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» 2012年04月17日 13時00分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:それは新しいカテゴリーへの挑戦――「GALAXY Note」の可能性を考える (1/2)

Samsung電子が2011年に世界市場に投入した、5.3インチディスプレイとペン操作が特徴の「GALAXY Note」が、Xi対応スマートフォンとしてドコモからリリースされた。GALAXY Noteは、これまでのスマートフォンとは異なる新しいカテゴリーを作ろうとしている点が注目だ。

[神尾寿,ITmedia]

 ケータイからスマートフォンへ。

 この“スマートフォン移行”の特需にわく春商戦に、少し遅れて注目の新製品が登場した。NTTドコモが4月6日に発売したSamsung電子製の「GALAXY Note SC-05D」である。

 同機はワコムの技術を用いた電磁誘導式スタイラスペン「Sペン」と、5.3インチ有機ELディスプレイを特徴とするスマートフォンであり、その大きなボディサイズとユニークなコンセプトから、2011年にグローバルモデルが登場した時から日本でも一部のマニア層の間で話題となっていた。北米市場を中心に海外では一般層にも支持されており、グローバルでは累計販売台数500万台のヒットモデルになっている。

Photo ドコモ版のGALAXY Note SC-05Dは、Xiに対応した。バッテリー容量にも余裕があるので、スマートフォンとしての利用だけでなく、モバイルWi-Fiルーターやナビゲーションデバイスなど、さまざまなシーンで活用できる

 日本市場向けのGALAXY Note SC-05Dは、GALAXY Noteの“ペン入力&大型ディスプレイ”のユーザー体験はそのままに、ドコモとSamsung電子が共同で国内向けのローカライズをしたもの。ドコモのLTEサービス「Xi」に対応したほか、ハードウェアとソフトウェアの両面で、日本市場に合わせた改修が施されている。

 ドコモ版GALAXY Noteの魅力はどのようなものか。日本市場でもSamsung電子の提唱する“Note(ノート)”が新カテゴリーとして定着するか。実機を2週間ほど利用したリポートも踏まえながら、日本におけるGALAXY Noteの可能性を考えてみたい。

「ペンUI」を再発明し、新たなユーザー体験を手に入れた

 “iPhone以前”のスマートフォンを知る人にとって、ペン入力式というのは古くて新しいUIだ。かつてのWindows Mobileを筆頭に、旧世代の多くのスマートフォンがタッチペンを採用し(その多くは感圧式だったが)、一般コンシューマー層には受け入れられずに消えていった。

 この古いスマートフォンを打ち砕いたのが、Appleの「iPhone」だった。周知のとおりiPhoneは、指による直感的かつスムーズなマルチタッチ式のUIを開発。旧世代のスマートフォンはもとより、ボタン入力式の携帯電話の市場まで席巻して、“誰もが使える新世代のスマートフォンの世界”を築いた。

 他方で、Appleが行ったiPhoneによるスマートフォンの再定義は、追随する他のスマートフォンをiPhoneの強い影響下に置くことになった。とりわけマルチタッチ式が主流となったAndroidスマートフォンはその傾向が強く、コンシューマー向けスマートフォンという新市場を切り拓いたAppleのiPhoneに対して、コンセプトやデザインを真似たフォロワー (追随者)と見られがちだった。

Photo GALAXY Note向けに最適化されていないアプリでも、画面サイズの大型化によるメリットは大きい。特にたくさんの文字が表示されるFacebookやTwitterでは見やすさを感じる

 そのような中で、Samsung電子のGALAXY Noteが注目なのは、かつてAppleが切り捨てた「ペン入力式」をワコムの要素技術と最新のソフトウェアで洗練させ、“iPhoneとは異なるスマートフォン”として再定義したことだろう。ペン入力式の模索は2011年にHTCが投入した7インチのタブレット端末「HTC Flyer」でも行われていたが、Samsung電子はHTCよりもさらに踏み込み、これを“大型スマートフォン向けの新しいUI”として市場化にチャレンジした。Apple流の表現を借りるならば「ペンUIを再発明した」のだ。

 結果として、GALAXY Noteの挑戦は新たなユーザー体験を作ることに成功した。スマートフォンとしては大きすぎる5.3インチのスクリーンと約83(幅)×147(高さ)×9.7(厚さ)ミリのボディサイズは、Sペン利用と両手持ちを前提にすることで不自然さがなくなり、むしろ“絶妙なサイズ感”となった。「電話機としての横幅の限界」から解放されたことで、大画面と高解像度による見やすさを手に入れたことも副次的なメリットだろう。

