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» 2011年12月07日 18時01分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:スマートフォン化で変化するビジネスモデルとキャリアの責任

スマートフォンの普及でケータイ市場そのものが大きく変化している。もちろん、ユーザーが受ける変化も大きい。例えばスマートフォンの場合、3GかWi-Fiかで、フィルタリングの提供義務を果たすべき事業者が別れてしまう。

[小寺信良,ITmedia]

 前回は内閣府調査資料から、青少年のネット利用がフィーチャーフォンからスマートフォンに変わりつつある実態をご紹介した。今回は実質的に携帯電話の様式が変わることで、携帯キャリアのビジネスモデルの変化と、それに伴う責任の範囲について考えていく。

photo フィーチャーフォンのビジネスモデル。すべてのリソースは携帯キャリアが管理し、収益の中心は通信費

 フィーチャーフォンのビジネスモデルはキャリアを中心とした垂直統合モデルで、自社ネットワークの利用を収益の中心としたビジネスモデルである。この場合、端末やコンテンツはキャリアの意向を反映したものになっており、実際の課金管理もキャリアが行なっている。

 つまりキャリアを選ぶことで利用できるサービスに違いがあり、端末も各キャリアごとに特化された、いわばキャリアオリジナル端末ということになる。

 これに対してスマートフォンは、本体やOS、さらにはコンテンツのあり方などがキャリアの管理から離れ、独自のビジネスモデルを築いている。具体的にiPhoneでは、本体とOS、さらにコンテンツの課金管理まで一括してAppleが行なっており、キャリアはネットワークを貸しているに過ぎない。

 Appleのビジネスモデルは、魅力的なアプリを大量に揃え、自社製端末の魅力を増大させることで、本体の売り上げを稼ぐモデルである。もちろん有料アプリの売り上げも収益の一つで、アプリ内課金を排除するといった独占的な方法に批判も多い。しかしiPhoneのテレビコマーシャルを見れば、何が中心かが分かる。つまり、“いろいろなアプリが使えますよ、だからiPhoneですね”というプラットフォーム商売なのである。

photophoto スマートフォンもOSによってビジネスモデルが異なる。AppleのiPhoneビジネスは、ネットワーク以外をAppleが管理し、収益の中心は端末(写真=左)。GoogleによるAndroidのビジネスモデル。コンテンツとOSをGoogleが管理し、収益の中心は広告(写真=右)

 一方Androidでは、端末は各メーカーが主導権を持ち、キャリアはネットワークを貸し、コンテンツの課金はAndroidマーケットが行なうものやアプリ内課金など複数の方法が用意されている。

 Googleのビジネスモデルは、広告モデルである。OSを無償化して対応機種を増やし、プラットフォームを拡大して大きな広告収入の土台を得る。そこからGoogle検索やGmail、YouTubeといった自社サービスへ誘導し、広告収益を上げる。複雑で回りくどいが、いわゆるフリーミアムの考え方である。

法に開いた大穴

 携帯電話市場のスマートフォン化が進めば、キャリアの関与はフィーチャーフォンよりも格段に小さくなる。ここで青少年インターネット環境整備法における各事業者の義務を振り返ってみよう。

 同法の17条から18条に書かれていることを整理すれば、

  • 17条:携帯キャリアにフィルタリングを提供する義務がある
  • 18条:携帯以外のネット接続事業者は、フィルタリングを求められたら提供あるいは紹介する

 と解釈されている。スマートフォンは携帯電話(3G)網とWi-Fi網どちらにも接続できるため、現行法では3G回線に接続するときだけは携帯キャリアからフィルタリングが無償提供されるが、Wi-Fiで接続するときにはキャリアには提供義務はなく、求められた場合のみ提供・紹介すればよいことになっている。さらに端末メーカーは、アプリとして提供されるフィルタリングツールが動作するようにしておけばよいことになる。

 つまり1台のスマートフォンには、法律上の義務が2つ同居することになる。さらにWi-Fi利用に関しては、自宅利用なのか公衆無線LAN利用なのかで接続事業者が変わるため、義務を負うISP事業者が別れることになる。

 加えて懸念されるのは、データ通信専用のモバイルルーターという存在である。通話機能がなく、いわゆるケータイではないので、どの事業者もフィルタリングの提供義務がない。保護者にとってはわけの分からない複雑な料金プランがなく料金は月額固定、さらに通話機能もないのでどうせたいしたことはできないだろう――と、簡単に子どもに与えてしまうことも起こりうる。

 利用する子ども側は、タブレット機器にSkypeなどをインストールすれば通話もできることから、特にケータイでなければならない理由はなく利用できる。さらにWi-Fi機能のみのタブレット端末の販売は、携帯のように保護者の同意も必要ないので、いつの間にか子どもが買っていた、というケースも出てくるだろう。

 フィルタリングすることがすべての解決策ではないが、現行法では大きな穴が空いていることは紛れもない事実であり、来年3月の入卒業シーズンぐらいまでにはここをカバーするなんらかの方策が必要であろう。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia +Dモバイルでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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