2010年を彩ったモバイルノートPCVAIO Z、MacBook Air、そして……(3/4 ページ)

» 2010年12月31日 08時30分 公開
[前橋豪,ITmedia]

「libretto W100」――25周年記念を飾る2画面タッチモデル

「libretto W100」

 2010年はタブレットにスマートフォンと、タッチインタフェースがより浸透した年といえるが、モバイルノートPCではタッチをキーワードにした一風変わった製品が登場した。世界初(2010年6月、東芝調べ)となる2画面タッチパネル搭載のWindowsミニノートPC「libretto W100」だ。2010年にノートPC事業25周年を迎えた東芝が、その記念モデルとして投入した個性豊かな4機種の中でも異彩を放っている。

 タッチパネル付きの7型ワイド液晶ディスプレイ(1024×768ドット)を2枚搭載し、ハードウェアのキーボードを省いたクラムシェル型のボディデザインは実にユニーク。1画面にソフトウェアキーボードを表示、2画面合計で10型ワイド画面相当の情報を一度に表示、縦方向に持ち替えて見開きの電子書籍リーダーのように表示など、これまでのミニノートPCの枠にとらわれないスタイルで利用できる。

 2画面タッチパネルで使いやすいように、ソフトウェアキーボードは複数のレイアウトが用意され、ユーザーインタフェースの改良なども行われており、東芝らしい心配りが好印象だ。

 ノートPCとしての設計も相当に変わっており、クラムシェルの天面側にマザーボードやストレージを内蔵し、CPUにミニノートPCで採用例が多いAtomではなく、2画面の描画や操作性に配慮してワンランク上の超低電圧版Pentium U5400(1.2GHz)を採用するなど、とにかく設計者のこだわりと遊び心に満ちた記念モデルらしい1台だ。バッテリー駆動時間は短いが、ボディが約699グラムと非常に軽いため、持ち運びはしやすい。

 今回取り上げたモバイルノートPCの中では異色の製品で、正直にいって、実用性より趣味性が高いガジェットといえる。しかし、ノートPCがさらに進化するためには今までとまったく違うアプローチもあるべきで、画一的な仕様の製品が多い中、ゼロから新しいモバイルマシンを作り上げた姿勢は尊い。持っていると、話のネタになること間違いなしの希少な1台でもある。

 なお、東芝は25周年記念モデルの発表会において、スレートタイプのデバイスを開発していることを明らかにした。近い将来、今回培ったノウハウを生かしたタブレットの新機種、そしてlibretto W100自体の後継機が出ることを期待したい。


Netbook/CULVノートは定着し、進化していく

 冒頭でNetbookやCULVノートのトレンドは終わったかのような書き方をしたが、2010年はそれぞれがノートPCの1ジャンルとして定着し、さらなる進化を遂げていることも触れておきたい。

 Netbookでは、インテルが2009年12月にリリースした新世代のNetbook向けプラットフォーム(開発コード名:Pine Trail-M)を採用した製品が続々と登場。CPUのAtomと合わせて、従来は3チップ必要だったプラットフォームを2チップで実現したことにより、実装面積と消費電力の削減、性能の微増を果たした。さらに、今年後半には待望のデュアルコア化を果たしたAtom N550(1.5GHz)の搭載機がリリースされ、同時にCPU以外の基本スペックも少しずつ上がったことで、性能面や操作性で妥協しなくても済むようなNetbookが増えている。

 例えば、日本ヒューレット・パッカードの「HP Mini 210-2000」などは、こうした新世代の高性能Netbookとして完成度が高い。また、ASUSの「Eee PC VX6」のように、Netbookの枠組みを超えてハイスペックや高級路線を追求し始めたものも現れ、かつての「安いけどそれなり」という評価だったNetbookはローエンドからハイエンドまで多様化が進んでいる。

「HP Mini 210-2000」
「Eee PC VX6」

 CULVノートでは、プラットフォームがCore 2世代(開発コード名:Montevina)からCore i世代(開発コード名:Calpella)へ移行したのがトピックとなる。メモリコントローラをCPUに統合しており、グラフィックス機能をチップセット内蔵のIntel GMA 4500MHDなどからCPU内蔵のIntel HD Graphicsに世代交代することで、基本性能が底上げされた。

 2010年に登場した低価格モバイルノートPCに見られる超低電圧版のCore i3-330UM(1.2GHz)/380UM(1.33GHz)をはじめ、Pentium U5400(1.2GHz)やCeleron U3400(1.06GHz)といったCPUも、こうしたモバイル向けのCore iシリーズ(開発コードネーム:Arrandale)をベースにしたものだ。

 このクラスで目立った機種としては、Core i3-380UM(1.33GHz)やPentium U5400(1.2GHz)を採用したレノボの「ThinkPad Edge 11"」、Celeron U3400(1.06GHz)を搭載したASUSの「UL20FT」やAcerの「Aspire one 753(AO753-N32C)」などが挙げられる。国内のPCメーカーも同じようなスペックの新機種を投入しているが、付属ソフトなども含めたパッケージではどうしても価格面で不利になり、このクラスのうま味であるコストパフォーマンスの高さという点では飛び抜けた製品が見当たらない。

「ThinkPad Edge 11"」
「UL20FT」
「Aspire one 753」

 なお、これらの対抗馬としてAMDのプラットフォームを採用した機種も数は多くないが、存在感を示した。特にAMDが2010年5月にリリースした超薄型ノートPC向けプラットフォーム(開発コード名:Nile)を採用した、デルの「Inspiron M101z」やレノボの「ThinkPad Edge 13"」、日本HPの「Pavilion Notebook PC dm1a 冬モデル」(パフォーマンスSSDモデル)などは注目に値する。

 これらはデュアルコアCPUのAthlon II Neo K325(1.3GHz)とチップセット内蔵GPUのATI Mobility Radeon HD 4200番台を備えており、総合的にNetbookを上回るパフォーマンスを確保した上で、CULVクラスのインテルプラットフォームに比べてグラフィックス性能で優位に立ち、価格はCULVノートの低価格モデル並とあって、コストパフォーマンスの高いモバイルノートPCの新たな選択肢となっている。

「Inspiron M101z」
「ThinkPad Edge 13"」
「Pavilion Notebook PC dm1a 冬モデル」

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