G9のような、かっちりしたハイセンスな端末をラインアップする一方で、「ケータイをアート作品に一変させる試み」(高橋氏)として登場するのが「Art Editions」である。第1弾は世界的なアーティスト、草間彌生氏による「Art Editions YAYOI KUSAMA」。すでに同氏が作品として発表したものをモチーフに、携帯電話の形にしたもので、エディションナンバーと草間氏直筆のサインも入る。
販売台数や販売方法は未定だが、アート作品なので、数はかなり少なく、通常のauショップなどに並ぶことはない。価格は通常の携帯電話では考えられないほど高価になるとのこと。
比較的派手で特徴的なG9やArt Editionsのようなモデルがある一方で、2009年春モデルでは「NSシリーズ」として紹介された、シンプルかつ飽きの来ない、長く使える心地よい端末という位置づけのモデルもラインアップされるのがiidaの特徴だ。そのモデルとは、かつてau design projectの中心人物だった小牟田啓博氏のデザイン事務所、Kom&Co.がプロデュースし、プロダクトデザイナーの迎義孝氏がデザインした「misora」だ。misoraとは、「水」と「空」を掛け合わせた造語だ。
ボディカラーは生活の中の何気ない風景をモチーフにしたという3色を用意。「雲の重なりが奏でる自然なグラデーションを表現したwhite、夕日に染まる空の絶妙なニュアンスを表現したpink、月明かりに照らされた夜の海をイメージしたblack」(高橋氏)で、手が優しさを感じる形、人が心地よいと感じるカラーを追求したという。
iidaの個々の製品は、ライフスタイルまで演出することを目的とするため、さまざまな周辺機器やオプション機器が1つの世界としてデザインされている。現状は、端末とそれを取り巻く機器のレベルにとどまっているが、将来はauが強い音楽やスポーツといったジャンルの製品などをiidaブランドで出したりすることも検討されているようだ。また内蔵コンテンツだけでなく、au oneポータルをiida向けにカスタマイズするといったことも考えられる。
「携帯とまったく違うところまで広げることはないと思うが、デザイナーさんに、プロダクトだけにとどまらずトータルの演出をしていただきたいと思っているので、“周辺機器”の範囲を定義することはあえてしない。iidaに関わっているスタッフは、『iidaショップを出すのが夢』だといっている」(高橋氏)
こうした思いから生まれたのが、海山俊亮氏がデザインした、ツタのような草をイメージさせるACアダプタ「MIDORI」。「植物が土から水を吸うようにケータイを充電する。無機質だったケータイの充電器に新しいコンセプトを提示する」と高橋氏が話すように、今までありそうでなかった製品だ。
MIDORIのほかに、自然界の色をテーマにした「AO」(空)、「SHIRO」(雲)、「MOMO」(花)、「CHA」(土)も用意。いずれも自然に溶け込むACアダプタを目指したという。
これまでau design projectの成果として発表されてきた端末のコンセプトデザインは、iidaが引き継ぐ。「ガッキ ト ケータイ」や「PLY」「SOLAR PHONE CONCEPT」は、iidaのFuture Conceptsとして、今後も製品化への検討を進める。
まだ製品として開発するかどうかは決めていないが、外部のプロダクトデザイナーから新たな提案も受け付けているという。すでに8つの提案が来ており、これらも、今後製品化するかどうかも含めて検討していく。
またiida自体のコンセプトモデルとして、新たに周辺機器のコンセプトデザインも発表した。グラフィックが描かれたディスプレイ保護シートや、水滴のような形の滑り止めシール、ケーブルがトレイになるACアダプタ、デザインされた美しいACアダプタ、3人で聞けるイヤフォンなど、計7種のFuture Conceptsを提示。さまざまなデザイナーが考えた、ライフスタイルをデザインするアクセサリー群が、iidaブランドから登場するかもしれない。
2009年春モデルの発表会で「2009年はauらしさを回復する1年にする」と語った小野寺氏。同氏は、iidaについて「かなり期待している。新しい試みは、常にやっていくことが重要だ。iidaも革新性を追求してやっていきたい」と大きな期待を寄せた。
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