何がすごい? 消費電力は?――「Tegra 3」で再確認するクアッドコアの真価(2/2 ページ)

» 2012年11月16日 09時30分 公開
[ITmedia]
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クアッドコアに最適化したゲームが多数登場

 クアッドコアだと動作が速いとはいえ、例えばホーム画面のスクロール速度やブラウザの表示速度などは、ソフトウェアのチューニングによるところも大きく、デュアルコアでもサクサク動く機種はある。クアッドコアの恩恵をより明確に受けられるのは、シングル/デュアルコアでは再現するのが難しい、ハイクオリティなゲームをプレイするときではないだろうか。スマートフォン向けには多数のアプリが配信されているが、ことゲームに関しては、解像度やグラフィック性能などがCPUやGPUの性能に依存する部分が多い。Tegra 3のGPUには、「Tegra 2」の3倍のグラフィックパフォーマンスを実現する12コアのGeForce GPUを採用しており、これに最適化されたゲームも豊富に用意されている。これらのゲームはNVIDIAが提供している「Tegra Zone」という無料ポータルアプリで配信されており、Tegra搭載機でしか遊べないゲームも多い。

photophotophoto Tegraに最適化されたゲームアプリを配信するポータルアプリ「Tegra Zone」。Tegra Zone自体はGoogle Playからダウンロードして利用できる。ゲームを検索したり、Tegra向けアプリの最新情報を入手したりできる

 セガの有名ゲーム「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の最新作「ソニック4エピソードII」はAndroidやiOS向けに配信されているが、Tegra 3搭載機のみが家庭用ゲーム機並みの品質を実現しているという。試しにF-10DとiPhone 5でそれぞれ同作をプレイしてみたが、F-10Dの方が背景のグラフィックが精緻に描かれていることが分かる。細かいところではソニックが走り去るときの砂ぼこりも、F-10Dの方が鮮明だ。

photophoto それぞれ上がARROWS X F-10D、下がiPhone 5でプレイした「ソニック4エピソードII」。F-10Dの方が雲や草木の描画量が多く、リアルに表現されている。レンガもF-10Dの方が立体的だ。これもTegra 3のグラフィックプロセッサーの成せる業と言える

 このほか、筆を武器にして冒険するアクションゲーム「Sumioni THD」(1016円〜)、ビーチや洞窟などさまざまなエリアをバギーで走り抜けるカーアクション「ビーチ・バギー・ブリッツ」(無料)、モンスターと戦う3Dアドベンチャー「Fort Courage」(無料)、端末を傾けながら液体を誘導する「パドルTHD(Tegra 3)」(233円〜)、暗黒世界から抜け出すためにモンスターと戦う「ザ・ダーク・メドウ」(無料)なども、Tegra 3搭載デバイス向けに開発されている(一部はTegra 2搭載機でもプレイ可能)。試しにいくつかのゲームで遊んでみた。ビーチ・バギー・ブリッツは、バギーの動きがスムーズで、バギーの疾走感がとても心地よい。モバイル向けのレースゲームでありがちな、途中で動きが鈍くなってしまうようなこともない。浜辺をバギーで走るときに砂ぼこりや、海へ突入したときの水しぶきもリアルだ。ザ・ダーク・メドウは、その美しいグラフィックから、館や怪物の気味の悪さがひしひしと伝わってくる。こうしたリアルな感覚を味わえるのも、クアッドコアのTegra 3ならではだろう。

photophotophoto 筆を武器に敵を倒していくアクションバトル「Sumioni THD」。タッチで墨を塗った場所を燃やせる「炎の筆」や、バーチャルパッドの長押しで乱舞攻撃をするなど、多彩な技も用意されている
photophotophoto バギーを操作して海辺を走る「ビーチ・バギー・ブリッツ」。びゅんびゅん走り抜ける疾走感が心地よい。水しぶきもしっかり描かれ、水滴が画面に付くなど演出が細かい。道に散らばっているコインを集めてパーツを購入したり、ドライバーを変えたりと、やり込める要素も満載だ
photophotophoto 武器を使って工場内のモンスターを倒していく「Fort Courage」。モンスターがじりじりと迫ってくる様子は非常にスリリング
photophotophoto おどろおどろしい館に潜む怪物と戦うアクションゲーム「ザ・ダーク・メドウ」。グラフィックの美しさは特筆ものだ
photophoto ソニック4エピソードIIをはじめ、バーチャルゲームパッドを使うものが多い(写真=左)。ディスプレイの大きいNexus 7はゲームマシンとしても最適。迫力の画面で楽しめる(写真=右)
photo Tegraに最適化されたゲームは、起動時に「POWERED BY NVIDIA TEGRA」の表記が出る

