年の瀬も押し詰まった2009年の12月21日、インテルは次世代のNetbook/Nettopプラットフォームとなる新しいAtomを発表した。クリスマス直前のこの時期に、新しい製品を発表するのは異例だが、2010年早々のCESにおいてCore iプロセッサの新製品発表を控えており、集中するのを避けたかったのだろう。
今回発表されたAtomプロセッサは冒頭でも記した通り、NetbookとNettop向けのプラットフォームで、Netbook向けがPine Trail-M、Nettop向けがPine Trail-Dというコード名で呼ばれていたものだ。前者が採用するCPUがAtom N450(開発コード名Pineview-M)で、後者のCPUがAtom D410(同Pineview-D/シングルコア)とAtom D510(同Pineview-D/デュアルコア)である。それぞれ従来のAtom NシリーズおよびAtom 230/330(同Diamondville)を置き換える。スペックなどについては下の表にまとめておいた。ちなみに、Moorestownという開発コード名で呼ばれてきた、Atom Zシリーズの後継となるMID向けの製品(CPUがLincroft、チップセットがLangwell)は、本稿執筆時点ではまだ発表されていない。
新旧Atomの比較 | ||||||
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CPU | Atom D410 | Atom D510 | Atom N450 | Atom 230 | Atom 330 | Atom N280 |
開発コード名 | Pineview-D | Pineview-D | Pineview-M | Diamondville | Diamondville | Diamondville |
ターゲット | Nettop | Nettop | Netbook | Nettop | Nettop | Netbook |
コア数 | シングル | デュアル | シングル | シングル | デュアル | シングル |
動作クロック | 1.66GHz | 1.66GHz | 1.66GHz | 1.60GHz | 1.66GHz | 1.66GHz |
2次キャッシュ | 512KB | 1MB | 512KB | 512KB | 1MB | 512KB |
Hyper-Threading | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
SpeedStep | − | − | ○ | − | − | ○ |
サポートメモリ | DDR2-800/667 | DDR2-800/667 | DDR2-667 | − | − | − |
内蔵グラフィックス | GMA 3150 | GMA 3150 | GMA 3150 | − | − | − |
グラフィックスコアクロック | 400MHz | 400MHz | 200MHz | − | − | − |
内蔵HDMIサポート | − | − | − | − | − | − |
TDP(CPU単体) | 10ワット | 13ワット | 5.5ワット | 4ワット | 8ワット | 2.5ワット |
TDP(チップセットを含む) | 12ワット | 15ワット | 7ワット | 29.5ワット | 33.5ワット | 11.8ワット |
Pineviewこと新Atomの最大の特徴は、従来チップセットのノースブリッジが提供してきた機能を、すべてCPUに取り込んだことだ。このため、従来は2チップ必要だったチップセットが1チップ化され、Intel NM10 Express(開発コード名Tiger Point)だけで済むようになった。CPUと合わせて、従来は3チップ必要だったプラットフォームが、2チップで構成可能になったわけで、低コスト、低消費電力、パッケージ面積(実装面積)の縮小、さらには性能向上に貢献すると思われる。
中でも特に顕著なのがパッケージ面積の縮小と消費電力の削減で、インテルは前者についてNetbookで60%、Nettopで70%の削減が実現されたとしている。消費電力についても、チップセットを含めたプラットフォームレベルでの消費電力が大きく削減されたとする。単にチップカウントが減っただけでなく、発熱源であるグラフィックスエンジンが、CPUと同じ最新の製造プロセスである45ナノメートルプロセスルールとHigh-kメタルゲートを利用することになったのが大きく寄与しているのだろう。
そのグラフィックス機能だが、CPUと同じダイに統合されており、N450およびD410はシングルダイのCPUとなっている。デュアルコアのD510も画像を見る限り、N450と同じシングルダイを採用している。Pentium D(Smithfield)風にFSBで2つのコアを連結したシングルダイ/デュアルコアCPUである可能性が高い。
インテルはPineviewが内蔵するグラフィックス機能をIntel GMA 3150と呼んでおり、3Dグラフィックスに関してはDirectX 9.0互換、Shader Model 2.0をサポートとしている。動画エンジンについては、MPEG-2のハードウェアアクセラレーションが可能だとする。インテルの過去のチップセット内蔵グラフィックスを振り返ると、Intel G33/G31チップセットの内蔵グラフィックス機能がGMA 3100と呼ばれており、機能的にもほぼ合致する。この改良版だと見るのが順当で、Atom ZシリーズのチップセットであるUS15W(Poulsbo)が内蔵するGMA 500とは全く別の系統だと考えられる(ちなみにGM965の内蔵グラフィックスはGMA X3100で、DirextX 10.0互換/Shader Model 4.0サポートである)。
ただし、ディスプレイ出力はアナログVGAと内部接続用のLVDSのみがサポートされており、HDCPを含むデジタル出力(HDMIやDisplayPort)はサポートされない。NM10が内蔵するイーサネットコントローラが、100BASE-TX/10BASE-Tをサポートしたもの(ギガビットに非対応)であることと合わせ、意図的にスペックを抑えている印象を受ける。
どうしてもスペックを抑えている印象が拭えない最大の理由は、上の表に示したデータにある。CPUの世代が新しくなったにもかかわらず、動作クロック、コア数、2次キャッシュ容量といったCPUの主要なスペックがほとんど上昇していない。これでは、大幅な性能向上は期待できないように思われる。
インテルが発表したファクトシート(発表時に製品の要点をまとめたもの)を見ても、性能向上につながりそうな項目はデータプリフェッチの改善などマイナーなものしか見つからない。後は、メモリコントローラが統合されたことによるアクセスレイテンシの低減や、統合されたグラフィックスの性能に期待する、という感じだ。
そこでMSIの協力により、最終製品直前のPine Trail-M搭載機を借用し、Diamondvilleを搭載したNetbookと性能を比較してみた。Netbookゆえ、グラフィックス関連のテストには画面解像度が不足(1024×600ドット)するため、バッテリー駆動時間を計測するBBench以外は、すべて外付けディスプレイを接続し、画面解像度を1024×768ドットに設定して行っている。また、プラットフォーム間の比較ということで、HDDも同じ160Gバイトのもの(ST9160310AS)を使用し、OSにWindows 7 Starterをインストールしてテストした。PineviewのグラフィックスはAeroをサポートしているが、実際の製品構成としてはWindows 7 Starterが主力になると考えられるからだ。なお、今回比較したモデルは実際の製品と異なるスペックなので注意してほしい。
テストに使用したNetbookの主なスペック | ||
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製品名 | Wind Netbook U100改 | Wind U135改 |
CPU | Atom N270(1.6GHz) | Atom N450(1.66GHz) |
チップセット | Intel 945GSE+ICH7M | Intel NM10 Express |
メモリー | DDR2 1GB | |
GPU | Intel GMA 950 | Intel GMA 3150 |
液晶 | 10インチ | |
解像度 | 1024×600ドット | |
HDD | 2.5インチ160GB | |
OS | Windows 7 Starter | |
ボディサイズ | 260×180×19〜31.5ミリ | |
重量 | 1.16キロ | 1.2キロ |
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