次世代の高速通信サービスとして注目を集めているLTE(Long Term Evolution)。NTTドコモは「Xi(クロッシィ)」として、2010年12月から国内キャリア初の商用サービスを開始している。
現在の提供エリアは関東甲信越と東海、関西の3ブロックとまだ限られているが、ドコモは今後北海道(札幌)や北陸(金沢)、四国(高松)、中国(広島)、九州(福岡)にエリアを広げ、2011年度中に人口カバー率約20%達成を目指すと発表した。
Xi(LTE)は一部屋内エリアで下り最大75Mbps/上り最大25Mbpsまでの高速通信(屋外などではその半分の速度)が特徴だが、これをさらに高速化させようというのが「LTE-Advanced」と呼ばれる技術だ。ワイヤレスジャパン2011のドコモブースでは、LTE-Advancedの実証実験で使われている設備と、高速通信を生かした3D映像のリアルタイム変換サービスのデモを展示している。
携帯電話の通信技術は、海外で多く使われているGSMやドコモのムーバ(PDC)などの第2世代(2G)から、auのWIN(CDWA2000)やドコモのFOMA(W-CDMA)などの第3世代(3G)と進み、現在は第3世代をさら拡張させた第3.5世代(3.5G)の通信サービスが、ドコモの「FOMAハイスピード」(HSDPA/HSPUA)やauの「WIN HIGH SPEED」(EVDOマルチキャリア)として普及している。
LTEは第3.9世代(3.9G)の技術と呼ばれ、将来の第4世代(4G)が使う通信規格へのスムーズな移行を目的にした通信規格。LTE-Advancedは3.9Gの次に控える4Gサービスの一画を担うべく開発が進められている技術で、ドコモは2月に実験予備免許を取得し、最大で下り1Gbpsという超高速通信のサービス化を目指して実証実験を進めているところだ。
ドコモブースでのデモでは、平均で約250Mbps、最大で約560Mbpsという下りの通信速度を出していた。展示されている基地局設備と移動局設備は実物だが、会場ではLTE-Advancedの電波を出すことができないため、無線環境やノイズを再現するシミュレーターを介して有線接続されている。
LTE-Advancedは、MIMO(複数のアンテナから同時に異なる信号を送受信する空間多重伝送技術)の高度化に加え、「周波数広帯域化(キャリア・アグリゲーション)」と呼ばれる技術を使いLTEの高速化を図っている。周波数広帯域化は、コンポーネント・キャリアと呼ばれるデータを乗せる周波数帯(周波数ブロック)を複数使うことで、伝送するデータ容量を多くするという手法。LTEは最大で20MHzまでのコンポーネント・キャリアを使えるが、LTE-Advancedのデモでは下り通信でコンポーネント・キャリアを5つ束ねた100MHz(20MHz×5)と、上り通信で2つのコンポーネント・キャリアを束ねた40MHz(20MHz×2)の帯域を利用している。
LTE-Advancedの商用化はまだ先の話ではあるが、固定のブロードバンドをも超える高速回線を何に使うのか? ドコモでは、LTE-Advancedのデモとともに“旬”の3D技術と組み合わせた活用を提案していた。
ブース内のステージでは、360度の全方位を撮影できるカメラ2台を用意し、その映像をLTE-Advanced経由で3D変換サーバに送信。クラウドで立体映像に変換してダウンロードするという流れをほぼリアルタイムで行い、会場の様子を3D映像としてドームスクリーンに投影。複数のカメラを使った3D映像のリアルタイム配信が可能になれば、スポーツ中継のマルチアングル配信や、友人や家族が訪ねた旅行先の様子を自宅でリアルタイムに立体視したりと、バーチャルリアリティやARをさらに発展させたサービスの提供が考えられるという。
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