ARPUが低下している現状に対し、孫氏は「当然増益させなければいけないし、それはやる」と語り、「そこで光ファイバーのバンドルによる、1ユーザーあたりの売り上げを増やす。コンテンツやサービスをトータルで増やすことを一生懸命やっていく」という方針を明かす。実際、ソフトバンクは、NTT東西の光コラボレーションを活用した「ソフトバンク光」が359万契約(モバイル回線のSoftbank Air含む)を超えており、2015度の172万契約から倍増以上の成長を見せている。
サービスでは、「Yahoo!JAPANとのシナジーもさらに出していく」(孫氏)と言うように、ソフトバンクとの連携を強化しているところだ。Y!mobile向けに実施していたYahoo!プレミアムの無料化を、メインブランドのソフトバンクにも導入するのは、その一環とみていいだろう。Yahoo!JAPANは、ショッピングに注力しており、ストア数は51万にまで拡大した。ポイント還元を強化することで、ソフトバンクユーザーの利用はさらに増えていくことになりそうだ。そのYahoo!JAPAN自体も、増収増益(アスクル子会社化も含む)を果たしており、ソフトバンクの業績に貢献している。
固定回線や、上位レイヤーのサービスで、トータルの収益を稼いでいくという大枠での方針は、KDDIも同じだ。KDDIは、中継経営戦略として、ライフデザイン戦略を掲げており、コマース、生保損保、住宅ローン、IoTなどに事業領域を拡大している。今期については、戦略的投資も行う予定で、ライフデザイン企業の足腰となる販売チャネル改革に150億円、ライフデザイン関連事業そのものの100億円をつぎ込んでいく方針だ。非通信領域に関しては、M&Aも加速させており、DeNAからショッピング事業を取得し、2017年からWowma!を開始。さらに「足元では、IoT時代を見越した出資、提携も進めていく」(田中氏)という。
もっとも、非通信領域の対象はauユーザーが対象となっており、auのネットワークを使うMVNOとの連携がまだ十分取れていない。KDDIが定義するところの付加価値ARPAを上げるには、au IDの開放などのオープン化戦略が必要になってくるはずだ。田中氏も、「今期の予想には入っていないが、考えていかなければいけない」と語っており、今後は、ドコモやソフトバンクと同様、上位レイヤーをネットワークと切り離していく可能性もありそうだ。
非通信領域での収益性を上げていくのは、大手3社に共通した戦略だ。一方、前回の連載で指摘した通り、ガイドライン施行後の競争環境は、ドコモにとって有利に働いている。au、ソフトバンクがともに、メインブランドのユーザー数を減らす中、ドコモはMVNOを除いた単独での純増も維持。
端末の販売台数も横ばいで、各種料金施策が功を奏した結果、ドコモの解約率も0.59%と、3社の中で最低水準となっている。これに対し、KDDIやソフトバンクは、基盤となる通信事業にもMVNOやサブブランドの影響が出ていることが浮き彫りになった。MVNOの拡大や、総務省のガイドラインを契機に、競争環境が変わりつつあることがうかがえる。
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