め、買収できるプロバイダはことごとく買収して、CATVのような世界観を作ってもらえると面白い。

 KDDIでは3年間で5000億円のM&A予算を組んでおり、そのうち800億円をビッグローブに使ったことになる。まだ、余裕はありそうなだけに、第2、第3のプロバイダ買収も視野に入っていることだろう。

 それにしても、一時、数千社あったインターネットプロバイダは、続々と淘汰され、老舗といえたビッグローブがキャリアの傘下に入ってしまった。こんなことを10年前に想像できただろうか。

 もしかすると、いま盛り上がっているMVNOたちも、老舗であっても、いずれ将来的にはキャリアに買収され、役目を終えるという憂き目を見ることになるのだろうか。

© DWANGO Co., Ltd.

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