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意外に知らない「モバイルプリンタ」という選択肢SOHO/中小企業に効く「モバイルプリンタ」の選び方(第1回)(2/2 ページ)

» 2015年06月22日 17時30分 公開
[山口真弘ITmedia]
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モバイルプリンタならではの選び方のポイントとは?

 それでは具体的に、製品選びのポイントについて見ていこう。一般的にモバイルプリンタと称されている製品は、感熱タイプのような特殊な製品を除けば、どれも最大サイズはA4、印刷は片面というのが共通の仕様だ。ここではモバイルプリンタならではのチェックポイントを順に見ていくことにしよう。

ボディのコンパクトさ

 本体を持ち歩くことからも、ボディがコンパクトであることは何よりも重要だ。バッグに収納する場合、その親機となるPCもしくはタブレットなどとまとめて収納することになるため、「フットプリントは小さいが厚みがある」よりは、「フットプリントは広くても薄い」ほうが、バッグ内での収まりがよくなる。

 ただし設計する側から見ると、前者のほうが構造的には作りやすいので、どこで折り合いをつけるかは重要なポイントだ。例えば日本ヒューレット・パッカード(HP)の製品は、ボディサイズが他社より大きめだが、据え置き型と共通のインクカートリッジを採用しているため、入手性が高く、また消耗品を共用できるメリットがある。

 なお前述のように、外出先に持ち歩くのではなく、オフィスで必要なときにだけ引き出しの中から取り出すという使い方や、イベント会場や仮設事務所への設置など、いったん設置したら一定期間は動かさないという使い方であれば、ボディがコンパクトであることの優先順位は必ずしも高くない。

 また、持ち歩くと言っても、クルマに積んで移動するようなケースでは、バッグに収まりやすいサイズを追求しても意味がない。この辺りは使い方も考慮し、優先順位を決めたほうがよいだろう。

モバイルプリンタ モバイルプリンタは、携帯利用に限らず、オフィスで必要なときにだけ引き出しの中から取り出して使うといった省スペースのニーズにも対応する。写真はエプソンのPX-S05W

ACアダプタ駆動か、それともバッテリー駆動か

 モバイルプリンタを自社の会議室や取引先の商談スペースで使う場合、大抵はコンセントが最寄りにあるはずなので、ACアダプタで駆動できれば、バッテリーは必ずしも必要ない。据え置きプリンタの代替として使うのならなおさらだ。一方、喫茶店などの商用スペースや屋外で使う場合は、バッテリーは必須で、かつなるべく大容量が求められる。

 こうしたことから、現在市販されているモバイルプリンタは、ACアダプタ駆動でバッテリーはオプションという製品と、ACアダプタおよびバッテリーに両対応した製品の2種類に分かれる。バッテリーが内蔵されている後者のほうがかさばらず便利に思えるが、オプションでバッテリーを後付できる製品はそのぶん容量が大きく長時間駆動に対応していることも多く、一概にどちらが有利とは決めつけられない。ACアダプタのコンパクトさも、チェックすべきポイントになるだろう。

 このほか、エプソン「PX-S05」シリーズのように、スマホやタブレットなどの充電に用いるモバイルバッテリーをそのまま外部電源として使えたり、USB給電に対応する製品もある。標準のバッテリーのみで長時間駆動できるのが理想だが、いざというときにこうした代替手段が用意されているのは、ユーザーから見ても安心だろう。

モバイルプリンタ エプソンのPX-S05シリーズは、PCからのUSBバスパワー充電(プリンタ本体が電源オフ/スリープ時のみ対応)、および市販のモバイルバッテリーを用いた充電にも対応する(写真はPX-S05B)

インクおよびインクカートリッジ

 モバイルプリンタの印字方式はインクジェットだが、ビジネスユースで利用するのであれば、耐水性に優れ、マーカーなどで線を引いた際もにじみにくい顔料インクの使用が望ましい。逆に写真を印刷する機会が多く、豊かな階調表現を望むのであれば、染料インクを利用した製品のほうが有利だろう。もっとも、染料4色+顔料というハイブリッドな製品もあるので、印字サンプルなども見て判断したいところだ。

