新機軸のデザインを採用した“スーパーフォン”――「Xperia Z」開発の意図を聞く2013 International CES(2/2 ページ)

» 2013年01月21日 13時50分 公開
[田中聡,ITmedia]
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“スーパーフォン”と名乗るための条件

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―― Xperia Zはスペックも大きく向上しています。

黒住氏 Xperia Zは、ソニーモバイルにとって初めての“スーパーフォン”に入りますが、これに入れるためには、クリアしなければいけない条件があります。

―― プレスカンファレンスでも平井社長が「スーパーフォン」とおっしゃっていましたが、ただの形容詞ではなく、明確な基準があるのですね。

黒住氏 あります。これまでのXperiaでは、スペックにはあまり触れてきませんでした。スペックよりはユーザー体験だと。もちろん今もその思想は変わっていませんが、スーパーフォンはスーパーカーと似ていて、クリアしないといけない領域があります。スマートフォンは時代ごとに変わってくると思いますが、今年はクアッドコアと、できる限りの大画面――5インチフルHDです。そして、せっかくソニーがXperiaを出すのなら、ぶっちぎりのカメラを入れようと思い、13メガピクセルの「Exmor RS for mobile」を搭載しています。その上でどれだけ薄くできるかが重要ですが、薄さを重視したためにバッテリーをないがしろにしてはいけません。これまでのように、1900mAhや1700mAhにすれば薄くできますが、今回はそこで妥協せず、大型の2330mAhのバッテリーを積んでいます。その上で厚さ7.9ミリを実現しています。

―― すべてで妥協していないわけですね。ちなみに、2012年から型番にアルファベットを使っていますが、製品名のアルファベットには意味があるのでしょうか。(A〜Zを使った)26機種が出たらどうなるんだろう、と無駄に心配しています(笑)。

黒住氏 実は型番にはあまりポリシーはないのですが、Zについては、“Xperiaで一番の極みに達したもの”という意思があります。じゃあそれ以上のものが出たらどうするのか? となりますが、そのときはまた違う仕組みになるんでしょうね。

ユーザーに格好悪いところは見せられない

―― カラーバリエーションは3色ありますが、パープルが印象的です。

黒住氏 クリエイティブデザインチームが端末のデザインや色についてリサーチする際に、毎年ファッションのトレンドから来る流行りの色や傾向をとらえています。その中から出てきたのが、このパープルと(側面の)ブラウンのコンビネーションです。ホワイトにはパールシルバー、ブラックにはマットの入った黒を側面に入れています。これまでは、ブラウン系は、女性も好きだし男性にとっても外れでないので、裏面には使ってきました。でもトレンドリサーチを見ると、パープルをメインに使った方がいいと判断しました。

photophotophoto パープル、ブラック、ホワイトの3色

―― カラーのトレンドも移り変わりが早いんですね。

黒住氏 どんどん変わっています。例えばピンク1つを取っても、トレンドはどんどん進化しています。Sakura Pinkのようなピンクと異なり、僕は「魚肉ピンク」と呼んでいますが、最近は人肌に近いピンクがトレンドになってきています。同じ色でも表現が変わってきていますね。

 Xperia Zはスーパーフォンなのでプレミアム感を出したいと思ったので、王道の白と黒だけじゃなくて、違った色で“らしさ”が出ればと。ピンクなどのアイデアもありましたが、普通ほかではやらない、でも実際持ってみたら悪くない色がいいなと思いました。

―― 見る角度によって色味が変わるんですよね。特にパープルが顕著です。

黒住氏 多層コーティングで奥行き感を出し、コストはかかりますが、表面に一番近いところに油膜を貼ることで、見る角度で色が変わるんです。カラーによって違う膜を貼っています。

photo 卓上ホルダの色も妥協せず3色にした

―― 卓上ホルダも3色用意したのは驚きました。日本ならまだしも、グローバルでも3色用意したのは新しいですね。

黒住氏 卓上ホルダに端末をセットする文化は、海外ではあまりないのですが、今回は防水モデルでいかに簡単に充電してもらうかに尽きます。日本では特に、キャップを外して充電したいというニーズが高いです。卓上ホルダはこういった製品もありますよ、と基本的には別売で用意します。

―― 3色もあると、在庫を管理するのは大変ですよね。

黒住氏 そりゃぁ大変ですよ(苦笑)。でも端末と卓上ホルダの色が違うのは格好悪いじゃないですか。在庫の管理は大変だけど、ユーザーさんに格好悪いところは見せられない。これは僕の幻想なのかもしれないけど、ソニーには格好良くあってほしいんです。Appleの製品を持っていると、なぜか格好良くなっているように見えることがありますが、ソニーも似ている。恥ずかしいものは出したくないですから。

―― その考えが格好いいですね(笑)。

黒住氏 内部でも反対意見がありましたよ。バカじゃないのかと。端末もプラスチックでいいじゃんと。そりゃあそうだけど、それをやって誰が喜ぶんだろうと。我々は喜ぶかもしれないけど、ユーザーさんはそれで満足するんだろうかと。

―― これまでXperiaを使ってきた人が見ると、妥協したところは分かってしまいますよね。

黒住氏 そうだと思います。でも逆にここまで(完ぺきに)やってしまうと、後戻りできないところはありますね。自分の首を絞めているというか(笑)。

Xperia Zの小型バージョンも登場する?

―― いろいろとXperia Zの記事の反響を見ていると、「5インチは大きい」「もっと小さなサイズがあれば」といった意見も多く挙がっていました。小型サイズのXperiaは今後登場するのでしょうか?

