後発auが投げた「スマートブック」という変化球神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2010年04月02日 10時30分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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 ケータイ要素の取り込みは、すでにIS01でも始まっている。IS01には、Android端末初のワンセグ機能や赤外線通信機能が入っており、日本の一般ユーザーが使い慣れたEZwebのメールやデコレーションメールにも8月下旬以降に対応する。また、ケータイ向け歩行者ナビゲーションで人気・実力ナンバー1のEZナビウォークが「au one ナビウォーク」として移植され、Android向けのアプリケーションストア「au one Market」ではキャリアによるコンテンツ課金サービスの「auかんたん決済」も導入される予定だ。そのほかにも、IS01を細かく見ると、「名刺リーダー」や「QRコードリーダー」などケータイでおなじみの機能がAndroidアプリで再現されており、スケジューラーやタスク管理機能なども使いやすく作り替えられている。Androidの上に、これまでの“ケータイの世界”で一般ユーザーの需要が高い機能・サービスを、ソフトウェア的に再現しているのだ。

 「海外市場と違って、日本だとスマートフォンへの移行が(機能や使い勝手の面で)マイナスになってしまうところもある。ここはキャリアとメーカーが共同で補っていかないといけない。そうすることで、普通の日本人ユーザーが使いやすいスマートフォンの世界が作れる」(高橋氏)

 ちなみにIS01が“2台目端末”というコンセプトながら、日本のケータイ機能を積極的に取り込んでいる理由には、「Android上にケータイの諸機能をいちど作ってしまえば、後続の端末に流用していける」(KDDI幹部)からだ。auでは、今秋発売されるISシリーズの新モデル以降で“1台目狙い”のスマートフォンを投入するが、ソフトウェアによるケータイ機能の再現は、IS01から始まっているのだ。高橋氏によると、次期モデルの大きなトピックは「日本ユーザーのニーズが極めて大きいFeliCaへの対応。おサイフケータイの世界をスマートフォンで再現する」ことだという。

 日本のケータイ機能やサービスについては、昨今、十把一絡げに「ガラパゴス」と揶揄する風潮が一部のユーザーだけでなくメディアの間にも見受けられる。しかし、1999年2月のiモード登場以降、ケータイの世界で作られてきた日本独自のコンテンツやサービスが、iPhoneより一足早くモバイルインターネットの世界と市場を広げてきたことは事実だ。日本のケータイが、コンテンツ・サービスの面でiPhoneより進んでいる部分もある。日本のケータイの中から、需要が高く将来性がある要素をAndroidなど次世代のプラットフォームに移植するということは、iPhoneに対抗する上での有効な手段になり得る。むろん、グローバル市場との連動性を視野に入れることが大前提であるが、FeliCa機能などは日本のスマートフォンからグローバル市場に「逆提案」することも考えられるだろう。auが、iPhone市場攻略の鍵として、積極的に“日本のケータイ”を持ち出してきたことは注目である。

文字入力とUIにこだわったIS01

 ここまでKDDIのスマートフォン戦略を見てきたが、その最初の戦略モデルであるIS01にも目を向けてみよう。

Photo 「IS01」

 前述のとおり、IS01はあえてスマートフォンではなく、スマートブックという新しいコンセプトを採用したキーボード型端末だ。KDDIでは「mixiやTwitterなどで情報発信する20〜30代女性が、音声端末とあわせて2台目として使う」(高橋氏)利用シーンを想定しており、パンタグラフ式のキーや、ケータイで培った日本語入力ソフトを導入するなど文字入力に最適な端末に仕上がっている。筆者も実際に試してみたが、キータッチは柔らかめながらストローク感があり、IS01が狙う“文字入力”用途ではかなり使いやすい。

 また入力系のUIでもう1つ感心したのが、トラックボールだ。IS01の液晶はタッチパネルになっているが、補完的な操作系UIとしてこのトラックボールを併用することで、電車の中などで立ったままでも操作がしやすくなっている。

 一方、メニュー画面などのUIは、欧州のOcean Observationsがデザインを担当したという。同社のUIはデザイン性や使い勝手のよさを第一に考えられており、iPhoneのようにアニメーション処理も巧みに使って“心地よさ”を演出している。Androidの基本UIを独自に拡張するという考え方は、ソニー・エリクソンのXperiaと同様だが、IS01のUIデザインは「シンプルさと心地よさの両立」を目指している。Xperiaと見比べると派手さはないものの、飽きずに長く使っても満足できそうだ。

 そのほか、細かな部分のレビューは別記事に譲るが、IS01は「写真で見るよりも、実機を触った方が印象がよくなる」というのが率直な感想だ。とりわけ大画面でもスムーズに動くUIや、文字入力のしやすさは、KDDIとシャープの強いこだわりを感じる部分である。ぜひ店頭で、実機を試してもらいたいと思う。

スマートフォン市場で、auの逆襲になるか

 奇しくも今週は、ソフトバンクモバイルのHTC Desire発表にはじまり、auのIS01/IS02発表、NTTドコモのXperia発売など、スマートフォンの話題に事欠かない1週間になった。これらの端末がどこまで売れるかはまだ分からないが、日本の携帯電話市場が、新たなステージに向かい始めているのは確かだろう。少なくとも、今後のモバイル分野における新たなビジネスやサービス、コンテンツは、iPhoneをはじめとする“新時代のスマートフォン”が震源地になる。

 そのような中で、auのISシリーズは、KDDIのスマートフォン戦略をきちんと打ち出すことができている。まだ変化球なので、そのスタンスが成功するかどうかは不分明であるが、今年のスマートフォン市場にとって注目の取り組みであることは間違いない。IS01とIS02、そしてIS seriesの後続モデルを、期待を持って見まもりたい。

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