 もう1つ注意したいのは、インクカートリッジの容量と入手性についてだ。もともとモバイルプリンタに内蔵されるカートリッジの容量はお世辞にも多いとは言えず、ヘビーな使い方をしていると交換頻度も高くなるが、専用品ゆえインクジェットカートリッジの入手性は必ずしも高くない。つまり外出先でインクカートリッジが切れて量販店に駆け込んでも、取り扱っていない可能性もあるわけだ。

 その点、キヤノン製品のように、黒インクの使用量を抑えられる「ブラックインク節約モード」や、黒インクが切れてもカラーインクで代替できる「ブラック合成モード」を備えていれば、いざというときも印刷ができずに慌てなくて済む。また日本HPの製品のように、据え置き型プリンタと共通のカートリッジを採用していれば、容量が大きいことに加え、オフィスで同じカートリッジに対応するプリンタを使うことで、消耗品を統一できる。ボディサイズが大きいので可搬性の点ではマイナスだが、使い方によっては検討の余地はあるだろう。

モバイルプリンタ 日本HPのモバイル複合機「HP Officejet 150 Mobile AiO」が採用するHP 135(カラー)/HP 129のインクカートリッジは、同社の据え置き型プリンタでも使われているものだ。対応インクが同じ据え置き型プリンタを使っていれば、インクカートリッジを共通化することもできる

接続方式

 従来はワイヤレスでの接続といえばIrDA(赤外線)、およびBluetoothが一般的だったが、最近の製品はスマホやタブレットからの利用も見越して、Wi-Fi対応が標準となっている。言い換えれば、Wi-Fiに対応しているか否かで、製品の世代を見分けることができる。

 Wi-Fiに対応していれば、ケーブルをつなぐ手間がかからないことに加えて、複数のPCとの同時接続もしくは切り替えも容易なので、部署単位で1台のモバイルプリンタを利用する場合に有利だ。またスマホやタブレットではそもそも有線接続という選択肢がないだけに、今後これらのデバイスがさらに普及することを考えると、よほど利用シチュエーションが限られていなければ、Wi-Fi対応のモデルを選ぶことが望ましい。

 なお製品によっては、外付けのワイヤレスユニットがオプションで用意されている場合もあるほか、市販の無線プリントサーバなどを接続してワイヤレスで印刷する方法もあるが、内蔵タイプに比べて可搬性は低下するほか、組み合わせによっては双方向通信に対応せず、PC側からインク残量などの確認ができない場合があるので注意したい。

モバイルプリンタ Wi-Fi対応モデルならば、外出先でスマホやタブレットから手軽にワイヤレスプリントが行える

印刷速度

 印刷速度が重要視されるのはどのタイプのプリンタでも同様だが、モバイルプリンタにおいては、客先での商談中や、貸会議室での出力など、時間的に制約がある環境で印刷する機会が多いと考えられる。印刷時間がかかるということはそれだけ相手を待たせることにつながるので、印刷スピードはより重要視されると言っていいだろう。

 もっとも、モバイルプリンタの印刷速度は、カラー印刷だと3〜6枚/分という狭い範囲で各製品が競っているのが現状で、製品ごとの差はあるものの、据え置き型のプリンタに比べて決して高速とは言えず、製品選びの決定打にはなりにくい。モノクロ印刷に切り替えてスピードアップするというのも、運用上の工夫としてはありだろう。

同時セット可能枚数

 据え置き型のプリンタであれば、同時にセットできる枚数は多ければ多いほうが、用紙を継ぎ足す回数が少なくなるので効率的だが、ことモバイルプリンタに関しては、大抵は少部数印刷と考えられるため、優先順位は必ずしも高くない。どの製品も最低20枚程度はセットできるので、間違っても1枚ずつ継ぎ足さなくてはいけないわけではなく、据え置きプリンタの代替として使う場合を除けば、製品選びの決め手にはなりにくいだろう。

モバイルプリンタ エプソンのPX-S05BにA4普通紙をセットした状態。給紙容量は普通紙で最大20枚だ

ドライバ内蔵

 モバイルプリンタは、これまで接続したことがないPCと組み合わせて印刷する場合も多い。こうした際にドライバがなく接続できないのは困りものだ。エプソンPX-S05のように、本体内にドライバを内蔵した製品であれば、客先に持ち込んだPCがうまく動かずほかのPCを借用することになっても、ドライバを探す必要もなく、接続するだけでインストールが行える。やや特殊な機能だが、こうした使い方が多ければ、あらかじめこうした製品をチョイスしておくという考え方もあるだろう。


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