iPhone 4が常に端末販売ランキングの上位に位置するようになって久しいが、その一方で、根強い人気を誇るのが同じAppleの「iPod touch」である。同機はiPodシリーズのフラッグシップモデルであることはもちろん、iPhone 4やiPadと同じiOSを搭載。とりわけiPhoneに近い仕様であることから、“iPhoneの兄弟機”として、多彩なアプリや音楽・映像コンテンツが楽しめるマルチメディアプレーヤーとして独自のポジションを確立している。2010年9月にはiPhone 4と同等の解像度を持つRetinaディスプレイを搭載した第4世代iPod touchも投入された。
また周知のとおり、iPod touchにはIEEE 802.11b/g/nのWi-Fi接続機能が用意されており、Wi-Fi環境があれば、iPhoneと同じようにネット利用もできる。となると、モバイルノートPCと併用したいユーザーや、従来型のケータイを手放せない人は、“iPod touchとモバイルWi-Fiルーターの組み合わせ”という運用方法にも食指が動くはずだ。
そこで今回は、最新の第4世代iPod touchとNTTドコモのモバイルWi-Fiルーター「BF-01B」の組み合わせを試してみた。その使い勝手と、iPhoneと比較してのメリット・デメリットなどをリポートしたいと思う。
過去のリポートでも度々書いたとおり、BF-01Bはドコモの広いエリアと高速データ通信サービス(FOMAハイスピード)が利用できて、モバイルWi-Fiルーターの泣き所になりがちなバッテリー持続時間が最長6時間と長いのがウリだ。しかも、同時に6台までの機器をWi-Fi接続できるので、ノートPCだけでなく、さまざまなモバイル機器をBF-01B経由で利用できる。複数のWi-Fi対応デジタルガジェットを持ち歩く人にはうってつけの機器と言える。
iPod touchとBF-01Bを組み合わせて使うメリットは、具体的には2つある。
1つは「ドコモの3Gインフラ」が利用できること。周知のとおり、ドコモのインフラは国内キャリア随一であり、エリアの広さと安定した高速データ通信品質には定評がある。一方、iPhone 4を取り扱うソフトバンクモバイルのエリア品質は、いまだドコモに追いついていないのが実情だ。そのためiPod touchにBF-01Bを組み合わせることで、ドコモの3Gインフラが利用できることは大きなメリットと言えるだろう。
そして、もう1つのメリットが「Wi-Fi接続時のみ利用可能な機能」が外出時などでも使えるようになることだ。iOSの豊富な機能やサービス、アプリの中には、ネットワーク接続を前提としたものも数多く存在する。App StoreやiTunes Storeからのアプリや楽曲のダウンロードはもちろん、メールやYouTube、Googleマップなどの標準機能、クラウドサービスと連携するアプリなどは、ネットワーク接続がない状態では利用できなくなってしまう。その点、BF-01BとiPod touchの組み合わせなら、自宅のWi-Fi環境と同じように機能やアプリが利用できる。
iPhone 4などと比べても、20Mバイトを超えるアプリがいつでもダウンロードできたり、iTunes Storeでも好きなときに買えるといった利点がある(iPhone 4の3G接続時は20Mバイト以上のアプリのダウンロードは不可、iTunes Storeからの楽曲ダウンロードも非対応)。YouTubeも常時高画質モードで再生可能だ。iPod touchをBF-01BのWi-Fi経由で利用すると、モバイル環境でも機能制限なく利用できるのだ。
実際に使ってみると、BF-01B経由でiPod touchを使うのは「快適」のひと言だ。SafariによるWebブラウジングはサクサクと動作し、添付ファイル付きのメールもすばやく受信できる。TwitterやEvernoteの利用も快適だ。またYoutubeやニコニコ動画など動画系サービスが高画質モードで利用できるのも嬉しいところだろう。
さらにWi-Fi利用ならでのメリットを感じるのが、前述のとおりAppleの各種ストアが制限なく利用できるところだ。空いた時間に音楽やゲームが気軽に買える。新サービスの「iTunes Movie Store」も利用可能で高画質で予告編を見たりできるが、さすがに映画コンテンツは容量が大きく、3G環境でダウンロードするのは難しい。しかし今ならBF-01Bを購入すると、1年間ドコモの公衆無線LANサービス「mopera U(U「公衆無線LAN」コース)」のサービスが無料で使える。そのため飲食店や空港、駅の公衆無線LANサービスエリアで映画をダウンロードする、といった使い方ができる。
一方で、iPod touch+BF-01Bの組み合わせではiPhoneのように使えないものもある。まず、iPod touchはGPSを搭載していないため、GPSを利用するアプリは使えない。またラジオのネットサイマル放送が聴ける「Radiko」アプリも、BF-01Bでは所在地確認ができないらしく利用することができなかった(※)。カメラの解像度が低いため、カメラ系のアプリには非対応のものがある。
iPod touch+BF-01Bでもう1つ注目なのが、インターネット電話のアプリが利用できることだ。Apple純正の「FaceTime」はもちろん、「Skype」も利用できる。
例えば、AppleのFaceTimeではあらかじめ登録したApple IDによる発着信が可能。相手は同じiPod touchユーザーかiPhone 4ユーザー、もしくはMacユーザーに限られるが、BF-01Bの3G環境でもテレビ電話が利用できた。ただ、さすがに3Gインフラへの負荷は高く、電波が弱い場所や繁華街では画像が乱れたり、音飛びすることもあった。FaceTimeを利用する際は、公衆無線LANサービスのエリア内の方が無難だろう。
一方、FaceTimeよりも実用的だったのがSkypeだ。こちらは音声通話のみの利用ということもあり、3Gエリア内でもかなり安定して通話ができた。Skype同士の無料通話はもちろん、割安な料金で固定電話向けに電話をかけるSkype Outも利用できた。いつでも・どこでもSkypeが利用できるのは、ヘビーユーザーにとって便利だろう。
iPod touchとBF-01Bの組み合わせは予想以上に実用性が高く、使い勝手も悪くなかった。総合的に見れば、通信内蔵のiPhone 4の方が便利だが、従来型のケータイとiOS端末の両方を持ちたいという“2台持ち”ならば、iPod touchとBF-01Bの組み合わせは検討する価値がある。モバイルノートPCや携帯ゲーム機なども持ち歩き、ケータイとiPod touchにプラスαしてさまざまなモバイル機器も使いたいなら、それらのデータ通信をBF-01Bにまとめるという使い方は十分にアリだろう。
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