―― 先ほどイーコマースのお話が出ましたが、春商戦では、Yahoo!プレミアムを無料化する施策も発表されました。これは、Y!mobile側が料金を負担しているのでしょうか。
寺尾氏 もともと一緒に事業をやろうと言っていたので、一定のコストは負担しながらやっています。実は最初に宮坂(Yahoo!JAPAN社長)たちと話したときに、Yahoo!プレミアムを入れられないかは議論していました。結局、いろいろな理由があってそのときはゴールできませんでしたが、ちょうどYahoo!ショッピングが伸び始めて、Yahoo!プレミアムそのものの価値も、ショッピングに寄ってきていました。2年後、3年後を考えたとき、イーコマースでものを買うのは、すごく大きな広がりが出る。ちょうどそのベクトルが合って、やることになりました。2月にスタートしましたが、これはいい感じで動いています。
―― ショッピングとの連携に関しては、ポイントの大盤振る舞いに驚いた一方で、やっぱりお金なのかと思う部分もありました。テクノロジーで買い物体験を変えるような連携は、何かないのでしょうか。
寺尾氏 本当は、お年寄りのような、買い物弱者のためのプラットフォーム作りを、いろいろなところでやらなければいけない。3年後、4年後を見たとき、よりシンプルなスマホではないデバイスも必要になってくると思います。
―― つまり、今はまだ始めたばかりで、今後そういったものも出てくるということですか。例えば、CESではAmazonのAlexaを至るところで見ましたが、ああいったことなども考えているのでしょうか。
寺尾氏 もちろんです。ただ、その前にネットで買い物をするという文化を広げないことには。入力デバイスと結果がきちんとつながらないと、ああいったものは広がりません。入り口のデバイスがスマホだけではないというのは確かにその通りですが、きっと今、Alexaを置いただけだと、そのうち何もしなくなります。
インタビューを通じて、Y!mobileの躍進を支えている1つの理由に、“シンプルさ”があると感じた。そのシンプルさは、料金だけでなく、端末ラインアップやオプションなどにも貫かれている。確かに細かく見ていくと、料金にはさまざまなオプションが用意されており、端末もSIMロックフリーを選べるような選択肢がある。一方で、あえてそれを大々的に見せず、ユーザーに伝える情報を絞り込んでいるのが、Y!mobileのコミュニケーションのうまさといえるだろう。
ウィルコムやイー・モバイルの事業を継承しているため、ショップの多さも強みになっている。ソフトバンクのいち事業のため、収益面を考えるとアクセルを踏みにくいと思われるが、寺尾氏のコメントからは、あまり“親”の顔色を伺っていない印象も受ける。メインブランドのはずのソフトバンクとの食い合いをあまり気にせず、まるで1つの会社のように全力で市場を取りにきているところに、今のY!mobileの強さがあるのかもしれない。
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