KDDIは4月8日、東日本大震災への対応状況と復旧・復興への今後の見通しについて発表を行った。
同社の携帯電話・固定通信サービスは4月末までにおおむね復旧する見通しだったが、7日深夜に発生した宮城県沖を震源とする震度6強の余震により、東北地方にて大規模な停電が起こり、再び通信障害が発生している。
KDDIによると、7日深夜の余震発生時に東北エリアの基地局1262局に障害が発生。自家発電等のバックアップ電源を利用したことで、8日16時時点の停電基地局は287局まで回復した。このうち261局は停電の影響による障害で、移動電源車11台が出動し5台が稼働している。一時的に電源が回復しても、停電が長引いて自家発電の燃料切れや電源車の移動が間に合わないと、停波する基地局はさらに増えるおそれがあるという。このほか27局に回線故障が発生している。
基地局の停波により、青森県、秋田県、岩手県、山形県、宮城県の一部でau携帯電話の通話・通信が利用しにくくなっている。また発信規制は、地震発生時に最大50%実施したが、すべて解除された。
このほか、固定通信サービスでは法人向けのIP-VPNサービス4回線が利用できなくなっているという。
会見にはKDDI代表取締役社長の田中孝司氏、取締役執行役員常務の嶋谷吉治氏が出席し、4月7日12時点でまとめられた内容を説明した。上記の通り、新たな余震の発生で状況が異なっているため、今後の復旧予定には変更が生じる可能性がある。
KDDIは東北エリアに約3000の基地局を設置しているが、3月11日の震災発生時に1933局が停止。関東など別エリアを加えると最大で約3680局が停止した。基地局障害の76%が停電による影響だという。
震災直後には、auのサービスで最大95%の通信規制を行った。特に首都圏では帰宅難民の発生により、音声は通常の8倍のアテンプト(回線交換呼び出し)、データは通常の5倍のアテンプト(パケット接続呼び出し)が発生した。
「音声はかなりつながりにくかったが、メール等のデータ通信はそれなりに利用できたと認識している。今後同じことが起きた場合、ピーク時で8倍の音声通話に対応させるのは難しいが、データ通信を活用する方向で検討することになると思う」(田中氏)
被災地では震災の影響で広範囲のエリアが一時的に“圏外”になったため、KDDIは車載型基地局6台(1台で50回線を提供)とフェムトセル9台(1台で6回線を提供)を稼働させているほか、被害を免れた基地局の電波照射角度を広げる大ゾーン化や、離れた基地局同士を衛星回線や無線回線を使って結ぶことでエリアの回復を進めている。7日12時点の停止基地局は176局(岩手県44局、宮城県91局、福島県41局)と、基地局数で91%、カバーエリアで93%まで復旧した。
こうした暫定的な対応は避難所などの重点拠点を対象に行われており、4月末には震災前のカバーエリアと同レベルまで復旧する予定だ。ただし、大ゾーン化により電波強度が下がっているため、屋内ではつながりにくいこともある。
以上の暫定対応に加え、“復興”を目的とした動きも進んでいる。全壊や津波に流されて喪失した基地局もあるため、新たに53局の基地局建設に着手。避難所や仮設住宅など、被災前とは違う人口分布も考慮しながら、9月末には震災前のカバーエリアと通信品質まで戻す予定だ。
KDDIでは2012年の周波数再編を控えているが、旧800MHz帯を使う基地局が全壊していた場合は、新800MHz帯対応の基地局として建設する。修理できる場合は旧800MHz帯を引き続き利用する。
なお、東北エリアには182店のauショップがあったが、11店舗が全壊、42店舗が要修理の被害を受けた。営業を再開した店舗では、無料の充電サービスや端末の貸し出しなどを行っている。
また既報のとおり、被災者には支払期限の延長や各種料金の減免や軽減、「LISMO WAVE」でのFMラジオ配信による情報提供、Skypeと共同で10万人へのクーポン配布など、さまざまな被災者支援を実施。さらに、KDDIグループとして10億円を日本赤十字に寄付したという。
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