Tegra 3が実現する「最高の性能と最小の消費電力」――NVIDIA ザン氏が説明速さじゃなく“体験”を重視(1/2 ページ)

» 2012年03月30日 22時37分 公開
[田中聡,ITmedia]

 NVIDIA Japanが3月29日、携帯端末向けのプロセッサー「Tegra 3」に関する説明会を開催し、テクニカルマーケティングエンジニアのスティーブン・ザン(Steven Zhang)氏があらためて、Tegra 3の特徴や市場背景などを説明した。2011年11月に発表されたTegra 3は、メインのCPUコアにCortex-A9コアを4つ搭載した世界初の“クアッドコア”仕様であることに加え、5個目のCPUコアである「コンパニオンコア」を備えており、NVIDIAは「4-PLUS-1」と紹介している。2012年2月に開催されたMobile World Congress 2012では、Tegra 3を採用したスマートフォンとして、「HTC one X」(HTC製)、「Optimus 4X」(LGエレクトロニクス製)、「ZTE Era」(ZTE製)や、富士通の新端末などが披露された。

photophotophoto 2011年には34種類のタブレットと、67種類のスマートフォンにTegraが搭載された(写真=左)。Tegra 3を採用するスマートフォンとタブレット(写真=中、右)
photophoto ASUSのタブレット「Eee Pad TF201」

スマートフォンにクアッドコアが必要なのか?

photo NVIDIA Japanのスティーブン・ザン氏

 Tegra 3でインパクトがあるのはやはり「クアッドコア」だろう。2010年にモバイル向けデュアルコアCPUが登場してからわずか1年で、クアッドコアCPUが登場した。その性能に注目が集まる一方で、「スマートフォンにクアッドコアが必要なのか?」という疑問もある。これに対してザン氏は「デュアルコアが当たり前になった今、ユーザーはより高い性能を求めている。3Gの10倍ほど速いLTEやWiMAXも普及しつつある。アプリケーションも日々進化しており、ハードの性能が上がれば開発者にも新たな要望が生まれる」と説明。ハードとソフトが進化することで、より高い処理能力が求められる――こうしたPC市場で起きてきたことがモバイル市場でも起きているとした。「2010年には『本当に必要?』と思われていた(スマートフォンの)デュアルコアは、2011年には当たり前のものになった」(ザン氏)。クアッドコアも必然の進化というわけだ。

photophoto ソフトとハードが進化することで、より高性能なプロセッサーが求められるとNVIDIAは考える
photo 理想のモバイル向けプロセッサー

 スマートフォンではバッテリーの持ちが悪いことやWeb表示の遅さが不満点とされている。デュアルコアCPUを備えたスマートフォンが登場しても、「まだ速くならないのか、もっと薄くバッテリーの持つ機種はないのか」という要望は絶えない。NVIDIAが考えるモバイル向けプロセッサーの最も重要な点は「最大のパフォーマンス」と「最小の消費電力」の2つ。前者にはストレスのない操作性や高性能なグラフィック、後者には薄いボディや低温度、長いバッテリー寿命などが含まれる。PCの世界では2005年にデュアルコアが登場し、2007年にクアッドコア、2010年に6コア、2011年に8コア化も果たした。スマートフォンのCPUもシングルコアから始まったが、「クロック数が1.5GHzに向上した2010年には消費電力の壁にぶつかった」(ザン氏)。効率よく性能を上げるために、モバイルでもマルチコア化が求められた。モバイル分野の進化はPCに比べると速いが、これは「PCでデュアルコアに移行したときのノウハウを生かしたため」(ザン氏)。

photophoto PCとモバイル端末のマルチコア化

速さよりも“体験”を重視する

photo Tegra 3の特長

 そんな中で登場したTegra 3は、先述したスマートフォンの不満を解消するほどの性能を持つのだろうか。パフォーマンスについては「Tegra 2よりも最大5倍性能が上がり、PCクラスのCPUを実現できた」とザン氏は強調する。ただ、新型iPadが発表された際に、Appleのプレゼンテーションでは、iPadの「A5X」のグラフィック性能はTegra 3に比べて4倍高速だと紹介された。ザン氏はこの点について「NVIDIAでは最終的なユーザー体験を重視している。グラフィックが何倍速いといっても、ユーザーの目に届くのは、美しいグラフィックと楽しいゲーム。iPad向けとTegraに最適化したAndroid向けの同じゲームはいくつかあるが、Tegraの方がグラフィックが優れている。“速いだけ”ではどうにもならない」との見解を示した。また「あるベンチマークテストではiPadの方が速いが、他のベンチマークではTegra 3の方が速い」とも補足した。

