スマートフォンはデュアルコアでもっと速くなる――Samsung電子のAndroid戦略に迫る開発陣に聞く「GALAXY S II」(1/2 ページ)

» 2011年07月29日 16時07分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 NTTドコモが2011年夏モデルとして発売したSamsung電子製の「GALAXY S II SC-02C」が売れている。GALAXY S IIの国内における具体的な販売台数は開示されていないが、先日、韓国/欧州/日本/南米での累計販売台数が500万台を超えたと発表された。これは、GALAXY Sが残した125日で500万台という記録よりも40日短い。

photophoto 「GALAXY S II SC-02C」(左)とGALAXY S SC-02B(右)

 GALAXY S IIは、2月のMobile World Congress 2011にて世界発表された同社スマートフォンのフラッグシップモデル。Samsung電子のお膝元である韓国では4月末に発売され、発売後3日間で10万台、33日後には100万台を売り上げたという。ドコモからは6月23日に発売され、初日の販売台数は「前モデルGALAXY S SC-02Bの約2.5倍」を記録したと、サムスンテレコムジャパン 端末営業部長のオウ・チャンミン氏は明かしている。

 前モデルのGALAXY Sは、ドコモに初めて供給されたSamsung電子製のAndroid端末であり、国内における同社製品への評価とAndroidスマートフォンへの評価を一変させたモデルといえる。“iPhoneキラー”と称するAndroidスマートフォンは数多く登場したが、GALAXY Sの高いスペックは群を抜くものであり、iPhone中心だった国内のスマートフォン市場に大きなインパクトを与えた。また、敬遠されがちだった海外メーカー製端末へのハードルを下げた功績も大きい。

 そんなGALAXY Sは、2010年10月末の発売直後に予約が殺到した上、さらに全世界的な有機ELの部材不足も重なり、店頭での販売が追いつかない事態が続いた。長引く欠品の中でも大ヒットを記録したが、Samsung電子は前回の反省を踏まえ「ドコモ向けGALAXY S IIではかつてない増産体制を敷いた。(Samsung)グループが調達した有機ELはすべて日本向けに回している」(オウ氏)という。こうした生産体制は、8月に米国向けモデルが登場するまで続く方針だという。

デュアルコアのパフォーマンスは完全に引き出していない

photo Samsung電子 専務 無線事業部 東南アジア輸出グループ長のチョウ・ホンシク氏(左)と、同日本開発グループ主席のジョ・チョルホ氏(右)

 GALAXY S IIがGALAXY Sからもっとも進化した点が、1.2GHz駆動の自社製デュアルコアプロセッサを搭載した点だ。Androidタブレットでは、米NVIDIAのデュアルコアプロセッサ「Tegra 2」を搭載するモデルも発売されているが、スマートフォンに関してはGALAXY S IIが国内で唯一の存在だ。

 Androidスマートフォン向けプロセッサといえば、米Qualcomm製のSnapdragonが有名だが、Samsung電子 日本開発グループ主席のジョ・チョルホ氏は「ほかのプロセッサと比較検討したうえで、自社製チップを採用した」と話す。

 「同じSamsungだから自社製チップを採用したわけではありません。プロセッサを販売する半導体事業部からすれば、我々携帯電話事業部は一顧客に過ぎない。他社のチップと比較して、特にマルチメディア関連の性能、具体的には対応するコーデックの数などが優れていました。それが自社製チップを採用した理由です」(ジョ氏)

 高速なプロセッサを搭載し、ほかの端末にない快適な操作性と処理速度を提供しているGALAXY S II。しかしジョ氏は、まだまだデュアルコアプロセッサのパフォーマンスを完全に引き出していないと明かす。

 「GALAXY S II はAndroid 2.3で初めてのデュアルコアチップを採用した端末で、そのパフォーマンスを100%発揮しているとは思いません。今後、OS側の最適化やプロセッサ以外のハードスペックが向上すれば、デュアルコアプロセッサの性能をもっと引き出した高速なAndroidスマートフォンが登場すると思います」(ジョ氏)

 ジョ氏は10年近く日本向け端末の開発に関わっており、日本の携帯電話市場を知り尽くしている技術者。それだけに日本市場の難しさについて「日本市場は独特。携帯電話市場も安定しており、求められる品質が高い。また市場規模が大きくさまざまなユーザーがいるためか、基本に忠実な仕事を評価してもらえる印象」と話す。

 例えば、キャリアの品質チェックについても要求項目が多く、中でも日本市場向けに搭載する機能やサービスによる項目が多いという。Samsung電子ではキャリアの基準を常にクリアするため、社内でより厳密な品質管理を行っている。また、メニュー画面などの日本語表現については特に気をつけており、日本にあるSamsungのデザインセンターを使って国内メーカーと遜色ない表現レベルを実現した。

 各国にあるSamsungの拠点を活用した端末開発も同社の特徴だ。地域ごとのきめ細かいローカライズが行えるだけでなく、各地域の時差を生かした24時間体制の開発体制を敷くことができる。ジョ氏は、「Android OSの開発サイクルは早く、製品ごとの差別化も難しい。競争に勝ち残るには、短い時間でどれだけの差別化ポイントを生み出せるのかがポイント。このスピードに付いていくには“一生懸命”しかない」と話した。

キープコンセプトでスペックと使い勝手を大幅に向上

photo 左から、UI/UX開発担当のウォン・ジュンホ氏とリ・スクキョン氏、製品デザイン担当のバン・ヨンソク氏

 GALAXY S IIは基本的にGALAXY Sのデザインを継承しているが、ディスプレイが約4インチから約4.3インチに大型化したためか、ややスクエアな形状になっている。同時に幅や長さが数ミリ増えているが、厚さは約8.9ミリ(最厚部約10.3ミリ)とスリム化が進んだ。

 Samsung電子の無線事業部で製品デザインを担当するバン・ヨンソク氏は、「GALAXY S IIは、アウトカメラとして約810万画素CMOSを、インカメラとして約200万画素のCMOSを搭載しています。特にアウトカメラのレンズ部はどうしても出っ張ってしまいますが、それでは美しくない。カメラモジュールとディスプレイパネルはともに簡単にサイズを変更できないので、それぞれが重なる部分を工夫して、どうすれば隙間が無くなるのかかなり検討しました。薄型化ではこのカメラ配置がもっとも苦労した点」と振り返る。

 薄型化と同時に端末のグリップ感を高めるよう、モックアップの段階からデザインの検討を繰り返したという。またグローバルモデルでは「指紋が目立つ」というユーザーの声を反映して背面パネルにファイバースキンという布地仕上げの素材を採用したが、国内向けは「ドコモからの要請」(Samsung電子)とのことで、GALAXY Sと同じグロス仕上げになっている。

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