 誤解を恐れずにいえば、GALAXY NoteはiPhoneを“超えた”わけではない。iPhoneとはまったく別方向のユーザー体験を構築することで、iPhoneと比較しなくても成立する立ち位置を確立したのだ。

グローバル版より魅力的になったドコモ版GALAXY Note

 そして、ドコモ版GALAXY Note SC-05Dは、GALAXY Noteがグローバル市場で成功した新たなユーザー体験を、日本市場に合わせて洗練させることに成功している。

 なかでも特筆すべきは、Sペンの搭載に併せてプリインストールされた「7notes with mazec」の存在だろう。これは日本語の“手書き認識・入力方式”として定評のあるMetaMoJiの「mazec」と、デジタルノートアプリ「7notes」を組み合わせたもの。ドコモ版のGALAXY Noteでは、7notes with mazecを標準搭載することで、日本語を扱うあらゆるシーンで“手書き認識・入力”ができるようになっている。

 この快適さ・便利さは、実際に試してみると感動を覚えるほどだ。MetaMojiの手書き認識・入力技術の高精度ぶりはiPhone/iPad向けの「7notes」で体験していたが、GALAXY NoteでSペンとともに利用することで、よりスムーズかつ自然な感触で文字を書いていくことができる。手書き認識の精度・速度ともに優れており、かつての手書き入力につきまとっていたもっさりとした感じはない。すらすらと、十分に実用的なスピードで手書き入力できるのだ。

PhotoPhoto 手書き認識・入力ができるのは、GALAXY Noteの最大の特長だろう。特にドコモ版は「7notes with mazec」搭載により、手書き入力でも高い精度・速度で文字入力ができる。単なるメモ書き程度なら「Sメモ」が便利。すぐに呼び出せるSメモライトとセットで、PDA的な使い方をするときに重宝する

 他方で、GALAXY Noteはmazecによる手書き入力をしなくても、文字入力が快適だ。同機の横幅83ミリのボディは片手持ち・片手入力には大きいが、両手持ちで2本の親指でソフトウェアのQWERTYキーボードの入力をすると、とても快適なサイズだからだ。

Photo Xiに対応しており、追加料金なしでテザリングできるのは魅力的。「モバイルWi-Fiルーター+小型タブレット」として買うというのも1つの選択肢だ

 そして、もう1つ。ドコモ版GALAXY Noteの魅力となっているのが「Xi」への対応だろう。周知のとおりXiは、ドコモが提供するLTEサービスである。すでに2010年12年のサービス開始から1年あまりが経過しており、サービスエリアは全国政令指定都市では人口カバー率100%まで拡大。さらに2013年度に向けて地方都市でのエリア拡大を継続中だ。またXiは屋内の接続品質が比較的高く、同じサービスエリア内であれば、モバイルWiMAXや他社のLTEサービスと比べて使い勝手がよいという一面もある。実利用環境下で高速データ通信が使えるエリアが広く、実用性が高いのだ。

 GALAXY Noteはその画面の大きさから、Webブラウザや地図アプリ、Evernoteなどのクラウドサービスが、一般的なスマートフォンよりも快適に使えるが、ここでXi対応による高速・低遅延な通信が利用できるメリットは大きい。また5.3インチ有機ELディスプレイを生かして動画サービスを楽しみたい時なども、Xiへの対応は快適さにつながるだろう。またドコモでは、Xi契約では追加料金なしでテザリングを提供している。そのためGALAXY Noteをスマートフォンとしてだけでなく、Xi対応のモバイルWi-Fiルーターとしても使うことができる。

 むろん、このXi対応はいいことばかりではない。現状のXi用通信モジュールは消費電力がまだ大きく、3G専用のグローバルモデルよりもバッテリー持続時間は短くなってしまっている。この2週間ほどGALAXY Noteをメインのスマートフォンとして使い、常にテザリング機能をONにしてMacBook AirやiPad用のモバイルWi-Fiルーターとしても使っているが、こういった使用頻度・負荷の高い使い方をすると、バッテリーは12〜13時間ほどしか持たない。朝から夜まで充電なしの運用は難しく、日中にいちど充電するタイミングを設けるか、別途「eneloop mobile booster」などのUSB充電バッテリーを携行する必要があるだろう。

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