低消費電力を実現する3つの技術

photo 「世界唯一の4-PLUS-1クアッドコア」とNVIDIAはアピールしている

 Tegra 3の性能でザン氏が特に強調したのが「消費電力」だ。そのポイントは3つある。1つ目が「コンパニオンコア」。クアッドコアの性能が常に必要かというと、必ずしもそうではない。「モバイルデバイス使用時の約80%が何も操作していない待機状態。そのときはクアッドコアどころかシングルコアの高いパフォーマンスも全然必要ない」(ザン氏)。そこで開発されたが、第5のコンパニオンコアだ。メールや写真の同期、電話のスタンバイなど、比較的負荷の少ないバックグラウンド動作時には、コンパニオンコアが動作する。その間、他の4コアは停止するので無駄な電力を抑えられる。ゲーム起動時は4コアすべて、Flashを使ったサイトの表示中は2コア、文字のみのサイトの表示中は1コアが動くなど、負荷の高さに応じて使用するコアを切り替えられるのも特徴だ。ただしQualcommのSnapdragonのようにコアが非同期で動くのではなく、例えば動画を読み込んだ直後のみ4コアが瞬発的に動くが、再生中は1コアだけを使って残りの3コアは完全に停止する――という具合に、状況に応じて使用するコア数が動的に変化する。どのコアを使うかは「チップがCPUの負荷を監視しており、OSやソフトで意識する必要はない」(ザン氏)という。NVIDIAの調べによると、Tegra 3ではTegra 2に比べて動画再生時に最大60%、ブラウザ利用時に最大30%の消費電力を抑えられる。

photophoto
photophoto ゲームをプレイ、Flashを使ったWeb・一般的なWebを表示、動画や音楽の再生など、負荷に応じて使用するコアを動的に切り替える
photo Tegra 2よりもバッテリーは長持ちする

photo バックライトの省電力と液晶の視認性を両立させた「PRISM Display Technology」

 2つ目が「PRISM Display Technology」と呼ばれる液晶の省電力技術だ。この技術では、液晶のバックライト輝度を落としながら明るさを補正し、最大40%の省電力化を図れるという。輝度を落とした画面を明るくするので「真っ白な画面では効果はない」(ザン氏)が、スマートフォンで特に電力を消費するディスプレイの省電力化を果たし、かつ視認性を両立させたのは大きい。「バックライトの電力は数ワット単位で動いているが、Tegra 3は数百ミリワット単位で動いているので、液晶の消費電力を下げるのは簡単だ」とザン氏は説明する。この技術はCPUではなくGPUで動作させているという。なお、PRISM Display Technologyは、端末メーカーの判断でオン/オフの切り替え設定を設ける、そもそも搭載しない、などの選択も可能だ。

 3つ目が、タッチパネルの消費電力を抑える「DirectTouch」技術。従来のタッチパネルは「タッチコントローラー」という専用プロセッサーで認識していたが、DirectTouchではタッチセンサーの動作をTegra 3が担うので、タッチコントローラーがない分の消費電力を抑えられる。これに加えて「電圧コントローラーや通信バスなどチップ周りの部品の消費電力も下がる」(ザン氏)という。チップの数が減るので端末全体のコストが下がるのもメリットだ。また、通常のタッチコントローラーの動作周波数が最大40MHzであるのに対し、DirectTouchは最大1.3GHz超で動作するので、より精密で速いタッチレスポンスが得られるという。

photo DirectTouchも省電力に貢献する

photophotophoto 既存のタッチパネルとDirectTouchのタッチ認識を比較する動画を披露。前者(写真=左)では1秒あたりのサンプリングレートが100強から70ほどに下がっていったが、後者のDirectTouch(写真=中、右)ではコンスタントに200ほどの数値を残していた
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