2011年は「大変化の年」!? 携帯3キャリアのスマートフォン戦略を読み解く(前編):神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2010年11月17日 11時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
前のページへ 1|2       

ドコモ スマートフォン戦略の課題

 しかし、こうしたドコモのスマートフォン戦略にも、大きな課題が2つある。

 1つは「iモードの資産がうまく生かされていない」ことだ。ドコモの最大の魅力は、過去10年で培ったiモード関連のサービスと豊富なコンテンツ群であるが、それがスマートフォンに継承される道筋がいまだ見えないのだ。

 特に残念だったのが、“ドコモマーケットでのアプリ購入にドコモポイントを利用する”という画期的な仕組みが、フィーチャーフォン向けのiアプリにしか提供されなかったことである。スマートフォン向けのドコモマーケットでも同様の機能が導入されれば、ドコモのAndroidコンテンツ市場は一気に活性化し、国内のコンテンツプロバイダーにとってiPhone向けアプリ以上に魅力的な市場になったことは間違いない。これが実現すれば、ドコモがAndroidアプリ市場をリードし、育成することも考えられたのだ。今回スマートフォンとフィーチャーフォンでドコモマーケットの対応が分裂してしまったのは、ドコモが縦割り組織でフィーチャーフォンとスマートフォンの事業に取り組んでいるからと聞く。しかし、そういった“お家事情”でエコシステムの発展を促せないというのは、まったくもって愚かなことと言えないだろうか。

 こうした愚かさはドコモマーケットだけではない。おサイフケータイを見ても、スマートフォン向けのサービス開拓が遅すぎる。JR東日本の「モバイルSuica」は鉄道会社のサービスなので実現に時間がかかるのはしかたがないにしても、ドコモ自身が推進しているはずの「iD」のスマートフォン向けアプリが、端末発売時に用意されておらず、他社のサービスよりも遅れるというのはなぜなのだろうか。かつてドコモはおサイフケータイの普及とサービス拡大を強力に推進したが、今回のスマートフォン向けサービスの拡大においては、残念ながら当時の勢いが感じられなかった。Androidの次期バージョン、GingerbreadがNFCを正式にサポートするなど、今後、スマートフォンにもNFCが搭載されることは明かで、「非接触ICの活用」は重要なテーマになる。だからこそ、その第1弾として既存のおサイフケータイサービスのAndroid移行について、ドコモはもっとリーダーシップを発揮してほしい。

Photo Evernoteとの提携を発表したドコモ。しかしそこにはドコモならではの独自性というものはない

 そして、もう1つの課題が、スマートフォンにおける“ドコモの独自性”がうまく打ち出し切れていないことだ。ドコモは今回、Evernoteと提携してドコモ向けスマートフォンにアプリのプリインストールと、プレミアムサービスを1年間無償提供をすることを独自性とした。しかし、Evernote自体はiPhoneなど他キャリアの端末でも利用できるものであり、ドコモのインフラやネットワークサービスとの特別な連携が図られるわけでもない。KDDIとSkypeが提携した「Skype au」では、KDDI側がauのネットワークをSkype向けに連携させることで、他キャリアのスマートフォンでSkypeを使うのとはまったく別の“品質の高さ”と“使いやすさ”を実現して差別化を図っている。それと比べて、ドコモとEvernoteの提携はサービス連携のレベルが浅いのだ。

 スマートフォン時代にはオープンなWebサービスとの連携は避けられない。そのため、そこでの提携においてどのようにして“キャリアならではの付加価値”を作るかが重要になる。専用アプリや金銭的なプレミアムでお得感を出すというのも1つの方法ではあるが、それだけではキャリアの独自性としては少し弱いだろう。ドコモがEvernoteと組むのならば、iコンシェルやiチャネルなどドコモ自身のサービスをスマートフォンに移植し、それと連携させるところまで踏み込む必要があるだろう。

ドコモに見える「スマートフォン移行への迷い」

 今回のラインアップ全体を見渡して、筆者が感じたのはドコモの「迷い」である。スマートフォンの重要性と将来性は理解しながらも、旧来のフィーチャーフォンとのバランスを過度に配慮し、積極的なスマートフォン移行の施策が取れない。その最たる例が、iモードやドコモポイントの中途半端な扱いに現れている。

 むろん、業界最大手でシェアも大きいドコモにとって、スマートフォンのようにまったく新しい分野に一気に舵を切るのが難しいことは理解できる。他社の出方をうかがい、市場の趨勢が決まってから動き出す「後手」の方がリスクが少ないと判断するのは自然だ。しかし、iPhoneの急速な国内市場への浸透を見れば分かるとおり、すでにケータイでのモバイルインターネットに慣れている日本は、スマートフォンへの移行が一気に進む可能性が高い。こうした急速な変化の時代において、状況の変化に応じて動く後手の戦略はかえってリスクを増すことになる。

 今のドコモはインフラの総合力で他キャリアを圧倒しており、スマートフォン上で新たなサービスを試行錯誤するのに十分なリソースを持っている。今あるドコモの“スマートフォン移行に対する迷い”が、いつたち消えるのか。引き続き、注目したい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月29日 更新
  1. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  2. 20〜30代限定の「ダイナースクラブ ゴールド」登場 スタバやスマホで10倍還元、「食べログプレミアム」が実質無料 (2026年10月26日)
  3. 楽天モバイル、1100万回線突破の背景に「通信品質向上」とOpensignalが分析 下り速度とカバレッジの課題は残る (2026年10月29日)
  4. 個人情報の流出にユーザーはどう備える? 乗っ取りやクレカ不正利用を防ぐ「3段階」の対策ガイド (2026年10月12日)
  5. 「iPhone Duo」は買いか見送りか――賛否 そんな中、登場した「iPad mini」は誰向け? (2026年10月27日)
  6. バルミューダが初のコンテンツ事業「パーソナルAIラジオ」発表 “自分だけの番組”を毎朝10分配信する狙いとは (2026年10月27日)
  7. auが通信品質10部門で単独首位、追うソフトバンクは「小差」 5G SA利用率3.8%の課題も Opensignal調査 (2026年10月28日)
  8. 「Google Fitbit Edge」先行レビュー:画面付き、Google マップ対応の実力は? Fitbit Airとの1万円差を検証する (2026年10月27日)
  9. auショップの問い合わせ半減、通信品質の最適化は2年から1カ月へ短縮 KDDIが示す「AI前提社会」の道筋 (2026年10月27日)
  10. ソニーが6型の空間再現ディスプレイ「ELF-MN1」発売 デジタルフィギュアなど立体映像を裸眼で楽しめる (2026年10月28日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー