ファイルサーバの容量が増加すると、バックアップの方法を考える必要が出てくる。バックアップに一晩以上かかるようになると日次でのバックアップは難しい。そうするとクラッシュ時のリカバリポイントが数日前から1週間前となり、リストア時のデータの損失が無視できなくなってしまう。そのため、なるべく短時間で完了する方法を考えなければならない。TurboNASでは複数のバックアップが可能だが、ここでは3つを紹介しよう。
まず1つ目は、TurboNAS内に2つのボリュームを作り、片方から他方へバックアップを取る方法。デメリットとして、全体容量に対する利用効率が落ちること、耐障害性としてはTurboNAS自体がシングルポイントとなることが挙げられるが、最初の導入時の暫定運用としては十分選択肢となりうる。
2つ目はクラウドストレージサービス「AmazonS3」をバックアップとして利用すること。AmazonS3の利用はレイテンシの問題で常用することにためらう向きもあるかもしれないが、バックアップとしては十分だ。ただし、ストレージ料金が米ドルで0.20/バイト(つまり1Tバイトで200米ドル≒18000円)、これに転送料もかかってくるため、利用容量によってはコスト高となる。また、いざというときのリストアでは転送料も馬鹿にならない、ということも考慮すべきだろう。ほかにも「ElephantDrive」というサービスが利用可能だが、こちらは1Tバイトあたり415米ドル/月と、さらに高額になっている。
3つ目はもう1台TurboNASを導入し、TurboNAS間でリモートレプリケーションを行う方法だ。TurboNASのリモートレプリケーションはSSHを使ったrsyncが利用でき、かつ、接続元のIPアドレスを制限することができるため、インターネット経由でのリモートデュプリケーションも可能だ。バックアップ側のTurboNASを物理的に離れた拠点に設置すればディザスタリカバリにもなりうる。
前述の1台でのバックアップでスタートした場合も、予算が確保できればTurboNASをもう1セット導入し、リモートレプリケーション機能を使ってバックアップすればよい。その際にマイグレーション機能を用いればバックアップとして利用していたボリュームをそのままバックアップ側に移行することができる。
2台のTurboNASを導入すれば、それがそのままハードウェアの冗長化にもなる。万が一本番側のTurboNASが故障した場合は、バックアップ側のTurboNASのホスト名を書き換えるだけで本番運用が行える。
今後TurboNASに搭載したHDDをより大容量のものに交換する場合も移行は簡単だ。TurboNASはRAID構成時にHDDが同型、同容量であることを問わない。そのため、故障時にもそのときに最も入手性のよいものを購入して、交換すればよい。同社WebサイトにはHDDの互換性リストが掲載されている。冗長性のあるRAIDで構成すればHDDを1台ずつ大容量のものに交換していき、最後にボリューム容量を増加させればよい。もちろんその間もTurboNASは利用可能だ。
より高いパフォーマンスを求めてTurboNAS自身を買い換える場合は、HDDをそのまま移し替えればよい。ファームウェアのアップデートだけで移行が完了する。
企業での利用とはいえ、オフィスビルでの電源管理はデータセンタに比較すると品質が劣る。法定点検や週末の工事などで計画停電となることもあるだろうし、週末に瞬停となることもあるかもしれない。安定した運用を考えるとUPSを導入したいところだ。この点でTurboNASシリーズはAPC製品をはじめとする各種UPSに対応しており、電力供給が途絶えたときの自動シャットダウンが行える。
TurboNASはもともと消費電力の小さなモデルが多く、今回取り上げた「TS-419U+」のような、400番台の末尾にUがつくラックマウントタイプは、HDD4台搭載時でもわずか28ワットに抑えられている。とはいうものの、週末など完全に無人となることが確実なオフィスであれば、TurboNASのスケジュール機能を利用して週末シャットダウンさせておき、さらに消費電力を抑えることも可能だ。
またそれとは逆に、無人であるはずのオフィスのセキュリティ保全のため、ネットワークカメラを接続し、監視ステーションとして利用することも可能だ。モーションセンサを搭載したネットワークカメラであれば動きがあったときのみ録画する、といった使い方も考えられる。ネットワークカメラは必ずしも人を監視するためだけではない。パン・チルト機能がサポートされている場合は、Webブラウザからカメラの撮影範囲を操作することができる。サーバルーム自身を監視し、サーバの警告ランプなどをチェックするという使い方も有効だ。
QNAP製品は旧モデルから新モデルまで幅広くファームウェアのアップデート対応を行っていることも特徴の1つだ。ちょうど今回の原稿執筆中に新ファームウェア3.4.0が公開されているので、その新機能についてもいくつか紹介しておこう。
RAID 10はRAID 1(ミラーリング)で冗長化したボリュームをRAID 0で並列化させたものだ。最小構成で4台のHDDが必要なこと、有効容量が全体容量の50%であること、1台のディスククラッシュは許容できるが、2台同時クラッシュでは許容できない場合もある(RAID 1ボリュームを構成しているドライブの両方がクラッシュした場合)など、用途を選ぶ規格ではあるものの、アルゴリズムがシンプルであるために冗長化されていながらも高速であるというメリットがある。また、リビルド時の負荷もRAID 5やRAID 6に比べて軽い。
今までは共有フォルダ単位でしか設定できなかったユーザのアクセス権限が、サブフォルダ単位でも設定できるようになった。
Windowsファイル共有をネットワーク到達可能なすべてのクライアントに開放するのではなく、共有フォルダごとにIPアドレス、ドメインで制限することができるようになった。
また、TS-239Pro、239ProII、239ProII+、259Pro、259Pro+、439Pro、439ProII、439ProII+、439U、459Pro、459Pro+、459U、459U-RP、459USP+、509Pro、559Pro、559Pro+、639Pro、659Pro、659Pro+、809Pro、809U-RP、859Pro、859Pro+、859U-RP、859U-RP+ではこれに加え、以下の機能が追加されている。
今までリモートレプリケーションは、即時あるいは定期的な同期をサポートしていたが、新たに変更があったときに即時にバックアップが行われるリアルタイムリモートレプリケーションに対応した。
802.1Qをサポート、VLANのタギングが可能になり、より広範なネットワーク構成に対応できるようになった。
Windowsサーバのリプレイスとして考えた場合、TurboNASは決して機能でまさるわけではない。当然ながら汎用サーバOSであるWindowsサーバには、さまざまな対応アプリケーションがあり、それらをインストールすることでいくらでも多機能化することができるからだ。しかし、TurboNASは導入にあたって必要になりそうな機能が簡単な設定で導入できるよう、あらかじめ用意されている。バックアップにしても、ほとんど難しいことを考えることなく1つ2つの設定で運用できる。
ストレージに特化しているからこそ実現できる運用保守の容易さ。これもTurboNAS導入の理由になるはずだ。
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