インタビュー
» 2014年07月25日 20時00分 公開

イオンのスマホ、音声プラン、SIMロック解除――福田氏が語る 日本通信の戦略とMVNOの課題MVNOに聞く(2/2 ページ)

[石野純也,ITmedia]
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1枚のSIMカードで3社のLTEを使えるようにしたい

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―― ドコモに続き、KDDIやソフトバンクモバイルにも接続の申し入れを行いました。これについて、進捗状況を教えてください。

福田氏 NDAもあるので詳細にはお話できませんが、ある意味で総務省マターになっています。1年前に申し入れを行い、協議をずっと続けてきました。3月にはKDDIやソフトバンクモバイルから、接続約款も出ています。ただ、料金は片方がドコモの2倍、もう片方が3倍になっていて、さすがにありえません。逆にそれがありえるなら、ユーザー向けの料金が全社一緒というのは明らかにおかしい。ドコモの3倍のところは、ドコモより利益が出ていると言ってますからね。もう滅茶苦茶です(笑)。

 もちろん、これはさすがにうちが指摘するまでもなく、総務省としてもどうにかしないといけないと思っているようです。総務省には届出を受け、適正かどうかを監督する義務があります。1:2:3はさすがにおかしいということで、今、ちょっと待ってくれと言われているところです。

―― 1枚のSIMカードで複数キャリアの回線が使えるというのはMVNOならではなので、ぜひ見てみたいですね。

福田氏 今、1枚で日本も海外も全部行けるというものを作ろうと思っています。980円で定額、それを日本で使おうと欧州で使おうとアメリカで使おうと、同じ料金でいいというものです。東京で使っても福岡で使っても同じなのに、台湾に行ったら料金が変わるのはおかしいですよね? (接続という形でネットワークを借りているなら)ネットワーク的には同じ料金でいいはずです。もちろん、制度上の関門はありますが、うちが一番力を入れているのはそこになります。

 日本では、3社のLTEを使える形を採りたいですね。LTEの設備は、エリアカバレッジ的にどうしても限界があります。一方で周波数帯はほとんど同じなので、3社のLTEを1台の端末で使うのも不可能ではありません。うちはドコモからネットワークを借り、その前にはウィルコムからも借りていました。海外ではSprintやU.S. Cellular、Vodafoneからも借りています。そこにKDDIやソフトバンクが入るのは何も不思議ではありません。

音声プランの選択肢が少ない理由は

―― 音声プランについても、MVNOの中で料金の選択肢が生まれていません。この理由を教えてください。

福田氏 要は制度上の問題です。日本通信は、音声も接続でやりたいと考えています(インタビュー後の7月18日に、ドコモに対する接続の申し入れが発表された)。接続ができれば、料金にも自由度が生まれます。接続でやろうとすると電話番号規則の問題など、いろいろな課題があることは確かです。ただ、海外、特に欧州ではこれができています。海外でできていて、なぜ日本でできないのかということは総務省も理解しています。

 逆に、最初にデータ通信の接続を進めたときは、世界中で同じことをやっているところはありませんでした。あのときは「一番進んだビジネスモデルをやりましょう」と押し切りましたが、音声に関しては制度を作ればできます。「海外でできるのに、なぜ日本でできないのか」というのは、構造改革のときにすんなりいく手法ですしね(笑)。これは、時間と手続きの問題で解決できます。

 電話という点で、日本通信は050番号のIP電話を(MVNOとしてデータ通信とセットで)最初に出し、ずいぶん真似もされてきまし、普及もしてきました。あれをもう一歩進めたいと考えています。

―― 音声通話に関しては、本人確認が厳格すぎるのもMVNOのビジネスの妨げになっている印象を受けます。MNPで受渡しに数日かかるとなると、メインの電話番号を移しにくいのではないでしょうか。

福田氏 これは政府にもお願いしていることですが、確かに警察の言うとおりにやれば効果が出るのであれば、うちとしてもいくらでもやります。ただ、今のやり方で本当に効果が挙がっているのか。詐欺などの犯罪も組織的になってきていて、そうなると電話はどうやってでも調達してきます。99%以上の関係ない人が手間暇をかけ、そのコストがユーザーに跳ね返るわけです。

 以前、データ通信について、警察の人に目の前で「インターネットは犯罪に使われるから、ない方がいい」と言われたことがあります。総務省と同じ建物に入っていて、言うことが真逆ですからね(笑)。もちろん、彼らの立場は違いますし、犯罪にあった人の気持ちを考えてそれを撲滅したいという気持ちは分かります。気持ちは分かりますが、冷静に数値を見て、抑止力が上がっているのか、上がっていないのか、まずはそこを見極めることが大切です。仮に上がっていない場合、そのために社会的コストを上げるのが本当にいいのかは見極めるべきです。

 音声通話のMNPに関してお話すると、今は物理的なSIMカードがあるために、契約者情報を書き込んだものを渡さなければなりません。これがE-SIMという方法になってくれば、遠隔からデータを書き込めます。最初は端末が限定されてしまいますが、リアルタイムな対応ができるようになります。

 イノベーションには、法制度と技術の両輪が必要で、片方だけでは上手くいきません。今は、ある部分では技術イノベーションが起きていますから、制度のイノベーションが必要だと思います。

SIMロック解除によってメーカーが価値を発揮できる

―― 制度という点では、SIMロック解除義務化が大きな話題を集めています。ここについて、見解を教えてください。

福田氏 今は特にSIMロック解除という方向の中で、メーカーが最大の価値を発揮できるときです。今までのメーカーはキャリアに縛られていました。「メーカーがだらしない」「キャリアが悪い」などいろいろな議論はありますが、どちらが悪いのではなく、どちらの側面もあったと思います。一方で、スマートフォンはメーカー主導でやれたところが買われています。それはAppleがそうですし、AndroidだとSamsungやソニーもそうです。メーカー主導でやってきたところが伸び、逆にキャリア主導で言われたスペックどおりに作ってきたところは没落してきました。SIMロックが解除され、メーカーが自由な発想で自由に競争する。そのゆがみを解くのが、SIMロック解除だと思っています。

 もともと、イオンさんと一緒に980円のSIMカードをやったのは、SIMロック解除がきっかけでした。イオンさんは大手で、既存キャリアの販売網も持っています。そこが自社のSIMカードを出すというのがなぜできたかというと、あのSIMロック解除のガイドラインがあったから。自分たちもその取り組みを始めざるをえないという大義名分ができたのです。つまり、あのガイドラインがなければ、980円のSIMカードはなかったですし、そこに続く格安スマホもなかったかもしれない。今度(のSIMロック解除義務化)は、メーカーに反応してほしいと思っています。

 同様に、JATE、TELECの仕組み(技適)も、抜本的に見直さないと大変なことになってしまいます。今は「ローミングでは使えるのに、SIMカードを差し替えると違法」という意味が分からない状態になっています。そこを見直さないと、海外から来た人たちが自分の端末を使えません。仮に日本がとてつもなく人口が大きく、マーケットとして魅力があれば別ですが、残念ながら日本の人口は全世界でいえば数%です。すると、日本の市場のために、その手間をかけますかということになってきます。そこは見直さないと、せっかくのいい端末がグローバルにあっても、それが日本に入ってこなくなるおそれもあります。

 例えば、国際ローミングで使える端末でFCCなり、ECなりの認証が取れていないものはほぼありません。世界で自国の認証をやめている国は多いのですから、ここをもう少し簡素化するなりして、見直さないといけないと思います。

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