5月13日から24日の2週間にかけての大きなトピックは、ドコモとKDDIが相次いで、夏商戦に向けた新端末、新サービスを発表したことだった。また、海の向こうの米国では、これらの端末のベースとなるOSのAndroidを開発するGoogleが、開発者向けイベント「Google I/O」を開催。事前にウワサの飛び交っていたNexusシリーズの新モデルやAndroidの最新バージョンは公開されなかったが、Googleマップや「Google+」を刷新した。
こうした新たな取り組みが次々と登場する一方で、21日には消費者庁が、KDDIのiPhone 5に関するLTEのエリアのカタログなどへの記載について、景品表示法違反の措置命令を下した。これを受け、KDDIは2.1GHz帯・10MHz幅(下り最大75Mbps)の実人口カバー率を14%と発表。よりエリアの広い2.1GHz帯・5MHz幅(下り最大37.5Mbps)の実人口カバー率が非公開だったこともあり、情報は今も“独り歩き”している。そこで、今回の連載ではKDDIの夏商戦に向けた取り組みを考察するとともに、改めて同社のエリアについても言及していく。ニュース性という意味ではドコモの夏モデルにも触れたかったが、Google I/Oに参加していた筆者は発表会に参加できていないため、周辺情報を折りこむ程度にとどめておきたい。また、Google I/Oから見えた、同社の姿勢の変化も取り上げていこう。
KDDIは20日、夏モデルや「スマートフォンとリアルな生活のリレーション(関係)を強化する」(代表取締役社長、田中孝司氏)新サービスを発表した。新モデルは「HTC J One HTL22」「Xperia UL SOL22」「AQUOS PHONE SERIE SHL22」「ULBANO L02」の4機種。新サービスは「auスマートサポート」や、「auスマートパス」のリニューアルとなる。
昨年の夏モデル「HTC J ISW13HT」からコラボレーションを続けていたHTCとは、引き続き関係を継続。グローバルモデルの「HTC One」をベースに開発したのが、HTC J Oneだ。アルミを全面に使ったボディや、ピクセル1つ1つの面積を大きくして暗所での写りをよくしたカメラといった特徴はそのままに、赤外線やおサイフケータイ(FeliCa)、ワンセグなどに対応。ニュースやSNSの情報を一覧できる「HTC BlinkFeed」にauスマートパスの情報を組み込むなど、HTC J Oneではコンテンツ面での協力関係にも踏み込んだ。
一方で、HTC関係者によると、HTC J Oneは過去のコラボレーションとは位置づけが異なり、「グローバルモデルを日本の仕様に合わせて持ち込むもの」というコンセプトになっている。確かに初代HTC Jや「HTC J butterfly HTL21」のように、筐体のデザインまでは日本仕様になっていないことからも、そうした考えが見て取れる。HTC J butterflyや「INFOBAR A02」で対応した防水を見送ったのもそのためで、グロバール版に近いアルミの金属ボディを優先した結果だ。KDDI関係者によると、このボディで防水を実現すると、あと数ミリ厚くなり、コンセプトが崩れてしまうという。ただ、HTCとしては日本市場に特化した端末の開発をストップしたわけではなく、「あくまでパラレルで進めていく」(HTC関係者)という方針のようだ。
ドコモの春モデルで“イチオシ”として高い人気を誇った「Xperia Z SO-02E」に近い機能を持つ、ハイエンドなスマートフォンがXperia ULだ。Xperia ULは「日本独自の端末で、ベースとなるグローバルモデルはない」(ソニーモバイル関係者)という。Xperia Zや、同じくドコモの“ツートップ”に指定された「Xperia A SO-04E」とは違い、あくまでau専用モデルという位置づけのようだ。
5インチ、フルHDの高精細なディスプレイを採用し、ソニーの持つカメラや音楽の技術を惜しみなく注ぎこんだ1台となる。Xperia Zとの大きな違いは、背面がガラスではなく「インモールド加工」を採用した素材になっていること。これによってBlackのマットな手触りや、Whiteのパールのような輝き、Pinkのビビッドなカラーを実現している。ラウンド形状になり、画面下のスペースがXperia Zより狭いため、手に取ったときの印象もXperia Zとは大きく異なる。ワンセグ用のアンテナを内蔵しているのも、Xperia ULならではの部分といえる。
ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの大手3キャリアすべてに端末を提供しているのが、シャープだ。KDDI向けにはAQUOS PHONE SERIEを導入する。シャープは以前から「キャリアごとの差をしっかり出す」(シャープ関係者)方針で、ドコモ向けの「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」はフルHDのIGZO液晶を、ソフトバンク向けの「AQUOS PHONE Xx 206SH」は5インチ、フルHDの液晶とフルセグを売りにしている。対するKDDI向けのAQUOS PHONE SERIEは、ズバリ“バッテリーの持ち”が差別化のポイントだ。
ディスプレイの解像度はAQUOS PHONE ZETAとXxに劣る720×1280ピクセルだが、その分、描画にかかるパワーが少なくて済む。バッテリーが3080mAhと大容量なことも相まって、「IGZOで驚きの3日間」というキャッチコピーを打ち出している。実際の利用環境にもより、ヘビーに使えば3日には持たないと思われるが、少なくともシャープが今シーズン投入するモデルの中では、断トツの駆動時間を誇ることになりそうだ。他機種に搭載されている、F1.9の明るいレンズも搭載する。
京セラはURBANOをラインアップ。スマートフォン初心者や、シニア層に向けて、フィーチャーフォンのようなホーム画面「エントリーホーム」を内蔵。パネル全体が振動する「スマートソニックレシーバー」など、京セラ独自の技術も採用している。4機種の中では唯一ハードキーを搭載しているのも特徴で、タッチパネルだけでの操作が不安という声にも応えた1台に仕上がっている。
初心者向けの機種をラインアップする一方で、KDDIはサービス面でもこうしたユーザーをしっかりサポートしていく。新たに始めるauスマートサポートでは、24時間体制(23時〜9時は事前予約が必要)で専任チームを置き、ユーザーの疑問に答える。1回8925円の別料金が必要だが、実際に男性スタッフが自宅を訪問し、使い方や設定方法をアドバイスする「スマホ訪問サポート」もここに含まれる。このほか、ガイドブックのプレゼントや、iPhone 5、URBANOのレンタルなどもセットにした。
こうしたサービスを充実させたのは、「日本におけるスマートフォンの普及率が5割を超えるタイミングになってきている」(田中氏)ためだ。「お客さんとのリレーション強化」(同)を行い、今までスマートフォンへの乗り換えをためらっていたユーザーの移行を促す構えだ。リアルな生活との接点を強化するという点では、ぴあとの提携によって内容を充実させ、タイムライン形式にUIを一新させたauスマートパスもこの流れの中にある施策となる。
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