黒住氏 逆にどう思います?

―― 「Xperia ray」や「Xperia SX」は評価が高かったと思いますし、4インチ〜4.3インチくらいが片手で持つのにちょうどよいという意見もあります。Xperia Zのデザインを4.3インチくらいにまとめたら、また違った価値が生まれるのではないかと思います。

黒住氏 「乞うご期待」としか言えないのですが(笑)、我々もサイズのニーズがあることは分かっています。もっと小さいサイズのものは出ないのかと、発表後にいろいろな人から直接聞いています。そういう商品が出るかどうかはここでは話せませんが、お客さんが欲しいと思うもの……それを裏切って「ここまでやるんだ!」という商品を出すのが我々の仕事だと思います。その期待に応えられる商品は、将来的には考えていきたいですね。

photo パスポートの幅が90ミリほどで、片手で持つにはこのくらいが限界だ

―― CESでの発表を見ると、今年は5インチフルHDがトレンドになりそうですが、画面サイズはどこまで大きくなっていくのでしょうか。

黒住氏 インチ数というよりは、ハードのサイズが限界に来ていますね。Xperia Zは幅が71ミリですが、70ミリ前後は片手で持って使うには限界だと思います。この中でどれだけディスプレイサイズを大きくするのかを考えた方がいいでしょう。物理的なサイズを変えずに5.2や5.3インチなどにするのは可能かもしれません。

―― 幅をここまでにする、といった基準のようなものはありましたか?

黒住氏 ありましたね。70ミリ前後が片手で操作する限界に近いと考えていたので。片手で“持つ”だけなら90ミリほどでも大丈夫だけど、操作はできなくなりますよね。90ミリは実はパスポートとほぼ同じ幅で、片手で持つギリギリのサイズ感と言われています。パスポートはタッチ操作はしないけど、ズボンのポケットやジャケットの内ポケットに入れたり片手で持ったりしますよね。あるいは、角をもっと落とせば、幅が広くても使いやすいのかもしれません。

評価されたデザインは継続する――Floating Prism復活も?

―― オムニバランスデザインは、2013年は今後も続けていくのでしょうか。

黒住氏 ヒューマンセントリックデザインという軸足はぶらさないで、定期的にマイナーチェンジを繰り返してきていて、デザインテーマの終わりは決めていません。ユーザーさんに受け入れられて、デザインのトレンドもそのまま続いているのなら、やめる必要はありません。いたずらに毎年変えていくだけならファッションショーになってしまうので、やりたくない。いつまで続くかは分かりませんが、受け入れられる限りは続けていきたいですね。

―― オムニバランスデザインは、2013年のデザインテーマというわけではないと。

黒住氏 ええ。新しいデザインコンセプトは、CESなど新機種が出るタイミングで導入してきたので、毎年変えているように見えますが、そういうわけではありません。

―― 確かに、2011年に生まれたアークフォルムは、2012年のXperia GXやXperia AXなどにも継承されています。2012年はアイコニックアイデンティティを掲げていましたが、Xperia Zも十分アイコニックですよね。

黒住氏 “アイコニックアイデンティティ”という名前は僕が付けたんですが、(2012年の製品に限った話ではないので)「しまったな」と思って。デザイナーには「すべての携帯電話をアイコニックにしてください」と言っています。例えば10メートル先からも、この携帯電話はソニーの製品だと分かってほしい。Xperia Zの電源キーはアクがあるけど、「これってソニーの電話なんだな」と。そういう意味では、Zにもアイコニックアイデンティティがあると思います。

―― このデザインは今年は当面続くんでしょうか。さすがにこれ1台で終わることはないですよね?

黒住氏 そこはちょっと分からないですね(笑)。我々はユーザーさんに受け入れられると思っていますが、受け入れられなかったら、変えないといけないのかもしれません。

―― (Xperia NXなどに採用した)Floating Prismは、1シーズンで終わってしまいました。個人的にはとても面白いと思ったのですが……。

黒住氏 それもちゃんと考えています。Floating Prismも面白いものだと今でも思っていますし、いろいろ形を変えながら、生かせるところがあるのかなと思っています。どの商品にどういう形で入っていくかは分かりませんが、あれ(Floating Prism)をやめたわけではありません。どういう使い方がいいのかを今、考えているところです。

photo 左から「Xperia S」「Xperia P」「Xperia U」。Floating Prismも個性的なデザインだった

―― それは楽しみです。今回のガラスにFloating Prismが加わると、さらに良いと思うのですが……。

黒住氏 本当に?(笑) Xperia Zだと側面が透明になったらどうなるのかなとか、いろいろな使い方はあるのかなと個人的には思っています。

―― おお! それは良いですね。

黒住氏 1度使ったテーマを1年でやめるのではなくて、いろいろな形で使っていけると思います。

―― 最後に今後のラインアップ展開についてお聞きします。特に2012年が顕著だったと思うのですが、ここ最近、ハイエンドからローエンドまで、Xperiaの製品が細分化されて増加しています。正直私もすべての型番を覚えきれないほどです(笑)。この流れは2013年も続くのでしょうか?

黒住氏 Xperiaを細分化したのは、各市場のニーズに合わせるためです。ただ、スマートフォンが市場の中心になって、フィーチャーフォンのころよりは、特定の商品にニーズが集中しているように思います。その変化が如実に表われてくるのが2013年ではないでしょうか。それが市場の大きなトレンドだとすると、我々が持っている商品ラインアップも、それに合わせていかないといけません。将来に向けては、キャリアやコンシューマーの動きに合わせて、ラインアップを展開していきたいと思います。

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