 これらのタイトルは他のプロセッサー搭載機では遊べないか、対応していてもクオリティは下がる。現在Google Playにはさまざまなゲームが配信されているが、クアッドコアに特化したカテゴリーは見当たらないし、クアッドコアに最適化したゲームはこれからという印象だ。「スマホやタブレットで高品質なゲームを楽しみたい」という人にはTegra 3搭載機が最もオススメできる。現在Tegra 3用に開発されたゲームは30タイトル、デュアルコアのTegra 2用ゲームは50タイトルに及び、今後もラインアップは増加する。

 高品質なゲームを楽しめるのは嬉しい限りだが、Tegra 3対応のスマートフォンが少ないのはやや残念なところ。3G/LTEチップを搭載しないタブレットの大半がTegra 3を採用しているが、日本のTegra 3搭載スマホは今のところARROWSシリーズに限られる。Tegra 3には3G/LTEチップが含まれず、別途搭載する必要があるので、サイズや消費電力の面ではどうしても不利になってしまう。ただ、2013年にはNVIDIAが買収した「Icera」製のLTEモデム内蔵ベースバンドチップとTegraの1チップソリューションが提供される見込み。時期は未定だが、GCT SemiconductorやルネサスモバイルとNVIDIAの協業による、Tegra 3搭載のLTEチップも開発中だ。Tegra 3とLTEの1チップ化が進めば、対応デバイスの増加も期待される。

クアッドコア対応のマルチメディアアプリや端末の進化にも期待

 ゲーム以外では、マルチメディア関連の高度なアプリケーションでも、クアッドコアの威力を発揮するだろう。PC上のコンテンツをスマホやタブレットに表示させて3Dゲームなどを楽しめる「Splashtop GamePad THD」、パノラマ写真をスムーズに撮影できる「Photaf THD Panorama Pro」はTegra 3用に最適化されている。簡単な操作で本格的な写真編集ができる「Snapseed」、モバイル端末上で動画を編集したりエフェクトを追加したりできる「PowerDirector Mobile」も、まもなくTegra 3に最適化された形で登場する予定だ。アプリの広がりが特に期待できるのが、写真関連だろう。写真に多彩なエフェクトをかけられるアプリは多く提供されているが、エフェクトをかけ終わるまでに時間がかかることもある。クアッドコアなら画像の加工や編集もスムーズにこなせるはずだ。今後はこうしたゲーム以外の分野で、クアッドコアの性能をフルに生かすアプリの登場を期待したい。対応機種やアプリが増えれば、Tegraを軸にしたエコシステムもさらに拡大されるはずだ。

photophoto 「Splashtop GamePad THD」(写真=左)と「Photaf THD Panorama Pro」(写真=右)

 クアッドコアを生かした端末の進化にも期待したい。その1つが「マルチウィンドウ」だ。スマートフォンではアプリがバックグラウンドで動作し、使用するアプリを適時切り替えて使うといった操作は可能だが、1画面に2つのアプリを同時に表示させる機能を備えた機種は意外と少ない(GALAXY Note IIは対応している)。例えばワンセグを見ながらTwitterをする、ブラウジングしながら地図アプリを使う、ビデオを再生しながらWebで検索をする、といったものだ。マルチウィンドウはすでに一部機種で実現しているが、5インチ前後の大画面スマホや、タブレットで実現してくれると特に利便性が高いだろう。これはOptimus G L-01E/LGL21で採用されているが、再生中のビデオを拡大表示する機能もクアッドコアならではだろう。高解像度の番組を視聴できる「モバキャス」も、クアッドコアならマルチウィンドウで2番組を同時に表示したり他の機能を同時に使ったり、といった拡張も可能になるかもしれない。


 このように、「ゲーム」「マルチメディア」「マルチタスク」に関するアプリやシーンでクアッドコアの恩恵を受けられる。そしてTegra 3は単に処理が速いだけでなく、必要に応じて力を入れたり抑えたりできる賢い頭脳を持っているわけだ。高いパフォーマンスを少ない消費電力で実現する――これこそがクアッドコアの真価と言えるだろう。

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