多くの海賊版ソフトショップでも、Windows 7よりWindows XPの在庫をはるかに多く抱えている。中国の海賊版は「光る円盤1枚で100円」「パッケージの厚さは円盤の薄さ」で在庫コストがほとんどかからない。そのため、海賊版業者は売れるパッケージの在庫を膨大に確保する傾向にある。その海賊版ショップで膨大なWindows XPを抱えるということは、中国市場におけるソフトウェア人気を正確に予測できる彼らが「ほとんどの中国人民は、Windows XPからほかのOSに移行することはない」と考えていることを意味する。
電脳街のショップで必ず用意されている(というか業務用PCが兼用されている)店員用暇つぶしPCでも、ショップブランドPCの店頭サンプルでも、導入されているOSはWindows XPのままで、Windows 7はおろかWindows Vistaすらインストールされていない。PCメーカーが、Windows 7導入モデルのリリースに消極的なのも、納得がいく。
Windows 7よりWindows XPが人気の理由として、中国のPCユーザーは、そのほとんどがWindows XPからPCを使い始めたことと、Windows XPを“改良”した海賊版「Windows XP 番茄花園版」が、皮肉にも多くの中国PCユーザーに高く評価されていたことが考えられる(Windows XP番茄花園版については、中国最大手のWindows“作者”が逮捕されたを参照のこと)。作者が逮捕されてしまったため、海賊版Windows Vistaには番茄花園版が存在しない。オリジナルの正規版をそのまま使っている海賊版Windows Vistaは動作が重くて不評だったことから、Windows XPからPCを使い始め、番茄花園版の“正規版を超える使い勝手”を享受していた多くの中国人PCユーザーが、OSのバージョンアップに興味をなくしてしまっているという。


裕福な香港ではWindows 7の販売店がそこそこあって(写真=左)、正規版のWindows 7をインストールしたPCが多数販売されていた(写真=中央)。香港の電脳ビル入口はWindows 7のPOPであふれている(写真=右)現地を詳しく踏査するまで、筆者は「中国で数十種類のWindows 7 海賊版が発売された」というニュースを「中国人の多くがWindows 7の海賊版をインストールした」と解釈していた。しかし、実際には、Windows 7は、海賊版にしても正規版にしてもほとんど売られていなかった。Windows 7をインストールしたいPCユーザーというのは、たとえ海賊版であってもごく少数派というのが中国の正しいOS事情のようだ。
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