NVIDIAグラフィックスボードなどを手がける香港のZOTACは、「ZOTAC Tegra Note 7」を開発、アスクが日本での販売を行う。店頭想定価格は2万5800円前後。7インチタブレットのボリュームゾーンである、3万円以下を実現した。
低価格だが、機能は豊富だ。チップセットにはクアッドコアの「Tegra 4」を搭載しており、応答性の高いスタイラスを内蔵。これは、「(GALAXY Noteなどに採用される)アクティブスタイラスの性能と機能を、(静電容量式タッチパネルに用いられる通常の)パッシブスタイラスの価格で実現したもの」(NVIDIA テクニカルマーケティングエンジニア 矢戸知得氏)。ペンの当たる面積を計算して、疑似的に筆圧を再現することもできる。タッチパネルのスキャンレートを上げ、遅延も非常に少ない。
撮影時に常時HDRがかかる機能(アップデートで対応予定)や、筐体内にバスレフを設けてサウンドにこだわった点も、この端末の特徴となる。Tegra 4は、72基のGPUを搭載しており、グラフィックスに凝ったゲームもスムーズに動く。こうした映像をテレビなどの大面に出力するためのHDMI端子も備えている。
Tegra Note 7はZOTACの製品という位置づけだが、端末のベースはNVIDIAが開発したプラットフォームとなる。背面にメーカーのロゴこそ入っているが、そのほかの仕様はほぼリファレンスデザインそのままだ。NVIDIAのマーケティング本部長 林憲一氏は、同社がこうしたリファレンスを提供する目的を次のように語っている。
「今年度は世の中に1億台以上のタブレットが発売されるが、バッテリーの持ちを長くしてほしい、軽くしてほしい、より高精細なディスプレイを搭載してほしい、新しいプロセッサーや新しい通信方式に対応してほしいなど、さまざまなニーズに応える課題がある。こうした設計の課題にいち早く対応して、タイムリーにマーケットに投入するのは非常に厳しいが、このようなプラットフォームがあれば対応できる」
NVIDIAでは、「Tegra 3」のころ「Kai」というプラットフォームを開発しており、これはGoogleブランドの「Nexus 7」などに採用された。林氏はこの実績を挙げ、「KaiをNexus 7が採用し、低価格でありながら高性能ということでベストセラーになった」と語っている。
NVIDIAによると、提供の形は2つあり、ZOTACのようにほぼそのままの形で登場するものと、メーカーがハードウェアやソフトウェアを大幅にカスタマイズして登場するものに分けられる。後者の事例としては、HPが開発した「Slate 7 Extreme」があり、背面のデザインなど、外観は大きく変わっている。メーカーの持つ強みを生かしつつ、安価で性能の高いタブレットを開発できるというわけだ。
スマートフォンの分野ではNVIDIAの競合ともいえるクアルコムが「QRD(Qualcomm Reference Design)」という取り組みを行っており、同様にほぼそのままの形で市場に投入できる。同社によると、リファレンスデザインの受け取りから市場投入までを、60日で行えるという。こちらはエマージングカントリーと呼ばれる新興国向けの取り組みで、NVIDIAのTegra Note 7とは異なり、日本に投入した実績はない。
このように、端末の世界でも、それなりの性能で低価格を実現することができるようになった。冒頭述べたように、スマートフォンやタブレットの世界にも、ジェネリック市場が広がりつつある一例と言えるのかもしれない。
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