格安SIMの利用に必要な「APN」ってそもそも何?MVNOの深イイ話(1/3 ページ)

» 2016年08月05日 13時30分 公開
[堂前清隆ITmedia]

 「格安SIM」など、MVNOのSIMカードを利用開始する際の手順の1つに、「APNの設定」があります。AndroidスマートフォンやWindows 10 Mobileの場合は設定画面から手で入力、iPhone・iPadの場合は「APN構成プロファイル」をインストールすることで、APNの設定を行います。一度設定してしまえばその後変更することはまずないため、あまり意識することはないと思いますが、このAPNとは一体何なのでしょうか?

APNの設定=通信サービスの選択

 APNの正式名称は「Access Point Name」、つまり「アクセスポイントの名前」です。このアクセスポイントは、携帯電話網と、インターネットやその他のデータ通信ネットワークを接続するための中継としての役割を持っています。

 実は、携帯電話網では1つのSIMカードを使って、複数のデータ通信サービスを利用することができます。どの通信サービスを利用するかは、接続先のアクセスポイントによって切り替えます。これを指定するのが「APNの設定」です。

 NTTドコモのSIMカードを例にして紹介しましょう。ドコモではデータ通信サービスのことを「ISPサービス」と呼びます。ドコモ自身が提供するISPサービスには、「spモード」や「mopera」があります。spモードはドコモのスマートフォンで利用する前提のサービスで、一方のmoperaはWi-FiルーターやPCに直接SIMを取り付けて利用することが想定されています。

APN spモードとmoperaの違い

 ただ、キャリアでスマートフォンを契約した方の多くは、APNの設定を意識したことがないと思います。各キャリアブランドのスマートフォンは自社のスマートフォン向けデータ通信サービスを利用することが前提のため、出荷時点で本体にAPNが設定済みになっているのです。なので、利用者が特に意識してAPNを設定することはなく、すぐにデータ通信を利用することができます。

APN キャリアスマホのAPN一覧(ドコモの場合)

 spモードやmoperaは、あくまでドコモと直接契約している利用者用のデータ通信サービスです。ドコモから設備の提供を受けているMVNOであっても、spモードやmoperaを利用することはできません。

MVNOとAPNの関係

 MVNOがSIMカードを提供する際には、自社で利用可能なデータ通信サービスもセットで提供することが一般的です。「格安SIM」として営業している場合、利用できるのは一般的なインターネット接続サービスのみとなりますが、MVNOによってはさまざまなデータ通信サービスを提供しています。

 例えば、IIJでは、法人向け・個人向けのMVNOサービスで異なるAPNを利用しています。

APN IIJが利用しているAPN

 これらのAPNの中には、通常のインターネット接続用とは異なるものもあります。例えば、法人向けの「IIJダイレクトアクセス」では、スマートフォンやモバイルを接続したPCがインターネットではなく契約者の会社の社内に直接アクセスできるネットワークに接続されます。複数のAPNを提供することで、こういった特殊な用途にも対応することができるのです。

 冒頭で紹介した通り、MVNOが提供するSIMカードを使う場合は、キャリアのSIMカードをキャリアブランドのスマートフォンで使う場合と違って、原則として利用者が自分でAPNを設定しなければなりません。これは、キャリアブランドのスマートフォンと異なり、SIMロックフリーのスマートフォンがそのMVNO専用に作られていないため、どのAPNが使われるか、出荷時点では想定できないためです。

 ただ、最近日本国内で出荷されているAndroidスマートフォンについては、自分で設定を行わなくても、最初の起動時にSIMカードを取り付けておけば、APNが自動的に選択されることがあります。これは、SIMロックフリースマートフォンメーカーが日本国内のMVNOのAPNリストを作り、スマートフォン本体内に登録して出荷しているためです。

 AndroidにはAPNの自動選択機能があり、APN未設定の状態でSIMカードを取り付けて起動すると、リストの中から適合するAPNを自動的に選んでくれます。各メーカーとも多数のMVNOのAPNをリストに登録していますが、契約したMVNOがそのリストに載っていない場合は、手作業でAPNを設定する必要があります。

APN SIMロックフリー端末のAPNリスト

Android 5.xのAPN自動選択には「バグ」がある

 一見便利なAPNの自動選択ですが、残念ながらAndroid 5.xのAPN自動選択にはバグがあります。APNが既に設定された状態であっても、突然APN自動選択機能が動作してしまうことがあるのです。また、この機能が動作したときに、しばらくの間データ通信ができなくなったり、LTEではなく3Gで接続されたりするなどの問題を確認しています。これらの問題を緩和するために、APN一覧から自分が利用しないAPNを全て削除してしまうことが効果的だと確認しています。通信が安定しないと感じている人は一度お試しください。


 ところで、iPhone・iPadで日本のMVNOのSIMカードを使うときは、手動でAPNを入力するのではなく、「APN構成プロファイル」をインストールする必要があります。これはiOSの「キャリア設定」に理由があります。

 iPhone・iPadのOSであるiOSの中には、全世界のキャリアの情報を登録した「キャリア設定」という情報があり、取り付けたSIMカードによって自動的にこの設定が適用されます。日本のMVNOは独自にSIMカードを発行することができませんので、キャリア(ドコモやKDDI)が発行したSIMカードを利用しています。そうすると、自動的にドコモ、 auのキャリア設定が有効になってしまいます。

 そして、ドコモ、KDDIのキャリア設定には、それぞれ自社の契約者が利用するAPNが書き込まれており、さらにそれを手動で変更できないような制限がかかっています。このAPNはドコモとKDDIの契約者しか利用できませんので、MVNOの契約者はこのままではデータ通信が利用できません。そこで「APN構成プロファイル」を使ってこの設定を上書きすることで、MVNOのデータ通信サービスに接続できるようにAPNを書き換える必要があるのです。

UQ mobile版iPhone 5sのSIMカードには専用のキャリア設定がある

 7月から、KDDIの設備を利用したMVNOであるUQ mobileが、iPhone 5sの販売を始めました。実は、UQ mobileのSIMカードを使ってiPhone 5sを利用する場合は、APN構成プロファイルのインストールが不要です。これは、auがUQ mobileのiPhone用に専用のSIMカードを発行し、そのSIMカードに対応した「キャリア設定」がAppleより配布されているためです。

 同じauの設備を利用した他のMVNO向けにはこのようなSIMは提供されていません。また、手動での設定変更もできないような制限がかけられていますので、従来通りAPN構成プロファイルのインストールが必要です。


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