屋内や地下など、通常の基地局ではなかなかカバーしきれないエリアの解消に期待されているフェムトセル。KDDIではLTEのエリア展開でフェムトセルを活用する方針だが、現状の通信方式でも通信環境の改善を目的に2009年度末に導入する。
湯本氏は「自宅や職場などの室内環境で携帯端末の通信環境を良くする手段には、無線LANとフェムトセルがある。無線LANでは専用の移動機(E05SHやE02SA、E30HTなど)が必要なので法人向けだ。通常の移動機向けでマンションや住宅にはフェムトセルを利用する。KDDIの場合、1XとEV-DO Rev.0のデュアルモードで提供したい」と解説した。
その一方で湯本氏は、「フェムトセルがあれば不感地帯がなくなるような声もあるが、フェムトセルは万能ではない」と指摘する。フェムトセルが送受信する信号は、ユーザーが用意するADSLやFTTHなどの固定ブロードバンド回線を通じてキャリアのコアネットワークとつながる。そのため、さまざまな固定回線でも品質を保つためのQoSが必要になる。また、既存基地局がある程度カバーしているエリアや、複数の基地局の中間にあるエリアでフェムトセルを利用する場合など、どういう条件でフェムトセルを優先させるのかが問題になるという。
「まったくカバーされていないエリアで使うならともかく、既存エリアのなかでフェムトセルを使うには、何をトリガーに切り替えるのか検討中だ。フェムトセル専用のキャリア(伝送波)を用意して、干渉を防ぐことを考えている。いずれにせよ、2009年度中後半には、フェムトセルのユーザートライアルに持ち込みたい」(湯本氏)
LTEやIMT-Advancedの導入でますます高速化、大容量化が進むモバイルインターネットの世界。PCと同じようなリッチコンテンツをケータイでも楽しめるようになるのは間違いないが、KDDIではその先を見越したサービス展開を計画している。
湯本氏は通信環境の充実によりユビキタス社会が実現しつつあることを挙げ、「ユーザーが必要とする情報を自ら選んで入手するPULL型配信が充実してきた。今後は、ユーザー周辺の情報をPUSH型配信で知らせる、アンビエント社会を目指したい」と説明した。
例えば新型インフルエンザなどの感染症対策として、GPSケータイの移動履歴から発症者とニアミスしたユーザーに注意を出すこともできる。ケータイは、ユーザーが明示的にデータ通信を行うパーソナルゲートウェイから、ユーザーの先回りをするパーソナルエージェントへと変革するのだという。
しかし、こうした便利さにはプライバシーの問題がからんでくる。湯本氏は「ユーザーに余計なお世話と感じられないようなさじ加減が必要だ。また、キャリアがユーザーの情報を一元管理して良いのかという倫理上の課題もある」と、技術以外にも解決すべき課題があることを示した。
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